06/03 「結婚相談所論」

 というわけで、まあ、婚活という言葉の響きは何度聞いてもすごいなあと思うわけですよ。略しないで云えば結婚活動ですからね、なんだかものすごい哲学的なことやってるようにも聞こえるじゃないですか。結婚活動。
 貧困ビジネスという言葉があるように、おそらく非モテビジネスというか、まあそのなんだ、普通に普通の恋愛とかそういうのができなかった人向けビジネスみたいなのもあって、やれ結婚相談所みたいなのは結構盛況だと耳にするわけです。
 実際、わたしはいま住んでる家には固定電話を引いてないのであれですが、実家のほうにはたぶん36にもなって結婚もしない童貞のハゲがいるって情報がどっかかから漏れてるんでしょうな、そんなそこまで価値がない情報も珍しいんですけど、まあそれでもそういうところからすれば格好のカモがいるってなもんですからね、よく結婚相談所みたいなところから勧誘の電話がかかってきてるらしいんですよ。ほっといてくれ。
 何度もここに書いているとおり、あたしはもう一昔前の箱入り娘なみに結婚願望強いですからね、あわよくば大恋愛の末に夜景の見えるホテルでプロポーズがあってウエディングドレスを着たいタイプですから、おまえが着るのかよという典型的な突っ込みはともかく、まあそういうことなわけですよ。ええ結婚したいですよしたいですとも。
 とはいえ別にあたしは結婚相談所とかに登録したことはないわけなんですけども、だってあれじゃないですか、結婚相談所ってなんかよくわかんないじゃないですか。
 予想するにおそらくなんとなく胡散臭さが少ない出会い系サイトみたいなもんで、なんかこう登録しておくととりあえずいろいろ紹介してくれて、なんかわかんないですけど出会って話をしたりしてうまくいきゃゴールインみたいなそういうあれだと思うんですけどそれ出会い系サイトとどう違うんだ。
 さすがに男も女も、若くて恋愛に勢いがある時期に結婚相談所に相談しようと思う人はそんなに多くないでしょうから、それこそあたしと同い年くらいの人とかあるいはもっと上とかそんな人が多いんでしょうけど、なんかこうあくまでもイメージですよ、イメージですけど、そこまでこういろんなものをため込んでて、さらに有料で、どこか負のイメージがないわけではない結婚相談所みたいなものに登録するくらい切羽詰まってるって状況までいくとさ、ここまで来ちゃったらもう妥協できないみたいな、なんかそういうのが絶対ある気がするんですよこれ。
 恋愛ってやつはさ、おおなんか36歳童貞がすげえ大上段から来たなまあ聞きねえって、なんとなく理想のキャラクタ(2次元のそれではなく、人物像という意味合いで)がいてだ、それはなんだろうな、顔が好みとかおっぱい大きいとかってのもあるだろうし、なんか昔でいう三高ってんですか、学歴とか年収とかもしかしたらそういうものもあるかもしれませんけど、そういうのがある中で、出会う異性がすべて100パーセントそれを満たしてくれる存在ってのはありえないわけですから、その中で「ここは妥協してもいいかな」というポイントを切り捨てて成立するものなわけですたぶんな。童貞がなに云ってんだってことでしょうけどまあもう少し聞きなさいって。ここまで童貞こじらせてるからこそわかることだってあんだから。
 でな、若い時はまだ未来があるからさ、なんかこうなんだ、その切り捨てるポイントが多少多くても、まあとりあえず妥協するところも多いけど別に別れたら別れたでいいし、なんて思ってるうちに、そのまま別れちゃうこともあればその妥協点を覆い隠すくらいにいいとこが見つかって結婚するみたいなこともあるから、なんかこう暗黙の了解のうちに、妥協マージンが大きい気がするんですよ。
 ところがな、じゃあこれがあたしみたいな、36まで童貞貫きましたって人がいたとしましょうよ、そうなるとだ、ここまできたらもう妥協できないみたいな、ここで妥協したら次はないんだからみたいなそういう発想になるわけだこれが。
 それはあたしだってたぶん同じでな、なんかもしそういうところに登録してたら、なんかそういうえり好みっていうのかな、若い時なら50パーセントまで妥協できたものが、20パーセントしか妥協できないみたいな、そういうことになってると思うんです絶対。
 これがたとえばね、普通の恋愛だったらさ、もちろん妥協ポイントは上がってるとはいえまず恋愛ありきですから、なんかこうそこまでハイレベルなものを求めてその恋愛を断るみたいなことではなくて、若い時の勢いがあるときと同じ、なんかそういうことすべてひっくるめてこの人がいい!ってことになると思うんですけど、これが結婚相談所になるとやっぱり話違うと思うんですね。
 いえもちろん本来は真逆でな、結婚市場においては、たとえば弁護士で年収がものすごいとかそういう特殊ケースはおいといて、一般的には年齢が上がれば上がるほど求めるところが少なくなってくるわけだから、実際はより多く妥協しないと相手なんか見つからないんだけど、そこで「ここで妥協したら負け、理想通りじゃないと」って思うと思うんだよ。
 話が戻るけども、結婚相談所ってわりとそういう切羽詰まったイメージっていうか、どうしても普通にしてたら相手が見つからないから仕方なく登録しましたみたいな感じあるじゃないですか、そんな誰しもが気軽に登録するような場所じゃないでしょうよ、そういうことからすればだ、あたしと同じような立場っていうか、結婚とか恋愛はしたいけど相手がどうしても見つからないから仕方なく、みたいなことだと思うんですよ。
 しかもたぶんですけど、登録するにもお金かかるわけですから、ある意味必死度みたいなのは上ですからね、カネ出して時間も使ってプライドも使ってる分絶対妥協できないみたいな、あたしだったらそういう思いになると思うんですこれ。
 そうすっとさ、そういうまあ云い方あれですけど、登録してるのは男女ともあたしみたいな童貞ポイントため込んだ人なのに、お互いに求めるものは妥協できないわけだからさ、これはたして成立すんのか、ってのがあるんですよ。
 上にも書いたとおり、結局結婚市場では若いほうがいいってのはありますから、お互いに若い人を求めあうみたいなことになると、そもそも年齢からミスマッチになる可能性が高いわけで、36歳童貞男です、みたいなのが登録したところでどうにかなるとも思えんなあというのはものすごくあるわけですなこれ。そこへ来て顔がとか年収がとか身長がとかさらに条件付けると、もうそこに結婚なんて成立しうるのかという疑問があるわけです。
 いやな、こういう文脈だと、よくバラエティ番組なんかに出てくる年収1千万以上じゃなきゃ嫌みたいな理想が高い女性への批判みたいに聴こえるかもしれませんけども、そういうこっちゃなくて、そんなん男でもいっしょでさ、自分より年下じゃなきゃ嫌だとか顔がどうしたとかそういうこと云いだすのはいっしょですからね、上にも書きましたけど普通に30代半ばの男女が普通に出会って普通に恋愛に落ちたとしたら、別に年齢がどうだとか気にならないと思うんですけど、これが結婚相談所みたいなところになればさ、「理想の相手を見つけてくれる場所だから」みたいなこともあるでしょうしやっぱりそれはちょっとなあって会う前から云う人ってのは多々出てくるんじゃないかなと思うんですよね。
 だってそうじゃなければですよ、結婚したいって男と結婚したいって女がそこには集まってるはずなわけですから、別にそんな難しいことなくどんどん結婚が成立してるはずで、そんなコンカツなんて難しいことじゃないはずなのに、それがなかなかうまくいかない人がいっぱいいるってのは結局そういうことなわけじゃないですか。
 それがだ、なんかもうどうしても14歳セミロングの巫女さんじゃないと嫌だみたいなそういうあれになってくれば成立するものもしないに決まってるわけなんだこれが。久しぶりに云ったなこのフレーズ。
 ただな、これってたぶんどっちかというと女性のほうが大変なんじゃないかなあとも思うんですよね。
 そういうコンカツみたいなブログとかを見てると、35歳過ぎた女性に市場価値はない、なんて書いてあったりして、市場価値ですからね、完全に旬がある商品みたいな扱いなわけで、それは男もあんまり変わらないんでしょうけど、若い時にちやほやされる度合いが女性のほうがはるかに大きいだけに、ちやほやされづらくなってからの焦りみたいなのが尋常じゃない感じを受けるんですよ。
 若いころってのはさ、特に恋愛市場においては女性ってどっちかというと受け側っていうか入れ食いっていうか、若い女性っていうだけでそれは価値があるって判断されるから、よほど理想を高く求めなければ意外となんとかなっちゃう場合が多いわけですよねきっと。だからこそ合コンとかでも女性は会費が安く参加しやすいみたいなのがあったりするわけで、恋愛市場において若い女性であるということはそれだけで一種有利な要素なんだと思うんですよね。それが男性はそうもいかず、負けてるやつはずっと負けてるっていうそういうあれになるわけです。
 ところがね、その反動はそこを過ぎてからものすごく大きくて、だからこそ「旬」を過ぎてしまった瞬間に一気に自分自身の「市場価値」が暴落してることに気付くわけで、そこからの焦りってやっぱりすごいと思うんですよ。
 なんかね、これも古臭い考え方だと思うんですけど、世の中の男にとっての相手に求める理想ってのは、同い年か年下ってのが多いと思うんですよね。たぶんこれって男は女を守るものみたいな発想があって、守るってのはある意味で相手より大きく見せる必要があるわけですから、そこで年下を求めるってのはある意味わからないではないんですよ。もちろん趣味としての年上趣味ってのもありましょうけど。
 そうなってくるとね、女性は女性で若い人を求めるのに男性は年下がいいってのがあると、たとえばあたしと同い年の36歳の女性がいたとしたら、いくら結婚を焦ってても30歳の男性はその人を選ばないわけで、40歳とかの人がその人を気にしたりするんでしょうけど、でもここで女性としては「40歳ってのはちょっとなあ」みたいなことになったりもするみたいなことですよねきっと。ボーダーが自然に上がってくるわけです。
 だからこそ、特に結婚相談所みたいなところではどっかで妥協するところがないといけないはずなんですけど、逆に結婚相談所みたいなところだからこそ妥協できないってのもあって、お互い釣りたい魚がいない釣り堀で魚がかかるのを待ってるみたいなそういうイメージがあるんですよこれ。
 これがさ、恋愛相談所っていうかそういうなんだ、結婚の前に恋愛をあっせんしましょうみたいな、それこそそれは出会い系サイトなんじゃねえのかみたいなのはともかくそういうあれならまだそこまでではないんでしょうけど、結婚相談所の目的って結婚ですからね、ある意味商談に近いっていうかなんかそういう気がするんですよ。まあ結婚ってのは契約ですから、ある意味正解っちゃ正解なんでしょうけども。条件をお互いに出し合って、その条件に見合うかどうかみたいな、恋愛とかそういうのふっとばして、なんかこう結婚するためのものみたいな。いやまそれはそれでいいのか。
 それともあれか、まったくもって勘違いをしていたけれども、なんせ「相談所」ですから、ハローワークみたいにいろいろ相談にのってくれたりするのか。「14歳セミロングの巫女さん、ちょっと泣き虫だけど気丈ながんばりやさんでツインテールが似合って声は豊崎愛生さん、みたいな娘と結婚したいんですけど」とか云うと無言で書類を破かれたりみたいなそういうあれか。
 だとすると一回相談してみたいものですなあ。「36歳の現役バリバリの童貞でしかも頭ハゲかかってますけどどうすればいいですか」みたいな。どう考えても無言で書類を破り捨てられるんじゃないのかそれは。なんだ結局破り捨てられるのかあたしの書類は。そうかそうか。


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