01/30「不良論」

 ということで、まあ別に今に始まったことじゃないんですけど、真面目に生きてる人というのは結構損をしているのではないかと思うんですよ。逆に云えば、不良の人と云うのは実は得をしているのではないかとこう思うわけです。
 いやなんかわかんないですけどね、あれじゃないですか、あたしなんかはこう中学生時代なんかはどちらかと云えば不真面目な生徒ではありましたけど、別に不良と云うわけではないというある意味なんてか一番厄介なタイプですよね、そういうアレだったんですよ。
 なんかたとえばすごい勢いで裏地に龍の刺繍の入った短ラン着てエナメルの細いベルトにボンタンで登場するようなキャラだったりすればネタにもなるんですけど、その頃から着るものにはとんと無頓着でしたからもうびっくりするくらい普通の格好でしたし、単に勉強せずに教科書に載ってる太宰治をアーティスティックにしたり、もっと暇なときは教科書の本文を書き変えたりしてたタイプでしたからね、もう話のネタにもならないわけですよ。『走れメロス』を「歩けメロン」に書き変えたあれは名作だったね「メロンは爆笑した。」で始まる大作ですよ。隣の席の松井さんが教科書を忘れたってんで見せてあげたら、松井さん教科書読むのに当てられたときに爆笑しちゃって、怪しんだ先生にこの大作が見つかって教科書買いなおさせられましたからね。勉強しろよ。
 ところが不良の人はあれじゃないですか。大人になったら「俺も昔はワルでさあ」とか云えるわけで、しかもそれを聞いてる人はなぜかなんとなく凄いと思ったりするわけじゃないですか。別に凄くないのに。
 なんでそういうことになるのかというのを考えてみると、なんかこうテレビドラマなんかでは、ある意味「不良礼讃」というのは定番として昔からあるわけでして、昔だと『スクールウォーズ』、最近だと『ドラゴン桜』とか『ルーキーズ』なんかそうじゃないですか。俺たち不良だけどがんばっちゃいました成功しちゃいましたみたいなのってこう定番なわけですよ。
 これがあれですよ、たとえばですけど、普通に真面目な生徒が普通に野球やって普通に甲子園行きましたみたいな話だったとしたらこれこんなに話題にならないと思うんです、っていうかそれお話作れないと思うんですよ。だって普通だし。
『ドラゴン桜』とかだって不良の人が東大行くぞって話だから面白いわけで、あたしみたいな普通にただ勉強しないだけの人が東大行くぞさあ勉強しようって話だったらこれほんと普通の受験生の話じゃないですか。
 まあ、物語なんて面白くするためにそういうあれでもないと駄目だというのはわかるんですけど、結局のところこれが「不良かっこいい!」理論になってる気がするんですよね。そこをあえて引きちぎっての不良はやっぱり駄目でしたという結論になる作品なんて見たことがないわけです。やられ役として登場する不良はともかくですが。
 そもそもあれじゃないですか、不良の人がおばあちゃんに席を譲ったらなんかすごくいい人な感じになるけど、普通の人が譲ってもああ普通のことだしねってことじゃないですか。そういう理論ではあると思うんですけど、それがこう極端になって「不良かっこいい」につながってる気がするんですよね。
 でもいい加減、そういうのも迷惑だからやめてくんないかなあと思うわけです。
 だいたいさ、不良の人はえてして他人に迷惑かけてるわけですよ。
 なんか神輿みたいなバイクで爆音立てて走りまわったり、そこまでじゃなくてもコンビニの前で集団でうんこ座りしてカップ麺食ってゴミをそのまま置いてったりするわけじゃないですか。
 バイクに普通に乗ってる人間からすれば暴走族の人の所為でバイクの地位は不当に貶められているところは多々ありますし、彼らによるバイクの盗難にはいつもびくびくしなきゃいけなかったりするわけです。
 そこがあれですよね、ドラマとかに出てくる不良の人はそういうところうまいこと隠されてるわけですよ。実際のところあんな綺麗な不良いないじゃないですか。なんかもっとこうトータルで迷惑な存在じゃないですか不良の人って。それでそれをわかってこそ不良であって、「俺不良だけど他人に迷惑かけてない」なんて思ってる人はそもそも不良じゃなくてただ迷惑な人なんですよ。
 特に中学生くらいの不良の人の行為なんて、基本的に人生ナメてるからこそできること以外のなにものでもありませんからね、いやまあ最近では新成人の不良の人とかもそうなような気もしますけど、ちゃんと人生考えてたらあんなことしてたらろくなことにならんということくらいバカでもわかると思うわけです。
 まあそのなんだ、悪いことがカッコよく見えるというのは心理としてわからないではないんですけど、そういうのはもう中学校で卒業すべきなのに、どうもそういうドラマとかそういうあれの所為で、不良の株価は不当に高い気がするわけです。そしてそれに反比例して、相対的に普通に真面目な人の株価が「普通だから」という理由で下がってるわけですよ。
 だってあれですよ、なんか暴走族の雑誌みたいなのがあって、それを読んでみたら「俺は傷害罪以外の悪いことは一切してない」って誇ってましたからね、すごいことじゃないですかコレ。ああ傷害罪はこの人の中では悪いことというカテゴリの外なんだなとそういうことじゃないですか。
 あたしは中学校時代とかは別にイジメられっ子ではなかったですけど、不良の人の集団に不当に云いがかりをつけられて暴行を受けたりしたことはありましたし、ああいうこともこの人にとっては「悪いこと」じゃないわけじゃないですか。こっちは今でも鮮明にあのときのことが思い出されるくらいおっかなかったのに。
 この雑誌を見てみると、「うちのチームでは盗難車厳禁のルールがある」とか書いてあったりして、それチームのルールとかじゃなくて日本国在住の人なら須らく守るべきである共通のルールなので別に自慢げに云うことではないのとちがうかなあとか、そうかと思うと別のページには「昔は盗んだスクーターとかで走り回ってた」みたいな体験談が普通に載ってたりして、校正でこれがカットされてないってことは、この雑誌のメイン購買層である不良の人たちにとってはそれは普通のことなわけじゃないですか。
 昔、前の会社に勤めてた頃、夜中に仕事終えてああいつ会社辞めようかなあなんて思いながら駅から駐輪場に停めてあった原付スクーターで帰ろうと思ったらすっぽり鍵穴壊されてて盗難未遂にあって修理代に何万もかかったことがあったんですけど、あれも不良の人たちにとっては普通のことだとそういうことなわけですよ。すごいな不良の人。
 というまあなんてかな、「迷惑をかけてるけど迷惑をかけてる自覚がない」というのが不良の人たちに共通しているポイントで、それもまあ中学生くらいまでなら若ぇなあなんですけど、それを卒業できずに大人になるまで引きずって、さらにそれをいい大人があれカッコイイ!って見てるのってスゲエなと思うわけです。さらにはもう云うに事欠いて「ちょい悪オヤジ」なんて云いだしましたからね、云われてるほうは恥ずかしくないのかと。
 だから普通に他人に迷惑をかけないようにひっそりと生きてる、あたしなんかそういう意味では石ひっくりかえしたところにいる虫みたいな生活してますからね、そういうのよりも、他人に迷惑をかけまくるアウトローな生き方のほうが圧倒的に評価が高いというのは、これはもう非常に不条理だと思うわけですよ。
 たとえばヤンキー先生とか元暴走族の予備校講師とか世間ではちやほやしてますけど、たぶん彼らが現役で「ワル」だった頃、彼らに不条理に迷惑とか暴行とか受けたりとかした普通の人とかいたと思うんですよね。いやまあなんとなく本とかでは「俺は一般人には一切手をあげなかった」とか書いてるんじゃないかなあって気がしますが絶対そんなことないよな。
 さっきも書きましたけど、「迷惑」の基準が著しく低いのが不良の人に共通してるところですからね、不条理な迷惑を被った人は絶対いるはずで、少なくとも暴走族やってれば騒音とか危険運転で迷惑を被った人は一人二人じゃないはずで、そういう迷惑を受けた人たちはこういう「昔ワルで今ちやほや」な人を絶対許さないと思うんですよ。いい加減こういう風潮なんとかしてほしい。
 とまれ、なぜこんなことを今になって云いだしたのかと云いますとですね、実家に帰ったときに用事があって久しぶりに卒業した中学校のそばを通ったんですけどね、あたしが中学生だった頃に同じ学年だった不良の人がいまして、まあこの人を仮に小野君としますけど、いやこれは本人の名誉のために仮ですよいやほんと、小野君の家は小規模ではありますが会社を経営してて、つまり彼は社長の息子だったんですよ。ボンボンだったわけですね今で云うところの。で、この小野君の家が学校のそばにあったわけです。
 まあ、ボンボンがそういう両親の期待とかに反抗して不良になるみたいなそういうあれは物語の世界だとよくあることなんですけど、小野君の場合そういうあれではまるでなくて、俺将来的になんにもしなくても社長だからみたいなそういう甘えの極みみたいなあれでして、そういう意味でもなんてかな、親の威を借るなんとかみたいなところもあったんだと思うんですけどね。
 当時はバブルがはじけたとはいえまだバブルの余韻が残ってた時代でしたからね、彼の家も景気がよかったんでしょう。小さいですけど住宅兼自社ビルみたいなの持ってましたしね。
 そういうあれもあって、ある意味楽観の極みなところありますでしょうからそれはもうやりたい放題やってましたよ小野君。この上なくフリーダムな中学生時代を満喫したのでしょうなあ。そらもう理不尽な暴力も受けましたしね彼からはね。まだ覚えてますし一生忘れることないでしょうけどね。
 と、そんなようなあれがあってあれから15年以上ですか、久しぶりにその彼の家の前を通ったら、その会社潰れててビルが悪名高い某新興宗教団体の支部になっててですね、ああそういうあれなのだなあというようなそんなようなね。
 今頃なにしてるのかなあ小野君。あれだけ徹底的に怠け癖ついてると仕事とかできないんじゃないかなあ。別にいいんだけど。
 件の暴走族雑誌なんかを見ると、こういう不良の人たちのほとんどは「将来の夢は社長」らしく、まあテレビなんかではときどきこういう元不良の人が興した会社というのが面白おかしく取り上げられたりしますけど、なんかそういう一発逆転がどこにでも転がってるほど人生甘くないぞと某宗教団体の支部を横目に見ながら思ったのでした。いやそもそも社長になりたかったら勉強をしろよ勉強を。暴走してる場合じゃない。
 いやね、まあその不良の人も本当はいい人なんですよとかそういう礼讃の仕方もあるんですけど、それはそれでじゃないですか。いやそうかもしれないけど、じゃあ本当はいい人だったら他人に堂々と迷惑かけてもいいのかというようなそういうあれですよ。ていうか少なくともいい人は他人に積極的に迷惑かけようと思わないと思うんですよコレ。
 確かに中学生の時期とかには小学校の頃から仲がよかった不良の人とかもいましたよ、そういう人も話してみれば普通に話ができる人でしたし、突然あたしに真剣な顔で「どうやったら子どもができるのか」という旨の質問をしてきて、今ほど熱心に性教育が行われている時代ではなかったですしね、あたしだって今に至るまで童貞こじらせているわけですから当時はそんなもん知らなかったんですけど、とりあえずなんだ、クラスではまあそのQさまにおけるロザン宇治原的な立ち位置でしたしね、いやすごい分かりづらいですけどまあその物知りなポジションでしたからこりゃなにか云わなきゃいかんと思って「キスしたらできる」というウソ性知識を教えたところ彼は感心しながら納得し、一年後に本当の性教育が学校で行われて「あれウソじゃねえか」と一年前のあたしのウソ性知識を糾弾するという非常にピュアな人でしたしね。今考えると凄いないろんな意味で。キスで子どもができるなら小学校時代に幼馴染みの子孕ませてることになるじゃねえか。彼女も今では人妻です。
 でもそれはそういう「古くからの友達」っていうバイアスがあってのことじゃないですか。やっぱり彼が基本的に普段やってることは褒められることじゃなかったし、少なくとも礼讃されるようなことじゃなかったと思うんですよ。
 でもなぜか不良の人はものすごくモテたりするんですよね。それもまあ、ああやっぱりそういうあれなのねみたいなすごくこうなんだ、もうお二人すげえお似合いですよみたいな人とくっつくんじゃなくて、ええなんでそんな真面目一本な感じの子とくっついてるの!?みたいなことままあるからアレなんだよね。まさにそういうなんだ、アウトロー的なものに憧れるからなんでしょうけど。
 それともあれか、不良の人だけど30歳童貞、みたいな人もいるのかなあ。そういう人とはちょっと話をしてみたい気はするな。

<近況報告>
  • Twitterってやつは気軽でいいんですけどどうもいろいろわからんことも多いよなあ、と思うのは、ぜんぜん知らない人の上に「なんでこの人があたしを?」って人からのフォロー。あたしが有名人だとかならともかくそういうアレでもないですし。
  • リアルな知り合いなら名前見ればわかるし、ここを見ていただいてフォローしていただいてるんだろうなあっていう方も「つぶやき」の内容を見ればだいたいわかるんですが、どう考えてもあたしやあたしのこのサイトとまるで無縁だろうって人からのフォローとか来るんですよ。
  • いやね、絨毯爆撃のようにフォローするスパムフォローというのがあるというのは知ってますし、その類なのかなあという気もするんですけど(その所為で、このページを見てフォローしていただいている方を全員フォローするというのができないでいるのですが)、このスパムフォローに何の得があるのかがぜんぜんわからないんですよね。
  • だって、スパマーの「つぶやき」は@付きじゃなければあたしにはまるで見えないわけですし、なにか一方的に見せたいっていうスパムの法則からは外れるじゃないですか。適当にフォローして、もしフォローされればラッキー、くらいの考えなのかなあ。
  • いや別にね、誰にフォローされてもいいですしTwitterってそういうものだと思いますしいいんですけど、そういうのからもし何かスパム的な迷惑を被ることがあるならそれは嫌なわけで(まあ、現状ここを見ていただいている方全員をフォローできなくなっている時点で迷惑を被っているわけですが)。
  • というわけでどなたかこの絨毯爆撃フォローによって被る迷惑の可能性を御存知の方がいらっしゃいましたら教えてください。今のところ「あんまり気持ちはよくないなあ」くらいのことしかないです。
  • > ときメモ4で調べて理解しました。何だ最初から「なーんてね! えへへ!」で検索すりゃよかったのか。
     「なーんてね! えへへ!」で検索してちゃんと出てくる星川さんに云い知れぬ底力を感じる。
    > 電車での思い出と言えば『殺してやるから表へ出ろ』と、言い争いになった事位しかないDEATH
     あまりに不穏すぎる……。


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