03/27「コンピュータ論」

 ということで、なんてかなあれですよ、読んでる人もいい加減お前がモテないのはもうわかったから、みたいなそういうようなことを思ってると思うんですよ。
 もちろんね、男なんてなのべつ女のことを考えてるもんだとは思うんですけども、それと逆ベクトルではあるものの結局のところ恋愛のことばっかり気にしてるというのもこれはこれでどうかと思うわけです。わかってるんですそんなことは。あなたとは違うんです。今こういうこと云うのが一番かっこ悪いよな。
 そういうあれなので、ちょっと唐突に昔話でもしてみようかと思うんです。
 もちろんそんなうだつのあがらない32歳童貞サラリーマンの昔話なんか聞いたってなんの足しにもなりゃしないというのはわかった上での話ではありますけども。あれですよ、たいしたネタがないんだなあとこう思っていただければ。切ない結論だな!
 いやね、最近ちょっとコンピュータについて思いをめぐらせることがあるわけですよ。
 あたしがはじめて触ったコンピュータとなると、それこそファミコンとかそういうあれなわけですけども、パソコンになると意外と新しくてPC-88なんですよ。細かい機種名までは忘れましたけど、小学校のときになんかよくわかんないけど職員室にあったのを触らせてもらったんですよね。なにちっとも新しくないそうかそうか。
 このときは、「パソコンってなんかかっこいい!」くらいのことしか思ってなくて、なにかそれでやったという覚えもないんですけども、とりあえず「なんか凄い」みたいなことだけは思っていたようなそんな気がします。確かBASICもサワリだけこれで覚えたような記憶もあるので、いちおうそれなりに触ってたんだと思いますが、実際のところあんまり覚えていません。
 自分でパソコンを買ったのは高校に入ってからで、それもたまたま図書館で見た『月刊アスキー』という雑誌のゲーム特集みたいなコーナーで紹介されていた『プリンセスメーカー』がきっかけという不純きわまる動機だったわけです。
 いやね、こんなこと云っても信じられないかもしれませんし、またそういうオタク批判カッコイイ的なあれかと思われるかもしれませんけども、当時のあたしはそういうのとはまったく無縁な生活を送っておりましてですね、尤もドラクエ4コマに自作漫画を投稿するなどと云うようなこうかなり危ういバランスの上にいたわけなんですけどもそれはともかく、「アニメ見てる」とか「コミケに行ってる」とか云ってる友達を全力で馬鹿にしたりしてましたからね、とにかくそういうあれだったわけです。
 それがなにがどうしたのかさっぱりわかりませんけども、なんか高校生童貞男子なりにぴんとくるものがあったんでしょうね、こりゃもうとにかく『プリンセスメーカー』がやってみたいと。そこでもって両親を説得し、貯金を叩いて買ったのが、NECのPC-9801BXという機種だったわけです。
 当時はパソコンと云えばNECのPC-9801シリーズ、富士通のFM-TOWNSシリーズ、シャープのX68シリーズとAppleのMacintoshあたりがメインどころでして、と云うと若人にはなんのことやらさっぱりみたいなところではあると思いますけども、この頃はWindowsみたいな便利なものがなくてパソコンのメーカーごとに使えるソフトが違っておりましてですね、たとえばNECパソコン用のソフトは富士通パソコンでは動かなかったわけです。
 なので、どのメーカーのパソコンを大枚はたいて買うか、というのはある種のテーマであったわけでして、そのあたりは今のゲーム機あたりとよく似ていますけども、ゲーム機の10倍くらいの値段の買い物でしたからね、真剣にならざるをえないわけですよ。
 とは云え、実質的に一番多くのソフトが供給されているのは圧倒的なシェアを誇っていたNECのPC-98シリーズでしたし、なにより当時は『プリンセスメーカー』がPC-9801シリーズとMSX(という、統一規格を目指したホビーライクなパソコンがあったのです)にしか展開しておらず、買うにしても実質的な選択肢はなかったわけですが。
 この当時、パソコンはまだまだ高価で、今ならメーカー製のパソコンでも20万円もあれば買えますが、この頃は定価50万円ディスプレイ別、なんてのが普通でして、そんな中でこのPC-9801BXという機種は「廉価版」として登場した普及機でした。っても定価で20万円以上(ディスプレイとかOSとか音源ボードとかは別)したんですけどね。これは安い、と評判になったもんです。
 んで、無事にパソコン本体を買い、運よく高校の友達の友達(他人ですわな)から『プリンセスメーカー』のソフトを3000円で売ってもらって、いやもうやったやった。掛け値なしに徹夜でやったもの。すごいことになってた。このへんから道を踏み外し始めていたのだな考えてみればな。
 まあ、ゲームの話はこれはこれで長くなるのとその年齢で買っちゃいけないんじゃないかなあみたいなゲームを買った話みたいなのに触れなければならなくなってこう首を絞めることになりかねないのでとりあえずおいとくとして、当時のパソコンは「MS-DOS」というコマンドを打ち込んではじめて動くシステムのもので、基本的にはキーボードで操作するものでしたから、なにをするにしてもとりあえずは基本的なDOSコマンドくらいは覚えておかないと使うこともできなかったわけですね。今のWindowsみたいにダブルクリックでソフトが起動、みたいなことじゃなかったわけです。
 特にこれまた大枚はたいてハードディスクを買ってからが顕著で、ハードディスクなんてこんなものはDOSのなんたるかがわからないとまったく意味をなさない代物でして、なんとかソフトのインストールはできても起動時の設定パラメータを書き換えないと起動すらしないなんてのは当たり前の代物でした。今考えるとものすごい時代ではあるよな。
 多くの人はここで挫折してパソコン本体が部屋の隅で埃をかぶるオブジェと化すわけですが、高校生の頃のあたしからすれば、とりあえずパソコンに触ってられるのが幸せ、みたいなとこありましたからね、でも別にネットも繋がってない(もちろんインターネットじゃなく、当時の基準で云えば「パソコン通信」というやつです)し、ゲームソフトはそんなにたくさんは買えないしということで、具体的になんにもやることないわけですよ。
 でもパソコンに触ってたい、ということで、ただひたすらにDOSをいじってましたね。別に何するでもなくいじってるだけなの。何が面白いのかわからんという向きもありましょうが、面白かったんですよこんなことが。ただひたすら「dir」とか打って「うん、ファイルがある」みたいなこと思ったりするの。いや面白かったんだってほんとに。そのおかげでDOSにはやたらと詳しくなりました。なんかconfig.sysでメインメモリをどれだけ取ってそこにいかにFEPを置くかとかそんなことばっかやってた。という話に「ああそれやったやった」と頷いたあなたは30歳以上。
 これが友達から『Quick Basic』というソフトを売ってもらってからは、今度はこの『Quick Basic』をいじり倒しました。
 これ、いわゆるN88BASICというマイクロソフトBASICをベースにちょっと進化させたプログラミング言語で、もともとBASICしか知らなかったあたしには非常になじみやすく、無駄にいろいろプログラムを作ったりしておりました。なんか当時『電撃王』で連載されてた読者参加ゲームのキャラクタデータベースとか作ってた。今考えるとなんでそんなもん作ったんだかな。
 これ、ちゃんとソースをコンパイルして.EXE形式の実行ファイルを作ることもできたので、なんだかひとつプログラムをくみ上げるとすごいことをやり遂げたような気がしました。おかげでQBには詳しくなりましたけど、そこでCとか覚えておけば応用効くのに今ではまったく役に立ちません。ひたすらDOSをいじってるよりも生産的ではありますけど。
 グラフィック方面では、『マルチペイント』というソフトを買ってひたすらマウスで絵を描いていたわけでして、なんせ色とか使える色が16色ですからね、髪のぼかしとかはタイルを使って描くわけですよ。ぼかしたいところにだんだん暗い色を点で打っていくわけです。
 元の線だってスキャナなんて高くて買えませんでしたし、買っても白黒二値だけしか取り込めない上にシリアルポート接続でB5一枚スキャンするのに5分くらいかかるという冗談としか思えない代物でしたから、基本線からマウスで描くしかないわけです。
 苦肉の策として、サランラップにマジックで絵を描いてそれをディスプレイに貼って線の通りになぞるという「ラップスキャン」なるデジタルなんだかアナログなんだかわからない冗談のような技術もありまして、いずれにしても一枚描くのにとんでもない時間がかかったもんでした。もうなんのためのデジタルデータなんだかさっぱりわからない。
 音楽も同じようなもので、今ならサンプリングだとかMIDIだとかやりたい放題ですけど、当時はFM音源で同時発音が3音とSSG音源(ファミコンの音みたいなやつです)が3音という仕様でして、たとえばドラムでFM音源をひとつ、メロディでもう一つ使うと、ちゃんとまっとうな楽器の音が出るのが1つしか残らないというこれまた冗談のような代物でした。
 データの入力も、音符を置くとかそういう気が利いたものではなく、テキストでCEGCEGとか打ち込んでコンパイルしてやると演奏可能なデータができるというもので、打ち込んでるうちに曲を書いてるんだかプログラムを書いてるんだかわからなくなったりしたもんです。
 このPC-9801を数年にわたって使っていたわけですが、やはり寄る年波には勝てずと云いますか、Windows95が本格的に普及しはじめてさすがに対応しきれなくなり、Windows95を搭載していたFMVというパソコンを買うわけですが、なんかここから先はパソコンが道具になってしまい、遊びのツールとしての面白さはあまりなくなってしまいました。確かに便利にはなったんですけどね。
 結局、あの頃ってパソコンの使い道が両極端で、ビジネスでハードに表計算とかで使われるか、ものすごくマニアックな人の遊びのツールとして使われるかどちらかで、ふつうの人がふつうに生活していて触るものじゃなかったと思うんですよ。パソコン触りたいと思わなければ触らなくても困ることはなかったわけで。
 あたしはパソコン通信にだけは手を出しませんでしたけど、プログラムとか音楽とかも別になにかどうしても必要だったかと云うとそんなこともなく、上にも書いたようにDOSをひたすらいじくっててそれで一日過ごせましたから、やっぱり趣味のものだったんですよね。ゲーム機とかに近かったかもしれない。
 なんかこう、コマンドを覚えて動かなかったらあれこれ手を尽くして調べて、それも今みたいにインターネットでちょいちょいっとみたいなわけにもいかないので図書館やら書店やらで本を調べてようやく動いたときの達成感みたいなそういうのが、なんだかコンピュータを使いこなしてる感じがして好きだったんだなあと思うわけです。
 いやね、もちろんだからと云って、今からコマンドラインに戻ろうとは云いませんし、じゃあ今すぐWindowsをやめてDOSに戻れとか云われても困ってしまいますし今更config.sysとautoexec.batを書けと云われてもそりゃなかなかなわけですけども、結局のところ、マイカーとかと同じだと思うんですよパソコンも。
 昔はそれこそ車なんて一握りの金持ちの道楽のためのものでしたけど、それが安くなってさらに高性能化していくことで、一般人の使える「道具」になって普及していったわけでして、パソコンも同じことだと思うんですよね。普及したおかげでいろいろなものが安くなってるわけですし、これはこれでいいことだとは思うのです。
 よくおっさんトークとして云われるような、昔はハードディスクが50MBで10万円したとか、メモリが8メガで10万円したとか、やはり技術の進歩と普及によってそれが冗談として語られるようになったわけですから、「道具」としてのパソコンを使って何かをする、という方向にシフトしていくのが正解なのでしょう。
 おそらくですけど、自動車がまだ夢のものだったとき、一般の人々にとって自動車は「どこへでも連れて行ってくれる夢の乗り物」だったと思うんです。
 それが普及して「日常の足」になったように、パソコンもあたしがDOSコマンドを無駄に叩いてた頃は、「なんでもできる夢の機械」でしたが、それが「便利な統合情報ツール」になったということじゃないかなとそんなことを思うわけです。
 なんてかな、あの頃のパソコンって、「便利さ」はほとんどなかったと思うんですよ。
 いやまあ、ビジネスで使ってる人とかは別でしたでしょうけど、あたしらみたいに高校生のガキが触ってなにか便利かってと、そんなことはぜんぜんなくて。
 当時、小説を書いたりレポートを書いたりなんてのにはワープロを使ってましたけど、それだってワープロ専用機(今のノートパソコンより一回り大きいくらいのラップトップ型のやつで、ワープロ機能に特化した機械があったんですよ)を使ってましたしね。
 そういう意味でも、今のパソコンのように「あって便利」というよりも、なんだかそのものが夢の溢れる機械だった気がするんです。
 返す返すも、あの頃に戻りたいとか戻ろうとか云うつもりはこれっぽっちもありませんけども、ああいうパソコンを無意味にいじくって一日を過ごせた日々というのは、あれはあれで充実してたんだなあと思ったりはしますね。
 つまりなにが云いたいかと云うと、先日ハードディスクが壊れたノートパソコンを修理に出したら、80ギガのハードディスクほかあれこれ交換で78000円を請求されましてですね、いったいコンピュータの世界はどうなってるんだというそういうあれなわけですよね。みんな延長保証ちゃんと入ろうな。

<近況報告>
  • 『咲 -Saki-』の5巻が出ましたよ。咲さんはほんと可愛いな!
  • しかしアレだね、この作者さんは女の子の泣き顔を描くのがほんとに巧いよね。あの泣き顔を見てるとなんかDOKIDOKIしちゃいますよ。そりゃいじめたくもなりますよなりますさ。華菜とか結構どうでもいいキャラだったのに、今回の巻はちょっと可愛いかもしれんと思っちゃいましたもの。
  • まあその、麻雀部分は実にアレですけどね。あれサマじゃなかったらただの超能力だよね。でも確かに、麻雀を覚えたとき、「嶺上開花」と「海底撈月」は言葉としてすごく綺麗な言葉だとは思ってた。
  • いいんです、あれは麻雀漫画の姿を借りた女の子同士の恋愛漫画なのですよ。桃子さんとゆみさんのカップルがおすすめです。なにがおすすめか。
  • アニメが始まるそうなんでどうなることやらですね。なんか色々とすごく不安な要素が漂ってますけどもね。いや見ますよ見ますさファンだもの。
  • > 新しい思ったんですが、ご自身のサイトを見せて本当の自分をさらそうか、逡巡している女性ができましたか?
     まあとりあえずは落ち着いてくれ。とりあえずですね、もしそういうことがあったら真っ先にここで自慢するから大丈夫です。そりゃもう見てるほうがゲップが出るほど自慢しますともさ。
    > おうおうゲームレビューはまだかい
     いやこれがね、想像以上にボリュームがあってね。面白いんですけどもね、物理的にこういろいろとね。がんばるよ?
    > ところで何故テキストの一人称は「あたし」なんですか? 普段もオネェ言葉なんでしょうか?
     そんなことはありませんことよ? もうオネェ言葉でもなんでもないなコレ。なんか口触りがよくて好きなんですよね。「俺」より尖ってないし。あたしは普段の会話でも「あたし」ですけど話し方は普通ですよ? たぶん。


  • 戻る