03/10「モテ期論」

 ということで、もうなんてかな、あたしももう32歳じゃないですか。32歳っつったら、中学生くらいのあたしからすればもう結婚してそろそろ二人目の子どもが幼稚園に入るかなあ、くらいの人生設計を描いてた年齢ですよ。結婚どころかバリバリに童貞こじらせてるなんて中学生のあたしからすれば想像だにつかなかったに違いあるまいさ。
 っていうか中学生のあたしは結婚相手が見つかるなどと何を根拠に思い上がってたんだろうなこの不細工面が。子どもが生まれたらなんて名前つけようかとかマジで悩んでましたからね、もう気持ち悪いことこの上ない。
 いやまあそういうあれでですね、改めて32年間の人生を振り返ってみたんですよ。
 そこでこうなんてか、ひとつ気づいたことがありましてですね。いやまあ薄々気づいてはいたんですけど。
 それはですね、どうやら今のところあたしにはモテ期というものが来ていないのではなかろうか、とこういうことです。こらそこまたバカがバカなこと云い出したって目をしない。
 いろいろ調べてみると、あまねくすべての人にはどうやらモテ期というのが存在しており、それは概ね一生のうち三度訪れるというそういう類のものであるらしいのですけれども、わざわざ考え直すまでもなく、一回も来ちゃいないわけですよそんなものは。一回でも来てたら女の子と手を繋ぐくらいのことはあってもよさそうなものじゃないですか。
 これを考えるには、モテ期というのがどういうものなのかを考えなければならないと思うんですよね。
 まあ、文字通りに考えれば「異性から尋常でなくモテる期間」ということになるのだと思いますけれども、その「モテる」ってすごく曖昧な言葉じゃないですか。なんかこう一昔前の少女漫画に出てくる美形男みたいに、学校中の全員がそいつのことが好き、みたいなそんなようなあれは確実に「モテる」でいいんだと思うんですけど、いないと思うんですよそういう人。たぶんですけど。ていうかどんな世界だそれは。いやさ、『花男』なんて云ってすんごい持ち上げてるけどもさ、あれ男と女の立場逆にして見てみねえって、エロゲーとかが一昔前に通過したものなわけじゃないですか。まったくあたしらがそういうのにうつつを抜かしてれば「気持ち悪い」とか云うくせにどういう了見だ。
 いやまあそれはともかく、そうするとですね、あたしのような純粋培養の不細工さんからすれば、「モテる」というのはそのイメージにあるような「女の子をとっかえひっかえ」みたいなそういう類のあれではなく、支障がないくらいに女性とお付き合いができるというそういうことだと思うわけです。
 いずれにしてもそんな時期は来てないので、別に大勢になんら影響なしということでそれはそれでいいんですけど、でもそれって普通の人にしてみれば普通のことなわけで、別段「ああ、俺モテた」という印象を抱いてはいないと思うんです。
 ということを考えると、「モテ期は誰にでもある」というのは別に都市伝説でもなんでもなく、実際に多くの人が経験していることなのではないかと思うわけですよ。ただ、普通の人はそれを特に「モテた」とは認識していないとそういうことなわけです。
 その「モテる」という言葉のイメージは、どうしてもその相手をとっかえひっかえなイメージなので普通は通過してしまうわけですが、実際にはそうではないとすれば、多くの人に「モテ期」は訪れているにもかかわらず、それに気が付いていないだけということになりましょう。
 とりあえずここまで考えた上でひとつ確実なことは、あたしにはまだモテ期が来ていない、ということです。
 いやわかんないですよ、そりゃね、もしかしたらすごい勢いで離乳食食っては寝返り打ちながらうんことか漏らしてたくらいの頃にいきなり来てて、もう赤ん坊界ではブイブイ云わせてた可能性はなくはないですけども、それってものすごく無駄撃ちじゃないですか。一面が始まったところでいきなりでボム打ちつくすようなもんじゃないですか。
 まあその、来るなら早いとこ来て欲しいというのが正直なところでして、これがまあなんだわかんないですけども、逆にたとえば死ぬ一日前とかに来られても困るわけですよ。あたしとしてはこうなんだ、俺の手を握り涙の雫二つ以上こぼせお前のおかげでいい人生だったと俺が必ず云いたいわけでして、いやあくまでも思い描いた状況を言葉にしてみたら偶然似ちゃっただけなんで何ラックとかは御免蒙りますけども、そんな死ぬ一日前にいきなり人生の絶頂期が来てもそういうのできないじゃないですか。まあ明日死ぬかもしれないんだけどね。縁起でもないこと云うな。
 だいたいあれですよ、今までこれっぽっちもモテなかった人がですよ、明日になったらいきなりモテてるとかありえないじゃないですか。そんなのどう考えても並行世界とかそういうあれですよ。ある意味朝起きたら女の子になってた、みたいなエロ漫画的シチュエーションよりよっぽど衝撃ですよ。いやそれはそれで驚くな。
 だからこうあれだと思うんですよね、モテ期というのはゆっくりとやってくるものだと思うんですよ。あれ、気が付いたら俺モテてた!というようなそういう性質のものだと思うんです。
 だとすると、絶頂期の前に助走期間がかならずあるはずで、今のところそういう気配もありゃしねえことを考えれば、とりあえずまだそういうの来ないのだなあということが想像できます。助走期間がどれくらいのものなのかはわかりませんが、何ヶ月という単位ならまだしも、何年という単位になってくると死ぬ前日にいきなり来るというのもあながちない話ではないなという結論に達するわけです。
 尤も、これは「誰にでも平等にモテ期はやってくる」という前提の話なので、人によっては来ないこともあるよ、という話になってくると総崩れなわけですが。もしかしたら来ないかもしれないよね。なにこの寂しい結論。

<近況報告>
  • もうなんだかいろいろあるね。ほんと。

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