01/19「イップス論」

 ということで、「イップス」という言葉をご存知でしょうか。
 もともとはプロゴルフの世界の用語らしいのですが、主にスポーツの世界で、普通にできるはずのことが何らかの精神的な理由によってできなくなってしまうということを云うのだそうです。
 高御さんは最近になって急に大型二輪車の免許が欲しくなり、いやまあなにか乗りたいバイクがあるとか、バイクの二人乗りで後ろに女の子を乗せて海を見に行きたいなあとかそういうのぜんぜんなくてただ単になんとなく欲しいなあというそれだけなんですけども、ていうか普通免許以外の免許はほとんど全部そんな感覚で取ってるわけなんですけどもそれはともかく、だもんであれなんですね、教習所に通いだしたんですよ。
 まああれだよな、前に取った大型自動車よりはいくぶん自分で買って乗る可能性は高いわな。大型トラックとか絶対自分で買わないしな。そんな愛川欣也じゃないんだから。というネタはどの年齢層向けのネタなんだ。
 で、何年かぶりに教習所に通い、未来に希望溢れる瑞々しい若人たちとともに、不細工32歳童貞男が教習を受けてるわけなんですけど、二輪の免許を取ったことがある人であればご存知だと思うのですが、「一本橋」という課題があるのですね。
 これなにかと云うと、だいたい幅30センチくらい長さ15メートルの平均台を、10秒以上かけてバイクでゆっくり渡るというものなんですが、普通二輪の免許を取ったときはこれわたし結構得意だったんですよ。
 で、こないだはじめて大型教習に通いだしたときもためしに通らせてもらったんですが、特に落ちることもなくタイムもちゃんとクリアした上で通過できたんですね。
 で、金曜日に正式にタイムを計ってやります、ということになったらこれがぜんぜんできない。もう落ちまくる。
 なんでできないんだろうと思うと焦って余計にできなくなるという悪循環で苦手意識ばかり強くなっちゃって、これがまさに軽度のイップスなわけです。これのせいで一段階終わるまでに二時間も延長しちゃったじゃないか。最長記録だこんなの。あたしの運動神経が鈍いだけかそうかそうか。
 こういうことはよくあって、大型自動車の免許を取るときも「坂道発進イップス」にかかって発進不能で試験落ちましたし、あたしの場合どうやら極端にプレッシャーに弱いらしいのでそういうこともあるんでしょうきっと。いかんなあ。強くならにゃ。
 まあ、こういうのはたいてい一時的なもので、次の日になってやってみるとあっさりできたりするものなんでしょうけど、そういうのとは別にあたしの場合昔からずっとかかり続けてるイップスがあるのですよ。
 ここでも何度も書いてることなので今更アレかもですが、高御さんはアレなんですよ、ひとつの目標として、「女の子を下の名前で呼びたい」というのがありましてですね。
 云ってること自体は別に難しいことじゃなくて、たとえば高野まみさんっていう子がいたとして、その子を「高野さん」ではなく「まみ(さん)」って呼ぶというそれだけのことなんですけども、まあその、普通の人からしてみればまさになに云ってんのというところでしょうけれど、ダメなんですよどうしても。呼ぼうとするとなんかあわわわってなっちゃうんです。
 これなんかまさにイップスなわけです。云うなれば「女の子の下の名前を呼べないイップス」なわけですよ。
 なんかアレじゃないですか、相手が男でもいいんですけど、下の名前で呼ぶのってすごく親しい人というそういう証みたいなところあるじゃないですか。親しくない人を下の名前で呼ぶこととかしないし、会社の先輩をいきなり下の名前で呼んだりとかあんまりないじゃないですか。
 ましてやそれが女の子ですからね、そんなのもうアレです、即手を繋いでキスでセックス、みたいなもんですよあたしからしてみれば。いやまあそれくらい難易度が高いってことです。
 だからこう、サークルとか会社とかですごい普通に女の子を下の名前で呼んでいる人とかを見るとなんかもうある意味尊敬のまなざしで見ていたわけなんですけど、どうもそれは尊敬のまなざしで見るようなものではなく、普通の人からすればなんら普通のことらしいんですよね。
 これがアレですよ、今日この「アレ」ってやけに多いなっていうのはともかく、まあそのね、本人を目の前にして云えないってのいうのならまだわかる、という方も多いかと思いますけど、これが別にそうでなくてもダメなんですよ。本人がいないところでもダメなんですよこれ。「まみちゃんがさ」って云えない。
 呼び捨てがきついんじゃなかろうかと思って「さん」とか「ちゃん」とかをつけてみるというのも試してみようとしましたけど、やっぱり状況変わらずで、ああこれはつまりそういうレベルの話じゃなくて、もっと根源的なところなんだろうなとはたと気づいたわけです。
 思うんですけどね、なにかそういう基準があるんだと思うんですよ。
 人は誰でも「女の子に対して気軽にやってもいいこと」と「ある程度の仲にならないと気軽にやっちゃいけないこと」という二つの明確なラインがあって、あたしの場合はこの「女の子を下の名前で呼ぶ」というのは、「気軽にやっちゃいけないこと」のエリアに入ってるんだと。めちゃくちゃ低いなラインが。中には「手をつなぐ」とかまで「気軽にやっていいこと」エリアの中にある人とかいますからね、どんだけ豪快なんだと。キスはアメリカとかだと挨拶代わりだよ、というのはまた別の話です。そういうの持ち出すとややこしくなるのでおいときます。
 だもんで、この話をすると「なんでそんなこともできないんだだからお前は童貞なんだこの不細工野郎」みたいな目で見られたりしますが、仕方がないことだったんですねそういうエリアの違いですから。そのエリアが広いか狭いかというそんなような。
 で、この中でも「女の子の呼び名を下の名前にする」というのは、あたしにとってはその人に対してなにか特別な思いを抱いているのだという無意識が働くわけです。とかすごい難しいこと云ってるけど云ってることそのものはなんかすんごい情けないよなどうでもいいけど。
 よくゲームとか漫画とかで、はじめて会った女の人が「高野まみです、よろしくお願いします」「はじめまして、高野さん」「まみ、でいいですよ」みたいな会話をしてそこからいきなり下の名前で主人公が呼び始めたりとかしますけど、あたしだってこういう業界で仕事をしてるわけですし、まあその物語的にずっと苗字のまま進行するのはおかしいから仕方ないというモノ書きとしての事情はわかるんですが、やっぱりそれはありえないっていうか普通にはなかなかできないと思うんですよ。エロゲーの主人公とかそういうことからすればものすげえことやってるなと思わずにはいられません。あれ話の中で見るとものすごい普通なことに見えるけど基本的にいろいろなことクリアしてからの話だよな。
 なんてかな、その瞬間ってすごい緊張すると思うんですよね。そのときが来てもまともに呼べる自信がないもの。それを考えただけでどきどきするものなんか。
 そういうことからすれば、女の子を下の名前で呼んで、さらに女の子のほうからもあたしの名前を下の名前で呼んでもらってはじめてなんかひとつ山を越えられるようなそんな気がするのです。
 するのです、じゃないよ。

<近況報告>
  • というわけで仕事と教習所とでなんだかもうてんてこまいです。いや半分は自分のせいですが。
  • 『とらドラ!』の独身(30)は可愛いな!
  • > 「悪意論」読みました。色々書こうと思ったのですが、結局言いたい事は一つに集約されてまして、/「子供をネットに繋がせるべきではない」という事です。もちろん精神年齢も含めての話ですが。/現実の世界で子供を1人で歌舞伎町に行かせるバカ親もそうそういない訳でして。それと同じではないかと。
     これすごく難しい問題で、わたし個人的には、子どもを完全な無菌状態にするのは却って危険だと思うんです。だから完全に遮断すればいいとかゾーニングすればいいとかそういうことで解決できる問題じゃなくて、結局「良心」というカタチのないものに縋るしかないんですよね。ネットって、驚くほど簡単に情報にアクセスできる手段じゃないですか。たとえばですけど、わたしが子どもの頃は、エロいものが欲しければ必死に大人のふりして少年ジャンプに挟んでエロ本買うとか、土手に落ちてるエロ本を見るとかして苦労してたものが、今じゃGoogleに繋いで欲しい単語ひとつ入れれば簡単にいくらでも手に入る。それってすごく大きい違いだと思うわけでしてね。つまり、「いかなる情報にも簡単にアクセスできてしまう」のが一番の問題であり、なおかつネットの一番の利点であり、さらになおかつ防げないネットの弊害でもあるわけで。そういう観点からも、我々大人がそういう悪意をネットに晒さないようにするという心構えをベースにしていくしかないと思うんですよ。ただ、昔「ファミコンは一日一時間」だったように、無制限にパソコンの前に子どもをはりつかせるのは弊害しかないと思います。
    > 『悪意』で思い出しましたが、マリスミゼル(仏語で悪意と悲劇)もヴィジュアル系ブームが過ぎたらキワモノ/扱いでしたね。流行ってた時は持て囃してたくせに。i-Podも音が悪いと文句言いながらも使ってるし、/結局横並びが大好きなんでしょうね。
     なんというか、ある程度人間って天邪鬼なんでしょう。スポーツ新聞なんかがいい例ですけど、あれなんか芸能人という人間に向かって平気で「旬」という失礼な言葉を使うわけですし、そういう感覚が「昔流行してたものってダサいよね」になるのではないでしょうか。
    > 携帯電話規制等の議論は通信の自由の一切無視したものだ。これ憲法を改正を前にした議論なのは自明だ。
     携帯電話の規制ってなんかありましたっけ? 子どもに携帯電話持たせるなっていう議論でしょうか。というか、「規制の確定」ならともかく、「議論」の段階ならどんどんしたほうがよいのでは、という気も。国籍法のようにろくに議論もされないまま通ってしまう怖い法律もあることですし。
    > 昔は「氏ね」とか平気で言う2chに恐怖を覚えましたが、最近はあまり違和感を感じてないような。/慣れたんですかね。それともまとめサイトしか見てないからそういう所は見ないで済んでるのか。
     たぶん慣れたんだと思いますよ。そんなに見慣れてないあたしは今でもどきっとしますもの。ああいうの書く人は、たぶん何の悪意も罪悪感もなく書いてるんだろうなあと思うから余計に怖いんですよね。あとは正義のつもりで無意識の悪意を撒き散らしてる人とか。それに比べれば、「荒らし」は明確な悪意を自覚してる分、まだ「荒らし」のほうがましかもしれません。
    > 30前後で『彼氏という生物は存在するのか』と言う女性達も意外に多いですね…女性は外見ばかり重視される/ケースが多いですし、『売れ残り』と罵倒されないだけ魔法使いの方がマシかもしれないですよ。
     いやいや、外見ばかり重視されるのは基本的に男でもかわんないすよ。やっぱり顔の形ひとつでぜんぜん扱い変わってきますもの、というのは、32年間不細工で生きてきたあたしとしても嫌というほど実感してますから。さらに男の場合、へたすると年収とかまで絡んできますからね、男でも「売れ残り」とか云われたりするわけで、やるせないことこの上ない。ただそういうプレッシャーは男性よりも女性のほうが強いのはなんかわかります。なんてか結局、大変なのだなあお互いに。


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