10/17 「出雲論」

 ということで、いやなんかもうね、すっかり月刊化している今日この頃なわけなんですけども、出雲へ旅行に行ってまいりました。もう9月の話ですけども。
 なんで今更ってそりゃあなた書くネタのひとつひとつ拾っていかないと月刊から隔月になって季刊になって最後は年刊になるぞこの野郎。だから何に向かって怒ってるんだよあたしは。っていうか逆ギレもいいとこじゃないか。
 まあ、行ったきっかけというのは今年は夏休みがせっかく取れたのでちょっと遠くに行きたいなあと思ったのと、そういや出雲はしばらく行ってないなあというのがありましてね。平日ならたいして混んでないだろうとそういうあれでして。台風来てたけどな。
 とりあえず連休中日だった日曜日の夜に出発して、首都高から東名、名神、米子道と順調に走り抜けます。前回出雲に行ったときはここで伊勢に立ち寄るという無謀なことをしたためにえらく遠回りをすることになりましたが、今回はそういうあれもありません。
 前回はそれもあって兵庫県がえらく長く感じたものですが、今回はそんなでもありませんでしたね。渋滞に巻き込まれることもなくするするっと9時間ほどで到着してしまいました。
 最初に立ち寄ったのは揖屋神社。前回の出雲旅行で行けなかった場所です。
 行ってみればちょっと細い道は入るものの、今になってみればなんで行けなかったのかよくわからんというようなところでして。一応連休最終日ではあるのですが、神社には誰もいなくて、実に閑静な場所でした。境内は結構広くて、稲荷神社の前には千本鳥居もあったりとか。
 その次が黄泉平良坂。前回の出雲旅行でも行った場所です。死者の国との境目とされ、『古事記』ではイザナギがイザナミから逃げて岩を引いた決裂の場ですね。ちゃんとその岩「千引の岩」も残っていますし、逃げる途中に桃の実を投げつけたという神話の通り桃の木も植えてあります。
 ここも誰もおらず、脇の川なのか池なのかで釣り糸を垂れていた人が何人かいたくらい。普通の人が観光に来るような場所じゃないということなんでしょうか。それとも普通の人は出雲大社だけ行って帰ってしまうということなんでしょうか。
 どこか不気味な雰囲気が漂うのは前来たときと一緒で、坂を上ったところにある不気味な池もそのまま。ただし、前回あった石刷りの台は草に埋もれており、エロビデオのパッケージもありませんでした。このへんが月日を感じさせますね。そんなことで感じて欲しくないとは思うけど。
 あと非常にどうでもいいことですが、どうやら連休あわせのイベントなのか「東出雲ポイントラリー」というのをやっているらしく、問題文を見たら、「この石碑を建てた当時の町長は誰」みたいな問題で知るかそんなこと。もっと神話とかそういうのに関連した問題を出しなさいよ。
 そのあとは国道9号をさらに出雲方面、西へひた走ります。さすがに車が多くちょっと渋滞気味。ちょっと時間はかかったものの、無事に目的地である出雲大社に到着しました。
 ここはさすがに混雑していて、かなりの人手。しかも雨まで降ってきていてもうなんか相変わらずの雨男っぷりですけども、それはまあよいです。
 出雲大社と云えば、ご祭神はオオクニヌシ。もともと葦原中国、つまり地上を納めていた神様ですが、高天原の神様に国を譲り渡し、その代わりにこの出雲大社を建てさせたという由来ですが、この出雲大社、どうやらオオクニヌシがスサノオから娘であるスセリヒメを奪って結婚したところあたりから縁結びの縁起もあるとのことでこれはもう多少なりとも気合入れていかないと。もう今更な気もしますが。
 混雑した境内で参拝を済ませて、ちょっと宿のチェックインまでまだ時間があったので、次に向かったのはやや奥出雲方面にある須佐神社。文字通りスサノオを祀る神社で、前回行ったときは誰もいなかった実に寂しい場所でしたが、なぜか今回は駐車場がいっぱいなくらい人が。いやまあもともとそんなに大きい駐車場ではないにせよこれはちょっと驚きました。しょうがないのでちょっと離れた駐車場に車を置いて徒歩で向かいます。前回も紹介しましたが、七不思議とかそういうあれで実に趣き深い場所ではあるんですが、いかんせん車がないと行きづらいのが欠点かもしれません。一応バスも出てるようですし、観光客の中にはタクシーで来ている人もいたようでしたが。出雲大社あたりからだといくらかかるのか考えただけでも恐ろしい。
 そのまま道路を北上し、出雲大社を通り過ぎて日御碕神社へ。この頃になると雨も降ったり止んだりでだいぶおとなしくなってました。
 さすがにここまで来ると人影も少なく、海が近いのでほのかに潮の香りも漂い、なんだかいつまでもいたくなるような場所です。前回は時間がちょっと遅かったので気づかなかったのですが、境内も意外と広く、摂社末社を含めるとかなりの数があります。
 ここからさらに山を登っていくと突端、日御碕に到着します。前回泊まったのはこの日御碕にある国民宿舎だったのですが、既にその国民宿舎はあとかたもなくなっており、ただの駐車場というか転回場になっておりました。これはこれでなんだか寂しいものです。ほかは何にも変わってなくて、やたらと積極的な土産物屋のおばちゃんもそのままでした。あたりまえか。
 この日はこれで終了し、出雲大社すぐそばの宿へ。今回は意図的にボロい旅館に泊まろうというのがコンセプトだったので、新しいホテルとかは選ばずにそこそこボロそうな旅館を選んだんですが、これがまあ見事にボロい。なんせ映るテレビのチャンネルなんて三つですからね。もうステキすぎます。しかも朝になると近くで道路工事が始まるというオプションまであり、なんかもうやるせないことこの上ない。そのかわり食事はなんかやけに美味かったな。
 二日目は、これもまた前回と同じく回る中心は八雲村周辺。すっかり雨も止んで暑いくらいでした。ついに雨男返上ですよ。無理だけど。
 とりあえず出雲大社から国道と市道を走ります。連休明けの平日なので地元の車が多く、観光渋滞は皆無でしたが前に遅いトラックにつけられたりとこれはこれで結構大変です。
 まずは宍道湖の北側、佐太神社。アマテラスとニニギノミコトという、国譲り物語では高天原側にあった二人(二柱)が本殿の御祭神です。それだけあってかかなり大きな神社ですが、これだけぽつんとはずれにあるのはやはりそういう歴史風景あってのことなんでしょうか。
 ここもまた平日なこともあり誰もいませんでしたが、休日になると賑わうんでしょうか。かなり大きい駐車場があり、割合行きやすい場所だと思います。付近の道が細くてわかりにくくはありますが。
 そこから南下、八雲村八重垣神社へ。ここは前回、縁結びのご利益があるということで気合を入れて行ったものの、ものすごい勢いで本殿が工事中でゲンナリした場所ですが、さすがに今回は工事も終わっていてすっきりしておりました。念入りに彼女ができる旨祈らせていただきましたよそれはもう。
 ここはさすがにというかなんというか人も多く、そのほとんどが若い女性。あたしも必死ならいい人捕まえたい女性たちも必死だとそういうことなんでしょうな。実に健気なものです。俺もな。
 この奥に、鏡の池という場所がありまして、これは何かと云うと、社務所で売ってる紙に10円玉か100円玉を乗せてこの池に浮かべまして、それが沈むまでの時間が長ければ恋人ができるまでが長く、短ければ短いという、まあ一種の占いなわけです。
 こんなものは普通は若い女性が何人かでやってきてきゃいきゃい云いながらやるもんだと思うんですが、ここはちょっと占っておくべきだと思いましてやってみましたね30男が女の集団に混じって。なんかちょっといろんな意味で恥ずかしかった。なんかOLに人気のデパ地下スイーツの店に一人で並んでるみたいな気分でしたよそんなことやったことねえけど。
 すぐ横にいた女性は10秒くらいで沈んでましたがあたしのは40秒くらい浮かんでやがりました。人生ってやつは無情なものです。でもあれだぞ、その横にいたメガネのなんか図書室とか似合いそうな女性があたしより早く浮かべたのにまだ沈んでなかったから。もうその人すっごい絶望的な表情してた。いやまて今そのひととあたしの間で恋がはじまったりしないかなあ。しないな。お互いがんばりましょうね。誰だか知りませんけど。
 そこから神魂神社へ。ここも前回行った場所でしたが、八重垣神社とはうってかわって人の姿がほとんどありません。ここも歴史のある静かな場所でいいとこなんだけどなあ、というところなんですが、なかなか出雲大社から離れてたりとか縁結びに明らかなご利益が!みたいなのもないのでそういうあれなのかもしれません。まあ、静かなくらいのほうが個人的にはいいんですけど。
 次もまた前回行けなかった場所。真名井神社です。ここはまあ、前回辿り着けなかったのも仕方がない、というようなあれでして。細い道を不安になるくらい走ってようやく、という按配。行ってみれば観光地とかそういうのよりも、むしろ地域の人のための神社という感じのところでしたね。いちおう立て看板が立ってたりするあたりはそういう需要もあるんでしょうけど。御祭神はイザナギで、この神社の裏にある山がカンナビ山なんだとか。小さな神社ですがかなり歴史と由緒ある神社らしいです。
 次に熊野大社へ。さすがに「大社」と云うだけのことはあり、出雲風土記にも登場し、揖屋神社と同じくらいか、それ以上の歴史を誇る神社です。
 熊野の名前の通り、御祭神はスサノオ。かなり広い境内にそういう歴史を感じさせてくれます。前回来た時は雨が降ってて、社務所から退屈そうに空を見上げる巫女さん、というなんだか妙に絵になりそうな風景に出会ったわけですが、流石に晴れててそんなこともなく。っていうかめったにないわなそんなことは。
 次の目的地は須賀神社。『古事記』の中で、スサノオが「この場所は実に清々しい」と云った場所がここで、そこから「須賀」の名前が付いたのだとか。そのときに有名な和歌「八雲立つ出雲八重垣妻篭みに八重垣作るその八重垣を」を詠み、それゆえに「和歌発祥の地」とされていて石碑も立っています。
 前回来たときはちょっと迷いましたが、さすがに二度目とあって迷うこともなく。小さい神社ではあるんですが、その歴史と「和歌発祥の地」というその言葉になんだか妙に行きたくなるんですよね、ここは。行って何するわけでもないんですけど。
 一応これで二日目の予定はいっぱいいっぱいだったので、そのまま二日目の宿泊地、湯の川温泉へ。
 出雲地方の温泉だとどうしても玉造温泉あたりが有名なのですが、その影に隠れたおそらく無名な温泉地です。ちょっと鄙びた感じの場所ならどこでもよくて選んだのですが、行ってみれば意外な発見だったのが、ここの温泉はヤガミヒメという神様と非常に縁深いのだとか。
 ヤガミヒメといえば、オオクニヌシから求婚したにもかかわらず自分はさっさとスセリヒメと結婚してしまい、残されてしまった気の毒な人ですが、この人が美人になったのはここの温泉に入ったからだという話があるのだとか。
 事実、泊まった旅館のはじっこには小さな祠ではありますが「八上姫神社」が残っていたりもします。
 三日目。今まではわりと行ったことのある場所半分という感じでしたが、この三日目は新たな境地。帰宅は今回も山陽道の東城インターからと決めていたので、基本的にはひたすら南下。一度最後に出雲大社に参拝してから、国道9号を安来までひたすら戻ります。これが長かった。有料道路を一切使わずに行ったからってのもあり、二時間くらいかかったのと違うか。
 安来から南へ向かうと、やがて比婆山という山の麓の久米神社というところに辿り着きます。
 比婆山というのは、『古事記』でイザナミが葬られた墓場とされている場所でして、本当はここを上っていくとさらに神社があってそこにイザナミの墳墓があるそうなんですが、時間がなくて行けずじまい。駐車場があれば無理して登ってもよかったんですけど、邪魔にならないスペースというのがなかったものでこの麓の神社だけ参拝して出発してしまいました。いちおう「比婆山入口」の看板や案内看板があったりもするのでそれなりにここまで来る人もいるのかも知れません。ただまあ、よっぽど好き物でもない限りはわざわざ行く人もいないと思いますが。だってまわりなんにもないんだもの。
 さらに南下を続け、出雲横田駅まで。無人駅だとは思うのですが結構立派な駅舎で、まわりも民家や新しい小学校なんかがあったりとなかなかにぎやかな場所。ここにある稲田神社が目的地です。
 こんな碑が建っている通り、スサノオがヤマタノオロチから救ったクシイナダヒメを祀る神社であり、なおかつそのクシイナダヒメが生まれたのがこの場所なのだとか。なるほど確かにここのすぐ山側には、『古事記』に出てくる「鳥髪」の地名もあり、そこから流れてきた箸を見つけてそこに人がいるということがわかったというスサノオの話も、理論的には納得できる話ではあります。
 ちょっと戻る感じになりますが、そこからその鳥髪まで行って参拝してきたのが、この出雲旅行最後の神社になった鬼神神社。なんといっても名前のインパクトが凄いです。なんかちょっとしたエロゲーとかに出てきたら間違いなく奇怪な事件が起きそうな感じ。なんだこのエロゲ脳は。
 で、その鬼神神社、いったいどんな恐ろしい神社なのかと云うと、実はイソタケルやスサノオを祀る普通の神社です。別にかつてこの地方を荒らしまわっていた鬼を封じたとか、そういう物語的に美味しそうなネタが転がっているわけではありませんでした。武神として祀られるイソタケルを「鬼神」と称したのがその由来のようです。まあでも想像力の膨らむ名前ではあるよな。
 その後はそこから近かったので、「鬼の舌震」という列石がある川にも行ってみたのですが、一蹴すると二時間かかるというので引き返してきてしまいました。さすがに二時間はどうも。しかも山道だから行って帰ってきたらたぶん死ぬほど疲れてるだろうしこれから運転して帰ることを考えるとちょっと。
 南下して、途中前回わざわざ一駅分を乗った出雲坂根駅。なんか名水があるとかで、この駅電車に乗るわけでもない人がたくさんいました。いやまあたくさんっても十人程度なんですけど、今まで見てきた場所なんて一人もいないのが当たり前みたいなとこありましたからね。それに慣れちゃうと十人は大混雑ですよ。
 ちょうどそのとき電車が来たんですが、電車から降りた人がものすごい勢いで水汲んでたのが凄かったなどうでもいいけど。電車はほぼ満員な感じでこれもまた珍しいと云えば珍しい。
 あとは広島東城インターまで南下、東京まで一直線。それほど疲れてもいなかったのか仮眠なしで走りきりました。名神・東名あたりはトラックが多くて精神的には疲れましたけどね。なんで奴らはリミッター付きトラック乗ってて上り坂でわざわざ追い越し車線に出てくるんだほんとに。ちょっと考えていただきたい。
 という三日間の旅行。相変わらずの神社三昧でしたとさ。

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