03/21 「カップルのおはなし」

 とは云うものの、あれですよね、もう前からすっごい疑問だったんですけども、カップルになると公衆の面前でもいちゃいちゃしないといけないみたいな法律でも世の中にはあるんですかいやあたしは女の子の手も握ったこともないですからよく知りませんけれども。
 いやさ、ここんとこ春先で暖かくなってきたからか知らないけども、なんかやたらと電車の中とかでカップルを見るんですよ。別にそれはいいさ。もうここまで不細工童貞こじらせてればそれが羨ましいとかうっとおしいとかも云わないさね。これ不思議なもんでね、ある一定のところを超えるとこういうの羨ましさとか急激になくなるんですよ。知ってるかな?
 それはいいんだけど、なんだかあいつらみんなすっごい寄り添ってるのな。もうね、くっついてるとかそういうレベルじゃないの。びたーってくっついてるとか抱き合ってるとかそういうあれ。満員電車の中ですっごい抱き合ってるのな。お互いに手とか回しちゃったりしてなんなんだあれは。普通に話しとかしてればいいのになんにも話さずにただ抱き合ってるの満員の電車の中で。何二人で世界に入ってるんだと思うところではあるわけさね。
 今日見たやつなんか、二人で座席に座ってて寝てるんだけど、もう女のほうが男の胸に完全に埋もれてるの。寝ててついよりかかっちゃったとかそういうことじゃなくて、もうその体勢却って寝づらいだろどう考えてもみたいな姿勢で胸にすっぽり埋まってるわけ。時々ちょっと目を覚ましてなんかもぞもぞしててああ起きるのかなあと思ったらより苦しそうな体勢になったりしてんだよこいつがよ。なんだあれ。
 まあね、気持ちはわかるんですよ。もしあたしが今ここに来てなんだかんだで女の子とお付き合いしましたよみたいなことになったとしたらだ、やっぱりこうなんかべたべたしたいと思うと思うもの。いやこれは思うに違いないさ。それは正直に云うけどもこれはたぶん間違いない。特に今からなんてことになるとはじめての彼女だったりするわけですからこれはもうね。もう毎日がそのことばかりになるに違いない。そしたらたぶんホームページの更新とかしなくなる自信あるもの。そういうあれだったらやっぱりいちゃいちゃもしたくなるさね。たぶん余裕で毎日電話したりとかしたくなると思うよ。わかんないけど。
 よくさ、エロゲーとかやってると、
「なんだよ、あんまりくっつくなよ」
「だって、寒いんだもん」
「寒いってお前、今日はこんなにあったかいじゃんか」
「……えいっ」
「うわっ!馬鹿、抱きつくなこんなとこで!みんな見てるだろ!」
「えへへー、背中、あったかいなー」
「……ちょっとは人の話を聞けって」
「なんかね、すごく思うの。いまわたし、しあわせなんだなーって」
 みたいな、もうこれ以上ないくらい甘ったるいシーンなんかがあって、それに対してなんだかこうえも云われぬ憧憬みたいなのを覚えないではないんだけれども、まあそれの進化系じゃないですかああいうのって。やってること自体は本質的にはそんなに大差ないと云うか。たぶんそういうのをリアルでやるとああいうことになると思うんですよ。そういうことからすれば、まあ気持ちはわかるんですいち童貞としてね。否、寧ろ童貞だからこそわかると云うかなんというかな。
 先にも書いたけれどもさ、もし何かの間違いでこんな珍面不細工面でもいいとそういうその美的感覚はちょっとどうか、みたいな女の子が世の中に存在したとするじゃないですか何だお前そこまで云うことないだろああそうか俺か。しかしあれだ、最近こう思うんだけれども、いい加減ここまで来ると鏡とか見るたびにそういう意味での絶望感は募るばかりだな。そんなこと何を今更ってなもんですけども。こういうこと書くとまた「自分ではそんなこと思ってないくせに」みたいな勘繰りを受けるんですけども、そんなもん30年近くも童貞のままの人生送ってれば嫌でも気付くってあたしだってばかじゃないんだから。
 いやね、ちっとも話が先に進まないのであれなんですけれども、まあとにかくそういうあれでお互いに気が合ったりして紆余曲折を経てなんかこうお付き合いすることになりましたよと。それでもって普段一緒に歩きますよと。そういうとき貴方ならどうしますかってそういうことなわけですよこれは。
 ほんとはこういうことは学生時代に済ませておくのがあたしの夢で、学校の帰りに自転車の後ろに横座りの女の子を乗せて土手を走るとかそういうのすっごくやってみたかったんですがもうそんな夢も適わずなわけでしてね。シチュエーションとしてどういうのが今のあたしに合っているのかがぜんぜん思い浮かばない時点でものすごく敗北な予感はしていますけれどもまあそれはともかく。
 あれなんですけれどもね、現状、「手を繋ぐ」以上のことがハイブローすぎて想像の及ばない範疇ではあるんですけれども。いやさ、街中のカップルがどうしてるかなんて知らないし、どういう行動をしたらいいのかもわかんないしさ。まああれかなあ。手を繋ぐかなあ。駄目だなほんとに。少なくとも抱き合うとかそういうのは選択肢の中にはないね。っていうかできないね、ハイレベルすぎて。まあ電車の中とかで手を繋いでる奴もどうかと思うがな。わざと真ん中通ってやろうとさえ思うけど。
 ただね、間違いなくなんてかな、こう「見せびらかしたい」みたいなのもあると思うんですよ。俺の自慢の彼女だぜ、こんなに可愛い子が俺とこんなに仲がいいんだぜ!みたいなな。これもまあ理解できなくはなくて、なんかこうあれですよ、子どもの頃とかになんか新しい筆箱とか買ってもらったとき、特に意味も無く机の上に出しっぱなしにしておいてなんかこう友達が食いついてくるのを待ってたりするじゃないですか。そういうあれがないとは云わない。いやまあ実際にやるかどうかは別にして、まあ理解はできるわけですよこれ。
 ただ、キスな。あれだけはわかんねえ。よくほらいるじゃないですか駅とかで堂々とキスしてる人。あれどうなんだと。もちろん「抱き合う」とかもあたしの中ではどうもそれはどうなのよ的なあれなわけなんですけれども。あれを見るともうなんかこういたたまれない気分になるわけですよ。もういちゃいちゃするとかそういうレベルじゃないじゃないですかあれ。
 昔はああいうの見るとそれだけで意味も無く怒ってたりしたんだけれども別にもうそういう感情はなくて、童貞的思考でいくと、こういうあれだ、抱き合うとかそういう行為はもう二人っきりでやるものなわけ。わかんないけどそういうの大事だからさ、滅多矢鱈とやっていいものじゃないわけじゃないですか。
 そういう行為ってのはあれですよ、それをやったことによって二人の仲が変わるくらいの大きい出来事なわけです。ものすごく大きい事件なわけ。それをだ、公衆の面前で惜しげも無く繰り広げるなど間違ってるとしか云いようが無い。いっしょにいるだけで幸せじゃだめなのかとそういうことなわけ。なに云ってることが童貞臭い。童貞だものあたりまえだろ。
 そういうあれであるので、絶対に公衆の面前ではいちゃいちゃしないと誓った会社帰りの電車でありました。それ以前にそういう状況になることがあるのかというようなそういうあれがあるわけなんだけれどもな。
 ああそうか鳥インフルエンザとかで急逝しちゃえばいいのか俺とかそうかそうか。

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