02/26 「過ちのおはなし」

 とは云うものの、世の中には絶対に繰り返してはならぬことというのがたくさんあります。
 昨年の「紅白歌合戦」では、さだまさし氏が「広島の空」を歌い上げましたが、それに歌われる原子爆弾などその最たるもののひとつのはずで、こんな愚かなことを繰り返してはなりません。過ちは過ちとして人類全体の教訓とし、かの曲にもあるように、武器を恨むのではなく、悪魔を生み出す人の心を恨むべきなのでしょう。
 ただし、哀しいことに世界のあちこちではまだまだ人が人を殺す戦争が起こっています。
 そういうことに対して我々ができることは何か、そして我々がしていなかければならないことは何か。一人一人がそれを考えていかねばならない、そんな時代が来ているのです。
 といようなそんな高尚なこととは一切関係なく、ほら、誰しも過去って忘れたいものと一生とっておきたいものがあるじゃないですか。
 たとえばあれですよ、あたしなんかだとこうたぶんこれからも一生キスとかできないだろうからさ、前回書いたみたいな女の子とキスしましたなんてのはもうこれ一生墓場まで抱えていきたい記憶ですよね一生できないとか云うなこの野郎。
 反面やっぱりこうそれはないよなあ的なこともあって、そんなものはもうこんなところにさえ書けないこととかってのもいっぱいあるわけなんですけども、とりわけその数年前の自分の趣味嗜好的なところというのはなかなかにキツイものがあります。
 ときめきメモリアルというゲームがありましてですね。もうあれですよ、この名前を出した瞬間に色々な苦々しい記憶が頭の中に蘇ってくる人はたぶんあたしと同じ世代ですねこれね。
 今でこそアキバ系だ萌えだみたいなそんなようなあれで、ちょっと回りを見回せばもうそこに萌え萌え女の子がいっぱいいる世の中になってるわけなんですけども、なんだこの萌えだのなんだのって言葉自体がもう恥ずかしいっていうか素じゃ絶対使わないっていうかぶっちゃけアホかみたいなもんではあるんですけれどもそれはともかく、まあそういう世の中じゃないですか。深夜でもテレビつければ何かしら女の子がパンツ見せてるようなアニメやってるし、へたすりゃゴールデンタイムの番組にもご主人様あーなんて云ってる自称メイドのクソどもが映ってるわけですよ。なんなんだ何に対して怒ってるんだ俺は。
 まあね、とにかくそういうあれなわけですけれども、ほんの10年前はそんなことぜんぜんなかったわけです。
 可愛い女の子の絵が見たければパソコンのエロゲーとかアニメとか、あるいは出始めたばかりのギャルゲーとかそういうあれくらいしかなかったわけですよ。
 というような前提があった上で、新星のごとく現れた「ときメモ」は、当時二次元ギャルに飢えていた人種にスマッシュヒットを浴びせ、時代の寵児へとのし上ったわけです。
 話せば長くなるのでそのへんばっきり割愛して、わたしも当時本気で声優になるんだと思っていた時期がほらあたしだけじゃなくてそういう時期ってはしかみたいなもんでさみんな一生に一度くらいはあるじゃないですかあるだろあるって云えよちくしょう。
 そんな時期にそのなんだ声優がどうこうをきっかけに「ときメモ」熱が尋常じゃなく過熱し、当時「ときメモ」にかけた時間と金と情熱を何かほかのところに振り向けてたらきっと俺今ごろ結婚とかして娘のまみ(3歳)の幼稚園の運動会とか行ってたんじゃねえかなあとか思うわけですこれ。ところがどうだ、フタあけてみれば女の子の手も握ったことない童貞のまま一人で夜中にこんな文章書いてるじゃねえか。
 そういうあれで、この時期はこの時期でいろいろ面白いこともあったしいいんですが、この頃にハマっていたものというのはこれはもういっそのこと消し去りたい過去でございまして、今でも「ときメモ」とか「声優」とかそういう言葉を聞くとこうなんだ、脇の下を手羽先で擽られているようななんだかこうなんとも云えない気分になったりするわけでございます。
 で、まあその、それ以来、ハマったゲームとか好きなゲームとかは数多くあるわけですし、今でも「月陽炎」なんかはあたしの中ではこう実に名作だなあみたいなそんなようなあれがあるわけなんですが、それでもかつてのときメモのようなハマリ方をしたものはありません。だってあの頃凄かったもの。グッズと見れば滅多矢鱈と買い漁ってたし、ときメモ記事があれば雑誌買ってたし、普通に大型ときメモオフ会とかに出られたしな。もう今じゃ考えられない。
 とまあなんでそんなことを急に云いだしたかと云いますとですね、こう部屋の片隅から呪いの人形でも入ってるんじゃねえのかってくらい厳重に梱包された段ボールが出てきまして。なんだこりゃと思って開けてみたんですけども、まあそのこの展開からだいたい想像つくと思いますが詰め込まれたときメモグッズ。もうな、凄いことになってた。間違いなく一回も聴いてないどころか封さえ切ってないドラマCDとか、ゲームセンターの景品だと思われるポスターとか貯金箱とかコーヒーカップとかなんとかもう盛りだくさんでさ。写真立てとか意味わかんない。写真入れるところにキャラクタの絵入ってるの。これじゃ写真入れたら隠れるだろ絵が。だいたいなんの写真入れるんだよこんなもんによ。しかもなんかわかんねえけどフォトスタンドだけすっげえいっぱいあるの。何枚入れるんだよ写真を。まみ(3歳)の成長写真か。
 しかし今考えてみるに、なんであんなにもハマってたんだろうなあというのはこれはもうひとつ疑問ではあるわけですよ。
 もちろんなんていうかな、こう日照りっていうかあんまりギャルゲーとかがないところに突然出てきたってのもあるだろうし、ゲームそのものが今考えても比較的よくできていたというのもこれあると思います。
 だって絵なんか正直どうにもなんねえものあれ。普通に考えれば、どう見繕ってもあの絵でギャルゲーとか心からありえない。ギャルが可愛くない時点でマジありえない。
 まあね、たぶん我々当時のオタクどもは、そういうなんていうかこう癒しを求めていたんじゃないかと思うのですよ。現実社会ではこれっぽっちも女っ気のない生活の中、こちらから歩み寄らなくても勝手に惚れてホホを赤らめながら告白してくる女の子たちに幻想を見出していたわけ。
 そういうなんだ、お姫様を待ちつづける王子様の中にいたわけですよ我々は。なにそれは今でも変わらぬと申すか。まあなんだそのあとTo Heartだったしな。根本的なところはあんまり変わってないな俺とかな。ほっといてくれ。
 というわけで、この発掘された今ではどうにもならない大量のグッズの山をどうしてくれようか真剣に悩んだんですけども、まさかいくら童貞とはいえ29になってキャライラストのポスターを部屋に貼るのもどうかみたいなところもあるし、スタンドっておくようなフォトもないしいまさらドラマCDとか聞かない自信あるしということでまとめて処分しました。なんかゴミ箱の中から微笑んでるミキハラさんの笑顔を見てたら青春が終わった気がしたね。
 ま、そんなこんな云っても、このページのルーツが「ときメモ」のサイトであった事実は変わらないんだがな。どうせもうそんなこと知ってる人いないんだから黙ってりゃいいのかそうかそうか。

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