シスタープリンセス


<注意>
「シスプリ」が好きで好きでたまらないので、あのゲームやキャラクターに文句を云うやつは絶対許さないとかそういう人は読まないでください。
 お互い不幸になるだけです。いやほんと。
 突然ですが、『シスタープリンセス』(以下「シスプリ」)を購入しました。
 前々からある意味トンデモ系のゲームだと思ってて、それでも世間一般のギャルゲーマーたちにはこれでもかとばかりに人気が高くて、どうにもこうにもそれがなんでなのかさっぱりわからなかったのです。それこそサターンの落し子『デスクリムゾン』のように、イロモノとして売れてるというのならまだ理解できるのですが、どうもこれはいわゆる「萌え」ゲームの真骨頂みたいな位置に位置付けられており、なんか同人誌なんかでの人気も高いそうで、それがはっきり云ってまったくわからなかったのです。わたしには。
 だってあなた、「いきなり12人の可愛い妹が!」というコンセプト。欲求に直球ストレートという意味合いにおいては果てしなく解りやすいけどその状況というのはさっぱり解らないわけでして、「どうしてそんな状況になったのか」というのは、プレインフォメーションではさっぱり語られていないのですよ。それはどういうことかというと、「この作品の舞台は日本です」とかそういう暗黙の了解と同じレベルに、「この作品には妹が12人います」というのがあるということです。客観的に考えると、かなりなんじゃそりゃであることは云うまでもありません。お兄ちゃんと云われることに果てしなき快感を覚える人にとってはこれもアリだと、そういうことなのかもしれませんが。
 まあそんなこんなでかなり気になってはいました。いたんですが、どうもイマイチふんぎれずにいたのは、別にそれ自体に興味があるわけでもないようなものに5千円も6千円も出すようなリッチな生活は送っていないということがなにより大きかったのです。そこへ来て、ふと立ち寄った店で安く売られているのを発見し、ちょっと迷った挙句にゲット。なんかレジに差し出すとき妙に恥ずかしかったです。エロゲーならなんでもないのにね。

 メディアワークスとスタックソフトのロゴに引き続いて、デモ。なんか次々に妹キャラクターたちが紹介されているらしいです。いちおう歌らしいものも流れてはいるのですが、ほとんど歌詞は聞き取れません。いや、そんなことよりも呼びかけられてますよなんか。お兄様、お兄ちゃん、兄や×etc12。それだけで頭が痛くなってきます。どうでもいいけど「兄くん」ってのはいくらなんでもあんまりじゃないのか。あんまり取り沙汰されないけど、このオープニングもただ単に毒が無いだけで、確実に「センチ」クラスの大化けの可能性を秘めていたことはほぼ間違いありません。
 まあ、それでも、これが世のギャルゲーマーたちを虜にした罪深き女性キャラなのだと思うと嫌が応にも期待が高まるわけでして、このまま萌え萌えワールドに没落して、クリア後にはこのオープニングが酷く魅力的に映るようになるのかも知れぬなどと思うと感慨深いものはないこともありません。ないけどな。
 それが終わると名前入力。当然、いわゆる「デフォルトネーム」があるものだと思っていたのですが、どうもそれらしきものが入力されていない。これ、どうやらデフォルトネームが無いらしいです。なにか入れねば成らぬと催促していらっしゃる。しょうがないのでふと思いついた名前である「犬養毅」と入れようとしたのですが、「毅」がねえでやんの。しょうがないので「団鬼六」でプレイ開始。縛りの巨匠ですね。これなら妹キャラたちをふん縛ったりしてなんか違うゲームになる展開もまたありきです。「決定」ボタンを押した後に、「名前を入れろ」だから、苗字は要らなかったんではないかなあなどと思ったのだが後の祭。まあ別に本気でやる気もないんで非常にどうでもいいというのも大きいんですが。
 でも、これでようやくゲームが始まります。
 最初は部屋。パソコンをいじくっている鬼六。そこへ妹からメールが。
 長いので極端に省略すると、要するになんかパーティをやるので来てくださいと、まあそういうことらしいです。それはまあいいんですよ。「ラブ♥」とか入ってますけど。声入りで。思わず衝動的にリセットボタンを押してしまったのはもう本当に私の心の弱さであるというよりほかにはありません。反省しつつ、既にこの時点でこのゲームを開始してしまったことを後悔しはじめているというのが正直なところですが、そんなことを云っていても始まらないのです。俺は萌えの人になりたいのです。これくらいの試練を乗り越えずしてどうしますか。ん?試練?まあいいや。
 で、そのメールを頑張って読み進めてみます。読み終わった鬼六、パーティに行こうと決意。台詞、「まあいいや、明日はどうせヒマだったし、妹たちにはいつでも会いたいもんな」なんか壮絶な倒錯愛を感じずにはいられませんが、こんなところでめげていたはどうしようもありません。まだ一人も女の子出てきてないのに。
 で、翌日。公園で妹キャラと待ち合わせ。あっ、いたいた。おーい可憐。「あっ、お兄ちゃん。おはようございます♥」いちいち♥はよせ♥は。
 そのまま無理矢理にパーティ会場に連れられていく鬼六。異常に豪華な建物に招き入れられて狼狽。「ああっ、どうしよう。9人とも何を考えてるんだよぉ」などと云っていますが、俺にはその状況を当然のものとして受け入れてるお前のほうがなにを考えてるのかわかりません。
 意を決して建物の中へ行き、扉を開くと中も外見通りの豪華さ!うーん、こりゃすごい。「よぉアニキ、中に入ってくるまでずいぶんかかったな!」などと声をかけられます。これもどうやら妹の一人らしいです。はいはいなんだね君は。まずその言葉遣いはなんとかしなさい。
「あーっ!おにいたまだぁ!」
 ごめんなさい許してください。悪いのは全て僕です。
 思わず謝ってしまいましたが、既に脳がエンドルフィンとドーパミンとα波を通常の15倍くらいの勢いでボエーボエー出している中で、これはいくらなんでもきついですよ先生。熱い風呂からいきなり水風呂に入るようなもんです。熱帯魚なら死んじゃいますよ。熱帯魚でなくても死にそうなんですけど。
 なんかテンションばっかり高まっていくのを感じる中、ボタンを只管クリック。要はここはキャラクター紹介なのでしょうが、もうあまりにもなんというかイヤッホーな感じの女の子でなんともはや。しかも誰一人として似てないんだコレが。どういう関係なんだよお前ら。屋敷をどうやって借りたのかなんてこたどうでもいいからそれを教えろよ。
 そういうあれなので、次から次へと攻略対象であるところの妹が出てくるわけですが、ここを読み飛ばすと後からそのキャラの人となりがわからなくなってしまう恐れがあるので一生懸命読みます。ようやっと落ち着き、パーティの趣旨がわかるかなとそういうあれで「チェキー」殴ってもいいですか。棒で。
 既に世界中のいかなる言語とも異なる言葉を話すギャルゲーキャラというのはあまたいますが、こいつは間違いなくボスキャラクラス、ドラクエで言えばハーゴンです。なんでIIか。ある意味で12都市12電波少女の「りゅん」と同じくらいアレです。
 しかも最初は九人だった妹が、「プレゼント」の名目で三人増えたらしいです。どうやら。あまりに説明されないのでもはや推測でしか物事を語れません。普通、ごくまっとうな脳構造を持つ人間ならば、この状況に対して何らかの猜疑心や恐怖心を抱くものですが、この鬼六はかなり特殊な脳構造をしているか、あるいは脳細胞が死に絶えているかどちらかであるらしく、それに関して一切疑問を持ちません。
「私たちは兄チャマの妹なのです!」
「ああっ、やっぱり……」
 なにが「やっぱり」なのであるのか。
「そうか、昨日のプレゼントってのはこの娘たちのことだったんだ!驚いたなあ、父さんも母さんも日本に帰ってきてないからまさか新しい妹が来ているとは思わなかったよ」なんというか、驚くところが根本的にズレてます。
 おまえらの親父は世界各国で妹を増やしてそれを送りこんでくるのか、それは倫理的に問題ではないのかとかいろいろあるんですが、この件に関してはこれで説明が終わります。彼の中では全てが解決したらしいです。たぶんコイツは将来確実にキャッチセールスとかに引っかかって苦しむタイプだろうことは容易に想像できますが、それはまあよいです。「もちろんみんな可愛いけど誰か一人を選ばなければならないとなると困っちゃうよな」などという台詞も、こいつの素晴らしい脳構造だからこそ成せる技なのでしょう。何を選ぶつもりなのだお前は。ここまで突込みどころ満載の主人公だと、逆に策略に落ちているのではないかとさえ思えてくるのですがそれもきっと考えすぎというやつなのでしょう。既にどこから突っ込んでよいものやらさっぱりわかりません。
 しかも話はそれでは終わりません。その後に「マイシスターを選べ」です。
 おいおいちょっと待て待て。おかしかないかそれは。全員お前の妹なんじゃないのかこいつらは。そういうことでいいのか。
 特ににどのキャラにも果てしなく思い入れの無いわたしにとっては、誰を選ぶかというのは非常に難題であり、さらに云えば誰を選んでも同じなので、力いっぱい適当に選ぶことにしました。目を閉じて方向キーを押しっぱなしにして適当に止まったところで決定。これです。なんせそのキャラに萌えねばならぬのだからこれは大変な決断です。その割にはやり方が果てしなく適当ですが。
 緊張の一瞬です。なにがってあなた最初に俺を殺そうとしたおにいたまガールに当たったら大変です。さっきは奇跡的に一命を取り留めましたが、今度は本格的に命を奪われかねません。
 で、決定。亞里亞というキャラクターでした。これはなんだ「ありあ」と読ませるのか。もう見るからにふりふりの服。日傘。フランスから海を渡ってきたらしいです。なんとなくフランスという国を完璧に誤解してるなという気もするのだがそれはまあよいです。臆病で困ったことになるとすぐ泣き出してしまうんだそうです。まあなんというかちょっとアレですが、いいんです。彼女に萌えることにしたのですわたしは。亞里亞萌えー。イヤッホー。殴られるな俺。
 選んだからその次からどうということもないようなのですが、さしあたりこれでコマンドを選択できるようになりました。「就寝」はきっと一日を終わらせるものだろうというのは容易に想像がつきます。「システム」はセーブロードとかそういうあれでしょう。だとするとあとできるのは「メールチェック」だけ。どうやらみんなからメールがきているらしいです。「ときメモ」の頃は電話だったことを考えると、なんだか技術の進歩を感じずにはいられませんな。じきにテレビ電話でコミュニケーションを取るのが普通になるギャルゲーなんかも出てくるのでしょう。あ、「NoeL」があるか。でもあれシリーズのファイナルはなんか陵辱監禁調教ゲームみたいなシナリオになってたしな。
 いやそんなことはともかく。
 わたしは亞里亞萌えーなので、迷わず亞里亞のメールをオープン。メールタイトル「兄や、改めまして自己紹介なの♥」早くもちょっと後悔しましたが萌えなのです。愛の前には細かいことを気にしていてはなりません。一人称が「団鬼六兄や」になったのもまあよいです。兄やならそんな小さな事を気にしていてはならないのです。亞里亞がお菓子が好きなこともわかったしそれはそれでよいのです。
 で、バレンタインデーには妹たちが次から次へとチョコレートを持ってきてくれます。まあそれはいいのですが、その渡し方が既に兄妹とかではなく完璧に恋人のそれなのは気にしてはならぬのでしょう。わかってはいるのんですがなんかえもいわれぬ背徳感を感じるのは何故なんでしょうか。既になんだか「ときメモ」なら告白寸前くらいのところまで行っているんですが。これでは萌えーどころではないぞ。いいのかこれで。一回もデートも何もしてねえぞ。藤崎詩織には家が隣に住んでるってのに、一緒に帰るのさえ拒絶されたんだぞ俺。
 しかも普通、身内にのみチョコレートを貰うなんてのは男としては泣きたいくらい哀しいことであるはずなのに、それを素直に心底から喜ぶ主人公。もういいです。こんなことでは動じません。脳みそをそっちにシフトせよということなんでしょう。
 ただ、「マイシスター」に選んだ亞里亞だけがチョコレートをくれません。その他のみんなはみんなしてもう完璧にその瞬間に好きですと云ったらマズい関係になりそうなくらいの勢いでチョコレートをくれているのにです。藤崎詩織の苦労を考えると思わず涙が出てきますがそれはともかく、「マイシスター」から貰えないという事はもしかしてこの段階で攻略失敗かと一抹の不安を覚えていたところ、一番最後にきちんと貰うことができました。いやあよかったよかった。これでやり直さなくて済むな。あれ?
 その夜、亞里亞から日記が送られてきました。どうやら、パソコンで日記を書いているのを間違えてメールに乗せて送ってしまったという説明でもうこんなことに突っ込むのも今更野暮なんで敢えて突っ込みませんがでもちょっと突っ込ませてください。メーラーで日記書いてんのかお前は。
 まあ、いいです。不慮の事故のおかげで亞里亞の気持ちがわかるというものです。きっとあれだけ渡すほうも喜んでくれたのだからさぞかし喜びに満ちた日記なことでしょう。読んでみます。「亞里亞は兄やにショコラをあげたの。でも亞里亞も食べたかったなくすんくすん亜里亜のショコラ兄やはどれくらい食べたかないいなあくすんくすん亞里亞もショコラ食べようかなあでもまたじいやが怒るだろうなあくすんくすん」
 俺にどうせよと云うんでしょうか。
 まあ、気を取り直して。次の日から、本格的なゲームが開始されます。
 このゲームは基本的にコマンド選択式のアドベンチャーゲームで、女の子との会話の節々に出てくる選択肢を選んで会話を進行させる、というものになっています。この会話の選択と、夜に来るメールのチェックが女の子とのコミュニケーションになるわけですが、基本的に日中のイベントはどこに誰がいるかはっきりしたマップ選択の上で発生しますので、女の子……もとい、妹のなかから狙った……もとい、より贔屓にしたい人を選んでいくのはきわめて簡単です。「ときメモ」のようなパラメーターいじりの概念も基本的にはありません。出会って話しさえしていればいいという感じですね。物凄く単純に云えば、「エロゲーのシステム」です。
 しかし、やってるうちに気が付いたのですが、これ全然亞里亞が出てこないです。明らかに攻略ルートからは外れている感じがするのですが、ここまでやったからにはやりなおしというのはかなり気が引けます。登下校は敢えて誰も誘わず一人で行ったりと涙ぐましい努力をしているのですが亞里亞は出てきません。ファーストゲームとしてはなんだかあまりにも寂しいものがあります。なによりこれでは亞里亞に萌えられません。
 一応先に「マイシスター」として亞里亞を選んでいるのですが、これがどうもいったい絡んできているのかどうかというのは、すぐにはさっぱりわかりません。別に特例というわけではなく、入れ替わり立ち代り次々妹はやってきては意味深な台詞を吐いて去っていくし、兄やとしてはいったいどうしたらよいやらです。兄やとしてやるべきことはこのヤバいくらい愛されている妹たちを無理矢理にでも独り立ちさせることなのではないかと思えてきます。だいたい、仮にも兄妹が、いっしょに帰ってくれると云うだけで命の恩人であるかのように感謝されてしまうのですがこれはちょっと問題あるだろどう考えても。
 いやまあいいや。亞里亞に萌えることだけを考えることにします。
 バレンタイン翌日は亞里亞には会えなかったがメールは来ていたらしいです。早速読んでみます。「ソフトクリームを地面に落としちゃってじいやにえらい剣幕で怒られた」ふむふむ。かわいそうになあ。萌えー。「じいやはわたしのことが嫌いなのかな」ふむ。悩める少女ってとこだな。萌えー。いや無理してませんよぜんぜん。「この間だって妖精さんが見たいからつれてきてって云ったのにじいやはあきれて無視するの」
 なんかちょっと後悔していいですか。
 そのあとに、「僕がじいやさんに云っておくから」「それは怒られても仕方ないよね」という二つの選択肢を選ぶことになるのですが、彼女の将来のためにも「怒られても仕方ない」を選んでおきます。本当はコナン・ドイルの妖精話の真相とかイギリスの妖精写真の嘘などを事細かに説明してあげたいところなのですが、選択肢が出ないので仕方がありません。
 これからしばらくはメールのみのやりとりになってしまい不安だったんですが、ようやく進展あり。メールをきっかけに亞里亞の家に遊びにいけることに!イヤッホウ。なんか既にちょっと疲労気味なんですがそんなことを云っていては萌えは勤まらぬということで、せいいっぱい頑張ってみました。
 なので、ここまで亞里亞が出てこなかったのは、もしかして単純に所謂フラグ立てを失敗したのではないかと不安になったわけですが、これはキャラクターによる誤差だったということなようです。
 ようやくこのあたりから亞里亞に実際に会えるようになってきます。と云っても外で会うことはきわめて希で、たいていは主人公が亞里亞の家に行って会うという形になるわけですが。しかも行ったら行ったで、たいていは亞里亞の我侭に付き合わされて疲れて帰ってくる始末。それを「心地いい疲れだ」などと言い切ってしまうあたり、こいつは心の狭いわたしなんかよりも数倍人間が出来ているのでしょう。それでなければロボトミー手術でも受けて思考回路がある監督の記録になっているかどちらかです。手塚治虫。「治虫」ってIMEで一発変換できるんだな知らなかった。
 あんまりにもほかの妹をほったらかしていたら、だんだんと「一緒に帰る」リストの中から女の子キャラが減っていくのに一抹の不安を覚えます。覚えますがいいんです。俺の夢はハーレムを作ることじゃありません。亞里亞なのです。
 ディスク2に入ってくると、だんだんとその偏差が目に見えてきます。コンスタントに亞里亞に会えるようにもなってきました。他の妹たちの妨害工作を蹴散らして亞里亞に急接近です。
 ま、細かいディテールに関しては省略しますけど。つーか、全体的にこの流れのくりかえしだし、これと云った話があるわけでもないし、なにより最後までなんで12人の妹がいるのかとかそういうあれに関しての説明もないし、なにより最後はいきなりほんとに恋人みたいな関係になっちまいやがるし、これでいいのかなあとちょっと心残りですらあります。これはきっと俺がエロゲーばかりやってて汚れっちまった悲しみから来るものに違いありません。本来、この作品をピュアに楽しむには、そんなことを疑問に思ってはならないはずなのです。そのひとつひとつの反応に対して萌えで返さねばならないはずなんですが、それ以前に既に主人公の行動があまりにトンデモであることと、妹たちの言動があまりにもキャッチーすぎてもうなんだか見ていて哀しくなってくるという二つの要素が見事に合わさって、素敵なくらいギャルゲーをギャルゲーたらしめている何かを感じさせてくれるのです。
 で、まあ、そのキャラクターたちがどうこうという話になってくるわけですね。結局解ったのは、ギャルゲーというのはある一定のところで落ち着いてしまったジャンルであって、これに新しいなにかを求めること自体が間違っているし、そもそもギャルゲーユーザーというのはそういうものを求めてはいないんではないかということです。
 そんなわけで、この作品をギャルゲーたらしめているのにはそのあまりにも強烈過ぎる個性を持つキャラクターありきなんですが、そのキャラクターをちょっと個別に見ていきましょう。

 可憐
 「お兄ちゃんのことが大好きでたまらない。心からお兄ちゃんに憧れている。甘えん坊で健気」という、まさに俺も含めたオタクボーイズ願望の煮こごりというか結晶とも云うべき非運のキャラクター。あらゆる意味で無難でヒロインって感じですな。ある意味で正統派なので見ていて落ち着くと云えなくもありません。ただあんまり典型的過ぎて却ってこういう作品では地味な印象かも。ま、この作品の場合、もっともインパクトの強いキャラが主人公なので、埋もれてしまうという欠点はあるわけですが。というか、完全に主人公に対する態度は妹とかそんな関係じゃねえよなどう考えても。主人公もまんざらじゃなさそうだしな。

 花穂
 「お兄ちゃんのことを応援するためにチアリーディングをやっている。お花が好き。でもちょっとドジ。すぐに泣いちゃう」という、これまたオタクボーイズ願望の結晶である非運のキャラクター。ここまで純度の高い結晶も珍しいですが、まあこれもコンセプトからすれば仕方が無いとも云えます。ただ、この子の場合は「妹である」という状況を生かした数少ないキャラクターであるとも云えるので、そういう意味での存在意義はかなり大きいかもしれません。気のせいかもしれませんが。

 衛
 「スポーツ大好き。お兄ちゃんと一緒にスポーツをやりたい」という、まあ普通のギャルゲーだとイマイチ人気になりにくいけどそれでもステレオタイプに必ず存在する非運のキャラクター。あまりにステレオタイプなのであんまり印象ねえや。ま、元気っ子です。はい。

 咲耶
 「いつもおしゃれで自身たっぷり」。まあ、なんというか、ギャルゲーとして考えれば12人の中でもっとも現実感があるように思われます。「兄妹という関係をこえて一人の女性として見て欲しい」らしいがそれはもう全員に共通してるような気がするぞ俺は。そういう意味ではなんだか非運のキャラクター。

 雛子
 ごめんなさい。ぼくもう悪いことはしません。

 鞠絵
 メガネで病弱。おしとやかで遠慮深い。いまだに如月系の呪縛から逃れられない非運のキャラクター。夜な夜なポエムとか書いてそう。確かに喋り方やら物腰も上品ではあるのですが、件の如月がそうだったように、なんとなくこうなにか企んでいそうな雰囲気があってちょっと怖いです。いやあくまでも私見というか勝手な見方なんだけども。

 白雪
 電撃G'sの人気投票で、毎回ブッチギリでラストを突っ走っている非運のキャラクター。お料理が好きだったりお弁当を作ってきたりとなかなかギャルゲー王道な行動を見せてくれるのですが、あまりにダイナミックでアバンギャルドな外見(つーか髪型)が原因なのか、聊かストライクゾーンを外しているのか、とにかく人気になりきれないようです。独特の怖さがないところはまあ、いいんですけど。第一人称が「姫」。なんだかなあ。

 鈴凛
 妙な発明をして主人公を驚かせたりなんかしている。しかも兄に何を要求するものはその発明に必要な金銭的見返りという、将来なんとなくテレクラなんかに嵌ってしまいそうな非運のキャラクター。こいつもはっきり云ってキャラが立ち過ぎて大暴走してます。

 千影
 クールでミステリアス、オカルト系という「謎めいた」という言葉だと聞こえがいいが、要するに単に電波を受信しかけてしまっている非運のキャラクター。それでもまだ救いなのは、それ異常に「お兄ちゃん」が激しく電波を受信しているからに他なりません。一歩間違えばイロモノ系。間違えなくても既にイロモノ系。がんばれ。

 春歌
 和服。大和撫子。なぜかドイツ生まれ。「夢見がち」などと紹介されているが、そんなもんほかの11人もみな同じなのではないかと思えてならない非運のキャラクター。ある意味でギャルゲーだからこそ成立するキャラであると云えなくもない。しかしこの作品、どうしてこう極端なんでしょうか。

 四葉
 イギリスからやってきた自称名探偵。ユニオンジャックの果てしなくアレなネクタイと、その筋の人にはあまりに有名な「チェキ」の台詞を残しはしたものの、なんとなく全般的に電波と紙一重なところにいそうな非運のキャラクター。「かなりぶっ飛んでいる」などとマニュアルに書かれるがそれはどいつもみんな同じだろ。それでもまだなんとななっているのは、ひとえに声優さんの演技がそれを感じさせないところにいるからに他ならないような気が。

 亞里亞
 唯一クリアーターゲットにされてしまったが故に、ものすごい勢いでネタにされてしまった非運のキャラクター。フランス出身、ひらひらの服に日傘。前にも書いたけどフランスという土地を完璧に誤解するとおそらくこういうキャラができます。お菓子好き。すぐ泣く。なんつうか、いろんな意味で紙一重。幼ければなんでも可愛いってわけじゃねえんだぞ。

 まあその、別にいいんですが、わたしにとってはなんとなく掴み所がない作品です、この「シスプリ」は。どこで楽しんでいいのかわからないというか。たとえばシナリオが面白いとかシステムが面白いとかそういうのがあれば、その方面でゲームを楽しむことができるわけでして、この作品のコンセプトはおそらく「キャラクターが魅力的」なところに重点をおいているんだと思います。それはわかるんですが、じゃあその「魅力」を素直に「魅力」として感じられるかというのはこれはその人の趣味の問題が大きく関わってくるわけです。だもんで、結局のところ、「妹たちが可愛いなあ」とか、「可愛い娘たちにお兄ちゃんと呼ばれたいなあ」とか、そういうまっすぐな考えがあってはじめて成り立つ作品になってるんだと思うんですよ。別にそれを否定するわけではございませんで、そういう形もアリだとは思いますが、それはかなりリスクの高く、ニュートラルな位置が存在しない、「合う」か「合わない」か物凄く極端な分離をしてしまうというのはやむをえません。
 好きな人は欠点が見つからないくらい嵌ってるしそうでない人にはなんじゃこりゃになる所以はそのあたりにあるんでしょう。だからこの作品は「クソゲー」ではありません。ありませんが、人によっては最高傑作にも成るし、同時に別の人にとっては最高のバカゲーにもなるということです。

 しかし、結局12人の妹がいる状況というのは、いったい何なのだ。
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