うたかな (Prima)

項目シナリオシステム音楽総合
ポイント3−5+
シナリオ:小沢伝七/永里しの
原画:しかとみよ
音声:
主題歌:

-薄味極まれり-

<シナリオ>
 「言霊」をキーワードに繰り広げられていく伝奇アドベンチャー。目の着け所というか、「言霊」というテーマは凄く美味しいし、シーン単独で見れば結構おおっ、って思うシーンもあります。
 あるんですが、それがあまりにも薄味すぎて、印象に乏しすぎるんですね。
 極端な話、やっていてここで盛り上がるのだとかそういうポイントがあまりに掴みにくくて、物語の佳境がどこにあるかやっててわからないんです。そうするとどうなるかというと、結局「ダラダラやってたら、いつのまにかゲームが終わっている」という状況になってしまうわけです。文章そのものは読みやすくてテンポも悪くないのですが、肝心の物語がこれでは……といったところでしょうか。
 学園を舞台にしたゲームの場合は特にそうなのですが、多少「無駄な寄り道」が許されるというか、それを生かしきってはじめて一つの世界観が完成するところがかなり大きく存在します。
 つまり、物語そのものには何の関係もなく、とりわけ伏線になっているわけではないのだけれど、なんとなくそこに生活を感じさせてくれるシーンの挿入というのが必要不可欠になってくるのです。
 物語の結果に向けて一直線に邁進してしまうと、贅肉が取れてスリムにはなるのですが、物語がそれ単独でしか存在しないものになってしまい、「読まされている」感がどうしても強くなってきてしまいます。
 物語の世界に意識が入り込むことができずにいるのに、物語そのものはどんどん進んでいる状況というのがこのあたりから生まれてくるわけですが、この作品はその傾向を特に大きく感じてしまいました。兎に角出くわすイベントや事象全てにまったくムダがなくて、物語の世界だけが一人で進んでいってしまいます。
 まあ、勿論ムダばかりでもこれはこれで逆に退屈なわけで、このへんはまあバランスの上で成り立っているのですが。
 それでも、物語の肝の部分がしっかり作りこんであれば、そのヤマ場の部分だけでひきつけることも出来なくはありませんが、この作品の場合はその部分もまたあっさりです。本来盛り上がって然るべき闘いのパートはあっという間に終わるし、そもそもゲームをはじめて10分で敵の親玉がこいつだろうというのが簡単にわかってしまい、ドンデン返しもなくそっくりそのままというのはやっぱりちょっとマズイでしょう。
 あと、気になったのがキャラクターの描写。このへんがちょっと弱いです。女の子キャラはまあともかくとしても、特に主人公キャラのキャラ立てがあまりに弱すぎ。無個性な主人公でいいのはシミュレーションゲームだけで、こういう作品の場合はアクが強すぎるくらいでもいいんじゃないかと思うのですが。
 このあたりも、意外性とか物語の盛り上がりとかそういう部分にどうも不満を感じさせるポイントになってしまっているのではないでしょうか。
 まあ、なんにせよ、シナリオはかなり薄味です。エッチシーンなんかは結構濃くていいんですが。

<CG>
 原画は、その筋の人にはすっかりおなじみのしかとみよ氏。流石に綺麗です。イベントCGもなかなかですが、特に立ち絵の表情の豊かさが結構お気に入り。一枚絵だとあんまり感じませんが、立ち絵のスカートから覗く脚に妙な色気を感じてしまうのは……あたしだけか。

<システム>
 良くも悪くも、普通のビジュアルノベルシステムです。ホイールでバックログの読み返しが出来たり、セーブの数も豊富だしと取り立てた不満はなし。スキップもそこそこ速くて、既読メッセージは勿論未読メッセージのスキップも可能。メッセージの表示速度は、デフォルトのままだとなんだか句読点ごとに一度クリックを要求されるのでうっとおしいことこの上なし。迷わず最速のやつでやることをお勧めいたします。

<音楽>
 タイトル画面の曲はなかなかいい感じの曲なのですが、作中の曲はあまり印象に残ってないというのが正直なところ。声は、ナチュラルな演技のときはみんなそれなりに巧いんですが、聊か演技が過ぎるというか、ややアニメチックな台詞になると途端にわざとらしさが満ち満ちててなんだか冷めてしまいます。あ、ちなみにエッチシーンの声はかなりエッチくさくてその手のあれが好きな人にはたまらんのではないかと。

<総合>
 とにかくそのシナリオのあっさり加減が惜しまれます。「何時の間にかエンディング」という印象しか残らず、仮にその時に盛り上がったとしても印象には残りづらい作品かもしれません。絵が気に入ったとかそういう特別なあれがあればもちろん話は別ですが、そうでないとなかなかプレイしていて厳しい作品になってしまうかもしれません。
 決してつまらない作品ではないんです。それは間違いありません。物語そのものも伝奇モノとしては非常にうまくまとまっていますし、これがこうだからこうなったのだ、という理由付けもちゃんと成されます。
 ですが、これ、「うまくまとまりすぎ」なのです。うまくまとまりすぎて、ちょっとコンパクトになりすぎてしまったかなと。エッチとかキャラクターとかに重点をおいた作品であればそれでも勿論まったく構わないのでしょうが、この作品が目指してるのはおそらく「物語」にありますでしょうから、そういう視点からこの作品を見るとちょっと厳しいかな、ということになってきてしまいます。
 まあ、なんというか、ポイントの微妙なずれが大きなずれになってしまったという帰結なのではないかと。


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