ゴメンなさい…アタシのせいで (Winters)

項目シナリオシステム音楽総合
ポイント5+
シナリオ:
原画:
音声:
主題歌:

-「望むものと望まれるもの」-

 この作品、「とにかく自分に惚れている女の子に酷いことをしてしまう」というコンセプトはとてもいいんですよ。いや、なんだか酷いこと云ってますけど、そういう作品って今までなかったですから。「陵辱」というところまで行かない、「意地悪する」というののもうちょっと上。そういうシチュエーションを楽しめるというのは、まったくもって美味しい設定だと思います。なんですが、この作品、この設定がどうも生かしきれていない感じがします。
 エロゲーやギャルゲーなんかでよくある、「女の子がお弁当を作ってきてくれる」シーン。普通のゲームなら、ここでこのお弁当を食べてああ美味しいねなんてことになるわけですが、とにかく「女の子をいじめる」のがコンセプトだとすると、お弁当を食べないだけじゃなくて、それを「投げ捨てる」ところまで行くわけです。この「好きな人のために一所懸命作ってきた弁当を好きな人に捨てられる」というシチュエーションがあるというのを聞いて、なんだかそれは凄く切ないけど強烈なシーンだなあ、なんてのを想像してました。実のところ、この「弁当を投げ捨てるシーンがある」というのを聞いたのが購入動機だったりします。なんか尚更酷いこと云ってますが、そういうのって今までに無かったですから。
 ところが、どうも違うわけですよ。女の子がお弁当を作ってくるのを意味ありげに取り上げて、さんざんケチつけて、女の子が泣きべそをかいているところでその女の子目掛けて投げ捨てる、とか、もっとまあ細かく云えば、散々一所懸命作ってきた弁当にケチをつけられて、それでも健気に笑顔を作りながらいるところにその弁当を投げつけられ、弁当のおかずにまみれて一人取り残される女の子、とかそういうのを想像してたわけです。なんか切ないけど、むちゃくちゃ守ってあげたいなあ、とか思うじゃないですか。そういうのって。そういう「守ってあげたい願望」を充足させてくれるのを期待して買ったわけです。
 ところが違うんですな。実際、この作品に「弁当を投げ捨てる」シーンはありました。あったんですが、たまたま手を振り払ったところに弁当があって、手が当たって弁当が落ちる、みたいなそれだけのシーンでして。しかもそのすぐ後に主人公は女の子に謝ったりしてます。いや、人間としてはきわめて正しい行為なんでしょうが、作品のコンセプトからすると、どうにも納得がいかないというのが正直なところではあります(なんか今回、妙にいつもと文章が違うなあとお思いのあなた、その通りです)。
 この作品のコンセプトは、「主人公のことが好きで、泣き虫な女の子」という、まあエロゲーギャルゲーでは「美味しい」キャラクターをいじめてしまおう、というものです。「いじめる」のが主軸ですね。これが「いじめる」のを通り越してしまうと、ただ単なる陵辱調教ゲームになってしまうわけです。これなら別に、この作品である必要はありません。
 問題はここです。確かに、「焼いてくれたクッキーを見せて嬉しそうにしている女の子に向かっていきなり唾を吐く」とか、「喫茶店でいきなり水をぶっ掛ける」なんていうこともできます。こういう展開こそが、この作品にあってコンセプトになっているものですから、それはそれでいいんですが、問題なのは、この行動の直後に即ゲームオーバーになってしまうということです。これらの行為が閉じてしまっているのですね。
 じゃあ主人公がどういう風に女の子をいじめるのかと云えば、これはもうエロゲーであるが故に只管性的なイジメでして。まあ自慰行為を強要したりとか、モノをしゃぶらせたりとか、そういう類のアレです。まあ、実用向けエロゲーとしてはそれはそれでいいんですが、そうするとこれはもう「女の子をいじめる」というそのコンセプトは、あってもなくても同じになってしまいます。まあ、それでも女の子がなかなかひたむきで可愛いので、そういうシチュエーションが好きならというのは無いでもないですが。ただ、それが故に、よほどそのキャラクターに(まあ、そのヒロインの女の子以外の女の子にでも)惚れこまないと、飽きてしまうのもまた早いかもしれません。そういう意味では、まあ「エロゲーとして」見れば優秀な出来なのでしょうが、なまじ妙にそのシチュエーションに期待していただけに、微妙に肩透かしを食らったような感覚でした。文章のテンポとかは悪くないんですけどね。「いじめる」行為から「えっち」へと移行するまでの間があまりに短すぎて、なんだか普通の調教ゲームとさほど変わらない作品になってしまっているのが残念な点ではあります。
 あとはキャラクター。キャラクターにあまりにクセがありすぎというのももしかしたら人によっては引いてしまうかもしれません。わたしはちょっと引きました。まず主人公。自分のことが嫌いで嫌いでどうしようもなく、当然彼女も居ないという設定(その割には幼なじみの女の子がいて一緒に学校へ来たりしているあたり、「モテない」状況に対するツメが甘いという点は無きにしも非ずですが)でして、女の子から告白されたにも関わらず、その娘がなんでこんな自分に惚れたのかが解らず、「もしもいじめていじめて苛め抜いて、それでもまだ好きだと云ってくれるならぼくは彼女のことが信じられるかもしれない」などと云いだします。まあ、自分が嫌いで嫌いで以下略、という人は実際にいるのでしょうが、そこから「苛め抜いてそれでもOKなら信じられる」という思考へと行ってしまうあたりで既に半数以上のプレイヤーは引くと思います。わたしは引きました。ネガティブなんだかポジティブなんだかさっぱりわかりません。
 反面、告白した女の子(涙と書いて「るい」と読みます)はごく普通の泣き虫な女の子。もうちょっとしたことで泣きます。とにかく泣きます。泣き虫な女の子が好きだという人は確かに居ますが、というかわたしがそうなのでそれはもう大歓迎なんですが、さらに云えばそれだからこそ発売日にこの作品を買ったわけですが、本当につまらないことで泣くしわけのわからないところで泣くので、殆ど子どもと変わりません。そんなんばっかりなんで、「可愛い」とか「かわいそう」なのを通り越して苛々すること間違いなしです。
 で、この涙に惚れることができなくなった時点で、そのプレイヤーにとってこの作品は崩壊します。ほかに二人の女の子が出てくるんですが、この二人もクセがありすぎてどうにもこうにもなんとやらで、もはやプレイヤーがどこに感情移入してよいものやらさっぱりわからなくなります。ただわけもわからぬまま、みんなでエッチしたり涙にエッチなことを強要したりして、いつの間にか「いじめて楽しむ」というコンセプトはどこへやら、みんなで仲良く楽しくエッチ、という「お手軽エッチゲーム」になってしまっているのです。

 まあ、でも、エロゲーとしては、これはこれでいいのかな。難しいところです。


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