こすぷれ☆ティーパーティー(ソフトハウスDew)

項目シナリオシステム音楽総合
ポイント3−3−
シナリオ:霞かおる/ほうズき/天原なつる
原画:天下泰平/大神真也
音声:フル
主題歌:有(オープニング:『こすぷれ☆ティーパーティー』/エンディング:『どんなに時がながれても』)

<シナリオ>
 大学でやることもなく毎日を過ごしていた主人公が、「仮装遊戯同好会」に入部してから楽しい仲間たちに囲まれ、ゆっくりと毎日の生活が変わっていって……という話。ま、ぶっちゃけて云えば「コスプレ部」です。ゲームのタイトルからもそれは明らかですけども。
 うーん、なんとフォローしたらよいのかよくわかりませんが、実にこうアレな話です。凄く平たく、そしてきつい言葉を許してもらえるのであれば、ただただ「退屈な展開」。話に起伏がまるでないので、なんかこうだだらに話が進んでいくだけなんですよね。
 もちろん、「起伏らしきもの」はあります。好きになって付き合うことになった女の子と喧嘩してみたりとか、文化祭なんてイベントもあったりするのですが、それもただ展開としてはその場で足踏みしてるだけなので、読んでても苦痛にしかなりません。
 たとえば、主人公が仮装遊戯同好会に入部して、それから話が動くのかなと思うと意味もなくバレーボールだったり、特に意味もなく遊園地だったり、脈絡のないイベントが羅列されてるだけなのですね。
 なんていうか、ただ「事件が起きている」だけで、登場人物たちの心の動きがまるでないんですよ、これ。
 もっとも、「平和な日常を描く」のであれば、そういう演出方法も「アリ」でしょう。もしこの作品もそこを狙っていけば、そういう路線でそれなりに見所はできたのかもしれません。しかしどうも、シナリオのほうではそれを狙っているではなく、寧ろ起承転結のヤマを作りたがっているように見えるんです。
 で、一所懸命にそのあたりで物語を展開させようという思いの空回りばかりが目立ってしまって、結局それがものすごく退屈なものになってしまっているのではないかと思うのです。
 そんなわけですから、当然キャラクタへの思い入れなんてできようはずもありません。
 確かにキャラクタ設定そのものがステレオタイプなベースから抜けきれておらず、そのものがすごく弱いというのは大きいです。
 しかし、それでもシナリオ面やエピソードレベルでキャラクタのバックボーンを埋めてあげるとこれはこれでそれぞれの背景や設定が生きてくるものだと思うのですが、そんなぶつ切りのイベントを並べるだけで特定キャラクタへの思い入れができるわけがないのです。
 それがゆえに、作品をはじめる前はもちろんですが、やってる途中や終わった後にもキャラクタの印象がほとんど残りません。名前を云われても顔が浮かばないキャラクタがいたりします。
 さらにもうひとつ、この作品、やたらと「〜だった。」という過去形言い切りの文体が続くところがあってそれが妙に気になりました。これもまたそういう雰囲気を壊してしまっているように思うんですが、とにかく、目の前で起きているはずの事象を過去形で話すんですよ。しかもしれがずっと続く感じ。なんだか、主人公である自分の居場所がものすごくわかりづらくなってしまっていて、それがさらに作中の世界とプレイヤー意識の乖離を生んでしまっているような気がします。
 とにかく、ありとあらゆるところで、世界がプレイヤーを拒むんですよ、この作品のシナリオは。確かにまあ、物語としてのエピソードを楽しむタイプの作品ではないでしょうからこれはこれで仕方が無い面もあるのでしょうけれども、しかしそれにしてはそこらへんの思い切りが悪い感じもします。中途半端に「物語」を残している感じ、というか。作りこみの甘さと云ってしまえばそれまでですけども、どうもそう云うレベルの話でもないような気がしてなかなか難しいところだと思います。
 この作品、そんなところではなくてただ女の子にコスプレ衣装を着せてそれでエッチが楽しめるといういわゆる従来の「エロゲー」なのだと考えることもできます。一応、「多数の衣装を着せることができる」「他メーカー作品の衣装もある」みたいなところがウリらしいので、それはあながり見当はずれでもないのでしょう。
 じゃあそのエロ関係のところではどうか。これもまたどうかなあと思うことしきり。
 確かに衣装の種類は豊富なんですよ。実にバリエーション豊かです。ま、いろんなアダルトゲームが、いろんな格好でエッチをさせるその方法に苦労する中、「コスプレ」という直球ストレートな題材であればこれはもう考える必要もありません。
 もちろん、「コスプレでエッチ」のコンセプトですから、ちゃんとエッチの最中も服は着ています。エッチの途中に服を全部脱いじゃっておいこれのどこがコスプレだみたいな不条理な怒りを覚えることもありません。別に怒りゃしないと思いますけど。
 しかし、肝心のエッチシーンのボリュームはというと、これがもう完全に「質より量」の物量作戦。あっさり終わるエッチシーンが、次から次へとこれでもかと押し寄せてくる衝撃シナリオ展開です。なんかもうエッチになると急に主人公が一昔前のポルノ小説よろしく妙に説明的な台詞回しになったりするのはある程度エロゲーの主人公なので仕方が無いところなんですけども。しかも別にエッチ中にはコスプレ要素とか関係なくてただ着てる服が違うだけですし、どうも全体的に説得力に欠けるというかなんと云うか。

<CG>
 どうだろうなあこれは。好き嫌いの問題もあるとは思いますけれどもそれで片付けていいものかどうか……なんかこう、全体的に等身のバランスが微妙って云うか、平たく云えば頭が大きすぎててなおかつ微妙に首のアライメントがズレてる気がするんですよ。特に有栖と結花の二人が顕著。一枚絵になると極端に顔が歪むときがあってなんだかもういろんな意味で微妙すぎる。
 あとあれですよ、ものすごく根本的なところで。コスプレでいろんな衣装が着せられますというウリに対して致命的なのが、「衣装があまり可愛くない」ことかも。
 デザインもさることながら、なんかこう描き込みが実に微妙な感じで、なんか妙にもっさりしてたり逆に肉感がまったくなかったりとそそるものがありません。特にあれだ、なんか名前忘れましたがヒーローものの衣装の微妙さはもはや感動的ですらあります。ちっとも可愛くない。それだけじゃなくてファミレス制服にしてもメイド服にしてもなんかこうどこか微妙さが漂います。こういうコンセプトだからこそここは手を抜いちゃいけないところなんじゃないかなあと思うんですけども。

<システム>
 特にこれといったところのないアドベンチャーシステムなのでなんとやら。目立ったところはありませんが、一応、機能面では特に過不足も有りません。バグも特になくて、使いやすいかどうかはともかくある意味で非常にわかりやすいインターフェイスなんではないでしょうか。

<音楽>
 イージーリスニング。以上。もうなんか聴いてるとトリップしそうになります。なんかこうすごくレトロな感じというか、曲の調子を思い出してくれと云われてもほとんど思い出せないくらいのものなんですけども、妙に聴いてるときに耳につく感じはありました。初回限定版なので一応サントラは着いてましたけど、まあなんというか、特にこれと云って聴きたいかと云われると微妙としか。
 そのかわり、エンディングの歌は凄いです。もうね、笑えること間違いなし。とにかく一回聴いてみてくださいいやほんと。全体的に漂うやる気の無さが最高。エンディングでここまで力の抜けた歌を聴かされるとそれだけで作品がおもしろに変わっていきますね。
 声はそこそこ。とりあえず、希の声の人は巧いです。役どころとしては結構難しそうではあるんですけども。それ以前にキャラクタの印象が薄いのであまり声って云われても印象に残ってないところは大きくはあるんですけども。

<総合>
 まあ、よくも悪くも「気軽に遊べるエロゲー」ですよね。それ以上でも以下でもない。それにしてはシチュエーションの適当さとかエッチシーンの適当さが気にならないではありませんが。
 正直、誰をターゲットにして作られたのかよくわからない作品だよなあ、というのが最後までぬぐえませんでした。とりあえずいろんな服でエッチしてそれが見られたら得じゃん、みたいな、よく何十人も出てくるのに一本1500円とかで売られてる安売りアダルトビデオみたいなノリなのかもしれませんが、定価8800円も出させておいてそれじゃあいくらなんでもって気はします。
 CGとかシチュエーションがものすごく気に入ったとかであればやってみるのも悪くないかもしれませんが、正直、安心して人に薦められるかと云われるとちょっとどうかなあと云わざるをえません。

2006/02/12

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