思い出アルバム (トラヴュランス)

項目シナリオシステム音楽総合
ポイント2+4+
シナリオ:
原画:
音声:無
主題歌:有(エンディング:「思い出アルバム」)

-佳作ではあるけど、致命的な欠点-

 非常に惜しい作品です。色々な意味で。その雰囲気とかはモロに泣きゲー(というジャンルがあるのかどうか知りませんが)のそれですが、如何せん細かいところでどうも中途半端さが漂ってきてしまっています。展開が恐ろしいほど早くて、シナリオを噛み締める前にどんどん先に進んでしまうため、なんだか置いていかれたような感じはしてしまいます。そしてさらに、それがゆえに一人一人のエンディングを見るまでにかかる時間が驚くほど短くて、かつエンディングのあるキャラクタが三人しか出てこないので、はじめてから終るまでがあっという間。驚くほどボリュームがない上に、さらに決定的なのは三人が三人ともまったく同じ展開のシナリオだということでしょう。ほとんど変わらないやりとりがだらだらと続く感じで、なんと云うか往年のシューティングゲームの、ボスを倒した後にまた色だけ違う一面に戻る、みたいなのを思い出してしまうのです。
 ストーリーそのものはね、結構いいんですよ。前世とかそういう難しい理論とかギミックを使わず、昔の学園ドラマ……金八先生とかそういう感じの話で、ああ、青春だなあ、と思わず呟いてしまい自分がおっさんになってしまったことをつくづく感じるというようなものでして。細かいところを突けば、結局最初にほのめかしておいた父親のエピソードが後半意味のないものになってしまっているとかいろいろあるわけですが、それでも文章自体のテンポは悪くありませんし、悪くはないのではないかな思います。ただ、展開を三人とも同じにしてしまうというのはいかんです、やっぱり。ただでさえ三人しかいないものを、まったく同じような進展なので、とにかくボリュームが薄っぺらく感じてしまう。一回目はそこそこ面白いんですが、二回目、三回目もキャラ入れ替わりで同じ展開なので、やってるうちに別のキャラのシナリオを読んでいるはずなのに飽きてくるのです。3人しか攻略キャラがいない状態で飽きさせてしまってはやっぱりちとまずいでしょう。
 システムは結構行き届いています。セーブできる数も多いですし(30個)、ウインドウ・フルスクリーン切り替えも可能ですし、音楽のフェード処理なんかも凄く綺麗です。あとはキーボードでのオペレートが出来て、読み飛ばしがもうちょっと早ければ言うことなしなんですが。音楽も主題歌をはじめとして、ちょっと静かな感じの、実に見事な演出が効いています。
 絵は……背景は綺麗。雰囲気とあいまって物凄くいい感じです。細かいところまで描かれている割にはまったくしつこくないし、背景なんかどうでもいいや的な手抜きも感じられません。これはもうほんとうに秀逸。ただ、人物が、立ち絵とイベント絵を含めて今ひとつでした。キャラのパターンは過不足無く用意されているんですが、一枚一枚がどうも。「トゥルーラブストーリー」の絵をちょっとこねくりまわしたような感じの絵で、「こみっくパーティ」みたいなこぎれいな感じもしないし、「Air」みたいに決して洗練されているわけではないけれどなんだか魅力があるといった類の絵でもなく、どう言っていいのかわかりにくいんですね。ヘタクソと一蹴するのもちょっと違う気がするし。
 でも、なによりこの作品の欠点は…この作品好きな人とかこの作品に関わった人にごめんなさいと心から謝りつつ、ちょっと凄いこと言っていい?ああ、もちろんこれはあくまでもわたしの個人的な考え方ですよ。
 あのね、「女の子が可愛くない」んです。
 エロゲーにおいて、ああこの娘可愛いなあって思う娘ってのはかなり重要なファクターです。それはなにも絵やシナリオが単独であってもダメで、両方が融合して初めて生まれてくるべきものです。ですが、それがどうも今ひとつ弱いので、始まる前も終った後も、「あの娘が可愛かったなあ」と思うような要素がありませんでした。原因はいろいろあるのでしょうが、やっぱり、「展開が同じ」なところから導かれる、「シチュエーションの弱さ」が際立ってしまったというところではないでしょうか。
 つまんない作品ではないです。きっちり最後まで(要するに、CG100%まで)やったわけですから。ですが、もうちょっとだけ丁寧に作りこんでくれれば良かったのになあと思ってしまうわけです。

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