Trouble&Maintenance

 W210型メルセデスベンツEクラス(E240)ステーションワゴンを維持するにあたり、起きた故障・トラブルと修理の履歴です。メンテナンス費用などの参考になれば。
 はっきり云って国産車よりはお金がかかりますが、それでも「想像していたよりは」かかりません。

○ウインドウウオッシャー液が出なくなる
 モーターの音はするのに、ウインドウウオッシャー液が出なくなりました。液がなくなったのかと思ったんですが確認するとちゃんと入ってる状況。しかも、ボンネットを開けたらだーっとウオッシャー液がこぼれてくるという……。
 購入店に持っていったところ、ボンネットの中でウオッシャー液のパイプが外れていたとのことでした。保証期間内だったので修理は無料。
 このトラブルは後々何度か起きることになりますが、やろうと思えば自分でもできます。ボンネットを開けてウオッシャー液の噴出口を後ろからはずし(工具などなくても、はまっているだけなので手で外せます)、外れたホースをはめるだけ。
 このウオッシャー液のホースはよく外れるようですので、「タンクには液が入っているのにウオッシャー液が出ない」場合はここを疑ってみれば簡単に直ります。

○スパナマーク点灯
 エンジンをかけると、メーター内のインジケータに、スパナマークとともに「SERVICE DUE NOW」という表示が。マニュアルによれば、「ディーラーに持っていって点検を受ける時期を知らせるマーク」だそうで、特に故障ではなさそうです。ディーラーでは、この表示を消してもらうだけで何千円か取られるとのこと。ベンツをぽんと新車で買えるような人ならばディーラーに直行なんでしょうが、さすがにそれは無駄というものです。
 別にほっといても支障は無いんですが、あんまり気分のいいもんじゃないので、検索をかけてみたらリセット方法がわかりました。

1・キーを2(エンジンがかかるひとつ手前)の位置へ
2・トリップメーターリセットボタン(0ボタン)をダブルクリックの要領で二回押すと、スパナマークが登場
3・スパナマークが登場したら、もう一度0ボタンを押して、押しっぱなしのままキーを0(オフ)の位置へ
4・0ボタンを押したままキーを2の位置へ
5・0ボタンを押したまま十秒ほど待つ
6・アラームが鳴り、スパナマークと「15000KM」という表示が出たらボタンを離す

 これでOKです。
 失敗することも多いので、根気よくやってみるといいかも。

○温度計故障

 温度計がちゃんとした温度を表示してくれなくなりました。これは9月に撮ったものですが、外気計が48.5度。高いときは50度を超えるときもあります。どこの砂漠を走ってるんだと。止まってるときは普通なんですが走り出すと急に上がったり、かと思うと急に普通に戻ったりと不安定な動きを示しました。別に外の温度を表示するだけならほっといてもよかったんですが、これに合わせてオートエアコンが車内の温度を調整するため、これが調子悪いとちょっと困るわけですね。実際、温度が急にあがったところでエアコンが冷風を強烈に噴出したりすることもしばしばでこれは困るわけです。
 原因は、これのちょっと前に前に軽くぶつけたフロント周りを町の自動車工場に板金してもらっていたんですが、そのときに板金業者がW210について詳しくなかったらしく、バンパー部分にある温度計センサー(車を前から見てバンパーの右下に、温度計のセンサーを外に出すための穴があいているのがわかります)を外に出すことなくバンパーを装着してしまったため、温度計センサーがエンジンルームに入り込んでしまっていたのでした。だから、走ってるとエンジンルーム内の暖まった空気を拾って温度が急激に上がったり下がったりを繰り返していたわけです。
 センサー壊れてたら部品交換だなあと思って覚悟して近くのシュテルンに持っていったら、その場で直してくれました。無料。
 ただ、この次の故障は、この温度計の故障が引き起こした可能性も……。

○エアコン故障(2006.9)

 突然、エアコンをかけたままエンジンをかけたり回転数を上げたりすると、どこからかスピーカーのガリ音のような、「ジジジ」とも「カチカチ」ともつかないような不思議な音が聞こえてくるようになりました。気にならない程度の音なときもあれば、明らかにこれぶっ壊れて止まっちゃうんじゃないかというくらいの音になるときもあります。
 さすがにこれは早めに対策したほうがよかろうと思ってシュテルンへ。何が壊れてるのかわからなかったんですが、調べてもらったところ、どうやらコンプレッサー不調でコンプレッサーごと交換になるとのこと。値段を聞いてみたら部品代だけでも15万円かかるというので、とりあえず保留してもらって家に帰ってネットで検索したところ、「オートパーツの館(http://www.r-c-parts.jp/)」というサイトが一番安くて、ここでコンプレッサーを購入。6万円だったので、部品代だけで9万円ほど浮いた計算になります。
 これを持ってディーラーへ行って取り付けてもらいましたが、合計で15万円くらいだった気がします。まあ、不安な要素であったエアコンのコンプレッサーが新品になったと考えれば安い……のでしょうか。よくわかりませんが。
 原因はよくわかりません。前回のセンサー故障によるコンプレッサーの異常負荷でしょうか。

○ブレーキパッド・ローター交換(2007.1)
 もはや定期交換部品のひとつ。今回はOEM部品を使って安く上げてくれる「エスファクトリー」様にお願いしたため、純正のおよそ半額、三万円程度の出費ですみました。

○フロントガラス飛び石(2007.10)
 大阪から夜中に高速道路で帰る途中、ビシッ!という大きな音が。そのときは夜だったこともあってなんだかわからなかったのですが、家に帰ってしばらくしてから車に乗ったら、助手席下側フロントガラスに小さな飛び石傷が二つ……。最初は鳥のフンか何かだと思いました。
 車検が近いこともあり、このままだと車検が通らない。かと云ってガラスを交換するのにはもったいない……ということでガラスリペアをお願いすることに。ネットで住所の近いところを検索したところ、こちらに来て修理してくれるとのことでお願いしました。
 三時間ほどで修理完了。まったく傷がわからない、というのではありませんし、よく見ると傷のあとがわかりますが、とりあえずあまり視角をさえぎるところでもありませんし、これなら車検も通るということでとりあえず完了。
 二万円と比較的安く済みましたが、やっぱり痛いものは痛いです。防ぎようがないだけに対策もなにもありませんが、できるだけトラック(特に砂利を積んだような)の後ろは走らないことくらいですかね。まあ、夜の名神とか東名とか走ることになれば、そんなこと不可能なんですが……。
 あとガラス屋さんに云われたのは、飛び石傷ができたことがわかったらウインドウウオッシャー液を使ったりしないでそのままテープかなにかを貼って傷を保護することが重要、だそうです。傷の中にゴミなどが入っちゃうと綺麗に直らないそうなので。

○車検(2008.1)
 購入後一回目の車検。ディーラーに頼んだところ、見積もりは脅威の70万円!
 とりあえず必要最低限の整備と車検だけお任せして、のちのちゆっくり直していくことに。車検費用は21万円也。
 具体的な修理箇所は、消耗品がタイヤ・バッテリー、その他部品がエアマスセンサーね)、シリンダーヘッドからのオイル漏れ、オイルフィルター付近からのオイル漏れ、ATオイルホースからのオイル漏れのオイル漏れ三連発、そしてなぜか消えないBASエラー解消のためのブレーキブースター、そして交換したはずのコンプレッサーからのコンプレッサーオイル漏れ。先が思いやられる……。

○タイヤ交換(2008.1)

 車検は通ったものの、空気の入れすぎか右リアだけが編磨耗していたタイヤ。4つのうち3つはパンクで修理したはいいものの定期的に空気が抜けてくるような状態でしたし、買ったときからついてた何年ものかわからないタイヤを使い続けるのもアレなので、まだミゾは若干残ってはいたんですが思い切って交換してしまうことにしました。
 それまでついていたのはブリジストンのB-styleというタイヤだったので、同じものでよかったんですが、既にモデルチェンジしてB-style EXというものになっている、とのこと。E240の場合、タイヤは205/65 R15というあまり扁平率の高くない、ファミリーカーについているようなサイズなので、同じW210でもアバンギャルドなどに比べると安く上がるのが救いかもしれません。
 交換はフランチャイズ店、タイヤ館。タイヤ自体の値段はディーラーとたいして変わらなかったんですが、さすがに工賃が段違いです。

○バッテリー交換(2008.1)

 うちのW210のバッテリーは平成14年に変えられたものということで、実に6年もの。メルセデスのバッテリーは「急に切れてエンジンがかからなくなる」ということで、これもまだとりあえずは使えていたのですがさっさと交換してしまうことにしました。
 購入はネットで。これもメルセデス乗りにはおなじみの「ありがとう商事」です。ボッシュのMFバッテリー、S-1A。26,250円也です。これもディーラーで純正品を買うと3万円らしいので、実はそれほど差があるわけではないんですが、バッテリー取り付けの工賃が5千円もかかるとのことで、それも馬鹿馬鹿しいので自分で取り付けることにしました。
 ところが、ネットを見るとあんまり細かいことを載せているページがない!ということで、お役に立てればとの思いでバッテリー交換方法を紹介しときます。知ってる人には今更ですけど。

1・リアシート右側を持ち上げる

 W210のバッテリーは、セダンもワゴンもリアシートの下にあります。リアシートを引っ張り上げると、布張りのボードがあるので、これをはずすとバッテリーが出てきます。ヒューズボックスもこんなところにあるんですね。

2・バッテリーを押さえている板を外す
 このままだとバッテリーが外れませんので、バッテリーを押さえている鉄板をはずします。この鉄板はボルト一つで留まっているので、ボルトをはずすわけですが、ラチェットレンチがあると便利ですが、車載工具のスパナでもなんとかなります。その場合はボルトをナメないようにくれぐれも注意してください。
 この板をはずすと、バッテリーが前に出てくるようになりますので、ちょっとだけ前へ出して作業をしやすいようにします。

3・ターミナルを外す
 いよいよバッテリーのターミナルを外すわけですが、バッテリーの基本は「マイナスプラス・プラスマイナス」の順番です。外すときはマイナス・プラスの順番に外し、つけるときはその逆。ですので、まずは奥側の線が繋がっているターミナルをスパナなどで緩め、外します。外したケーブルの端子がバッテリーの端子に接触しないよう、外したケーブルは奥のほうへ仕舞っておくとよいでしょう。
 マイナス側を外したら、次に手前のプラス側を外します。

4・バッテリーを外す

 ターミナルが外れたらあとは持ち上げて外してください。少し手前に引き出すようにすると簡単に外れます。結構重いのと、作業スペースが狭いのでくれぐれも慎重に。重いからと云って斜めに傾けすぎると希硫酸がこぼれてきて危険です。外すとこんな感じになります。

5・新品バッテリーを取り付ける

 手前が6年ものの純正バッテリー、奥がボッシュ製新品です。これを取り付けるわけですが、基本的にはその重さに注意するくらいで外すときと変わりません。バッテリーを元の場所に置いたら、今度はプラスケーブルを先に、マイナスケーブルを後に接続して、最初に外した固定用の鉄板をボルトで固定したら完了です。化粧板を戻し、椅子を戻せばバッテリーは新品になっています。

6・パワーウインドウをメモリーする
 ところが作業はこれで終了ではありません。メモリーがリセットされてしまっており、このままだとパワーウインドウのオートが効かないのですね。聞いたところではステアリングセンサーのエラーも出る、とのことだったのですが、それはなぜか出ませんでした。
 ですが、一応ステアリングセンサーのエラーの修正をしておこうということで、ハンドルを左右いっぱいに切っておきます。据え切りでやるとパワステポンプに負担をかけるので、ゆっくり進みながらやったほうがいいと思います。
 やり方というほどではないのですが、まず左に切れなくなるまで切り、その後右に切れなくなるまで切るというそれだけです(別に左右の順番は逆でもかまわないと思います)。
 パワーウインドウは、一番簡単な方法はまずキーレスのキーで4枚全部を一気に全開し、少し待ってからそのまま全閉します。全閉になったところで2〜3秒ほどそのまま押しっぱなしにしてください。
 また、サンルーフの付いている車は、サンルーフの挙動もおかしくなっているはずです。
 サンルーフは、キーから開くことが出来ませんでしたので、室内からまず全開。全開した後、普通に閉めようとしても閉まりませんでしたが、チルトアップ操作をすると閉まるのでそれで閉めます。そのままチルトアップ、チルドダウンして元に戻せば、サンルーフも正常に戻っていると思います。
 あとは時計を合わせれば完了です。

○エアマスセンサー交換・オイル漏れ修理(2008.3)

 車検で指摘されたオイル漏れとエアマス交換。ディーラーでやるとまた高い工賃を取られるので(これだけで20万円以上の見積もりでした)、これもおなじみ「エスファクトリー」様でやってもらうことにします。
 エアマスセンサーだけはあらかじめ安いところで入手しておき(「ドクターMBドットコム」というサイトで29,800円でした)これをつけてもらうことにします。
 点検してもらったところ、フィルター周りの左右タペットカバーから激しい漏れがあり、周りのゴムパーツを弱らせる恐れがあるので要交換、さらにATのオイルクーラーホースは一本が完全にダメになっているとのことでこれも交換。部品・工賃すべてで5万円くらい。
 基本的には走りに直接関係のないメンテナンスなんですが、エアマスセンサーを交換したからか、アクセルレスポンスがちょっと良くなったような気がします。あくまでも「気がする」だけではあるのですが。
 この「エスファクトリー」様、ディーラーに比べて、「まだ大丈夫」なところと「ここはやらなきゃダメ」なところをしっかり区別した上でディーラーよりも安い工賃で修理していただけるので、貧乏なドイツ車乗りにはお勧めです。って、云われなくてももう充分に名前の知られてる有名なところだとは思いますけど。
 ほんとはATフルードも交換したいんですが、交換するとATに不具合が出る可能性があるって云うしなあ。どうしましょ。

○リアウインカー電球交換(2008.4)
 春の交通安全週間初日の夜、左折で信号待ちをしていたところ、後ろからパトカーが来て警察官が降りてきたかと思うと、いきなり運転席のドアをノックされました。何事かと思ってみると「ウインカーが白っぽい」とのこと。
 よくある真っ白なウインカーとか真っ白なブレーキランプとか、ああいうのを見るたびに危なっかしいなあと思っているくらいですから、わざわざそんな自らを危険に晒すようなことをするはずもなく、「ノーマルなんですけど」と云ったら普通に見逃してくれました(なぜか飲酒の検査はされましたが。まあ、金曜日の夜だったからかもしれませんが)。
 で、家に帰って見てみたところ、なるほど確かに白っぽい。W210はレンズがクリアで電球がオレンジなんですが、たぶんそのオレンジが抜けたのかなあと。また止められるのもうっとおしいですし、何より危ないので次の日にディーラーへ。
 果たして電球はオレンジが剥げ、あちこち白い部分がむき出しの状態。こりゃー白くもなるわー、ということでその場で交換してもらいました。電球代左右で600円ちょっと、工賃はサービスでした。

○BASエラー警告灯点灯(2008.5)
 日曜日に某国産ディーラーに車を見に行って駐車場で車を預けて、用事が済んでいざ乗りこんだら突然液晶画面に「BAS」の大文字と左端の「BAS ASR」の警告灯が。
 こんな感じで、国産ディーラーに車を預けて駐車場に入れてもらうと、バックギアに入れるのを結構乱暴に(まだ完全に止まりきってないうちにギアを変えたりとか)扱われることが多くて、老体なんだからもっと丁寧に扱ってくれよーなどとヒヤヒヤしてるんですが、これでミッションが逝ったとかならともかくBASは関係ないよなー、などと。
 BASとは「ブレーキアシスト」。ブレーキブースター、つまりブレーキを踏んだ力をサポートしてくれるブレーキ倍力装置です。エアコンなんか故障しても安全性に影響はないですが、ブレーキ周りはちょっと怖いです。
 一回エンジンを止めてかけなおしたら警告灯が消えたんですが、「例え消えたとしても、一度ついた警告灯をほっとくとろくなことがない」というのは雑誌なんかでも云われてることですし、実際その通りだと思いますのでディーラーに直行。
 と云っても行きつけのディーラーは日曜日はサービスが休みなんで、ちょっと遠い(と云ってもそこから車で15分くらいのところですが)ディーラーへ。日曜日で、しかも予約も何にもしてない飛び込みなのにも関わらず見ていただけました。ヤナセさんに感謝。
 以前の車検のときもBASエラーが出ていたとのことで不安だったんですが、結論としては、BASが逝ったわけじゃなくて、BASのソレノイドバルブの動きが渋くなっているんじゃないか、とのことでした。「ときどき固着する」くらいなんで影響はあんまりないと思いますが、頻繁に点灯するようなら、BASだけでなくブレーキ周り全体(ABSとかASPとか)に悪影響が出るので要交換になりますからまた持ってきてください、とのこと。交換費用は部品代だけで7万〜8万円くらいだそうですが、工賃はそんなにかからないそうなので、まあ10万円弱でしょう。様子見ですね、こりゃ。
 ちなみに費用は診断料の3千円ちょっと。これでエラー履歴をリセットしてもらいまして、警告は消えたそうです。車検のときの「エラー履歴が消えない」ってのはなんだったんだろう。バルブがたまたま固着しっぱなしになってたってことなのかしら。でも、警告灯なんか一度もついたことなかったんだけどなあ。
 というわけで、車検のときの懸念材料だった「BASエラー着きっぱなし」も半分だけ解決してしまいました。まあ、交換しなきゃ根本的には解決しないんですが。

○手放すことになりました。
 突然ですが、乗り換えることになりました。
 この車で高速道路を走るのも最後になるということで、首都高を大回りしてハイスピードツーリングを楽しんできました。
 今まで所有した中では(と云ってもまだメルセデスで3台目ですが)一番多く乗っていたことになります。2年半で4万キロですから、普通よりもかなりハイペースだと云っていいでしょう。そのほとんどが高速道路だったからというのもありますが。
 雑誌に登場したり、いろんなところに行ったり、思い出も数多くあってなかなか手放すのもつらい感じですね。できることならナンバー切ってでも近くにおいておきたいです。いやまあ、それは今まで所有した車すべてに云えることですが。
 最後のドライブは、家から新しい車(中古車ですが)を買った店までの10キロだったのですが、なかなか感慨深いものがありました。新しい車に乗って店から出るとき、買った店に残されたW210の姿がちらりと見えたのですが、これが実に寂しそうで、なんだかちょっと哀しくなりました。
 よく車の不法投棄なんてのが問題になったりしますけど、今まで乗ってきた車をあんな風に道端に捨てていく、なんてことがよくできるなあ、と不思議でたまりません。
 今までお疲れ様でした。10万キロオーバーですが、下取りに入ったということはまたどこかで売られて誰かに乗られるんでしょう。右ハンドルだから海外に行くことはないと思いますが、大切に乗られてほしいなあと思います。

<乗ってみて>
 結局、2年半この車に乗っていたわけですが、本当によくできた車だと思います。
 W124に比べてコストダウンされてるんでしょ、なんて云ってる向きには、とりあえず乗ってみて、と云いたい感じですね。
 もちろん、修理して修理して、それこそ何十万キロも乗るとなると、その差は出てくるのかもしれません。ただ、そんな露骨に剛性感がないのかと云われると、そんなことはないと断言できます。
 雑誌などで「輸入車初心者にもお勧め」とあるのは、そのへんも原因でしょう。このW210でも、ドイツ車らしさというのは充分に味わうことができます。
 まず、長距離乗っても疲れの少ないシート。何より最初に感動したのはコレでした。
 クッションも柔らかすぎず硬すぎずのちょうどよさで、シートポジションもちょっと小柄なわたしにもジャストフィットするようにできています。普通の布シートですが、決して安っぽくもありません。
 この「疲れない」というのはある意味ひとつのキーワードで、高速でも重さがあり、センターが多少ダルなステアリングは高速道路での直進安定性を増しますし、また、重いアクセルは同じスピードで長距離を走る高速道路においては足にかかる負担を最小限にしてくれます。
 足回りは国産車に比べるとちょっと硬いくらいなのですが、スポーツカーのように突き上げが来るような硬さではなく、路面のうねりをいなす安定性を確保しつつ、道路の状況をステアリングにフィードバックしてくれます。
 どっしりしたボディは道路に貼り付くようで、長い距離を走り続けます。コーナーでも接地感はしっかりあって、ドライバーはもちろん乗員の不快さもありません。
 こういった「体への負担を極端に軽くする」ことにおいては、所有した車のほか家にあった車も含めて、今までにないほど明らかに「違う」ものでした。
 また、2400ccのエンジンで重たいステーションワゴンボディはパワレスじゃないか、という突っ込みを受けたこともありました。
 が、実はそれほどでもありません。170馬力ありますから、パワフルではないにしてもパワレスではないのですね。特に高速道路で一度速度が乗ってしまえばそれを感じることもなく、120キロくらいの巡航は普通にこなします。
 街中でも、モードによって1速発進・2速発進を選べるため、加速が欲しければ1速発進モードに切り替えてやれば、軽く踏むだけでシグナルダッシュを決めることもできます。
 燃費は、街中と高速道路では極端に違います。街中ばかりで使っているとリッター5〜6キロくらいまで落ち込みますが、高速道路がメインだとリッター12キロ程度までは伸びます。排気量が小さいのでこのへんは多少有利なのでしょう。もちろん、高速道路でもガンガン踏んでればこんなに良くはなりませんが。
 ただ、確かに国産車よりもカネがかかるのは確かです。
 7万キロ走行時くらいにエアコンのコンプレッサーがいかれて15万円、必要最低限の車検で20万円を筆頭に、ブレーキパッドとローターで3万円、オイル漏れ5万円など、同じクラスの国産車じゃここまでかからないよなあ、というのはあります。
 思っていたよりはカネがかからない、というのはありますが、それでも中古の安いガイシャを国産車と同じ維持費で意地できるかというと、これはちょっと微妙なところというのが正直なところでしょう。
 ただし、消耗品を交換していけばいつまでもしゃんとした乗り味で使えるという意味で、クルマの作り方に対する考え方が根本的に違うんだなあ、というのはありました。

<メルセデス・ベンツに乗ること>

 しかしこのメルセデスベンツという車、本当に非の打ち所がないというか、これと言って文句の付け所がありません。まさに「乗用車のベンチマーク」と云えるでしょう。
 この車の「購入記」に、「レクサスをはじめとした国産車メーカーが、メルセデスを目指す理由が知りたいから」という購入動機を書きましたが、それがなんとなくわかった気がしました。
 人がある場所から別の場所へ、ドライバーにより疲れを感じさせずに移動するというその目的において、メルセデスという車はきわめて優秀です。走って曲がって止まるというそのすべてにおいて手抜きがありません。
 なんというか、この車に乗るとすごく安心するのです。  それは高速道路でちょっと云えないような速度を出しても揺るがない、抜群の安定性でした。

 ただ、ベンツって高級車なんでしょ、というのを期待すると、ちょっと肩透かしを食らうかもしれません。
 なぜって、これはW124にしてもW210にしても、下手をすればW211にしても同じなのですが、内装には国産車的な高級感はありません。もちろん装備は相応に揃っていますが、国産車の例えばクラウンやレクサスのような「見て見て、高級車でしょ?」という要素は皆無です。シンプルこの上ありません。
 ですので、「ベンツ」というものを「高い車なんだからこれくらいは」と思って乗ると絶対にがっかりします。本当に普通の車なのですよ。で、その「スタンダード」を作っているのが、このメルセデスベンツというメーカーの車なのだと思います。
 わたしが乗っていたのは1999年式ですから、手放した時点でもう10年近く前の車ということになりますが、それでもそういうしっかり感は感じることができました。

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