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○HONDA Logo

 ビートの車検の際、代車で来た車。4ドアですが、ホンダマチックというCVTを搭載したTSというスポーツグレードです。
 このロゴという車、ちょうどトヨタのヴィッツやマツダのデミオあたりのライバルになるはずの車だったと思いますが、今ではこの車名は一代限りで消滅し、実質的な後継車種としてハイトコンパクトの代表格であるところのフィットに変わってしまっています(2004年8月現在)。確か出たときの自動車雑誌などからの評判は最悪もいいところで、「メーカーとしてコンパクトカーが欲しいからとやっつけで作られた車」などと云われていました。特に足回りのプアさはもう最悪だったらしく、とてもじゃないけど高速道路なんか走れたもんじゃなかったとか。ちょうどこの車が新車で出ていた頃、家のコルサを変えるというのであちこちのディーラーを回っていたのですが、そこで見てもタイヤが軽自動車のような細さでこりゃどうなのよと思っていたような覚えがあります。結局そのときはマツダのデミオを買ったのでこの車を所有することもなかったのですが。実際、まああんまり売れることもなかったらしく、そのまま地味に消えてしまいました。まあそれでも後にカローラを抑えて売上トップを取ってしまうフィットの下地になっていたわけでして、そう考えればまあ意義のある車だったのかもしれません。
 ボディサイズはデミオと同じくらいでしょうか。大きくもなく小さくもなく、標準的なコンパクトカーですね。用意されたエンジンは1.3リッター4気筒SOHCで、駆動形式はFFと4WD。ボディは4ドアと2ドアがあり、さらにその中に普通の三速ATと5速のマニュアルミッション、そしてホンダマチックというCVTを搭載したモデルがありました。うちに来ていたのは4ドアのTS。このTSというグレードは先にも書いた通り、ロゴの中では最上級、スポーツグレードの位置付けです。外見も控えめながらスポイラーが装着されていたりして見た感じにもお洒落に。
 しかも走らせてみると、これが結構ホットです。さすがにスポーツカーという感じはまったくしませんが、マニュアルで走ればそれなりに面白いだろうなあという印象。パワーがあるおかげで街中での赤信号からの加速とかならトップを取れますし、普通に使うとかまあ時々ちょっとぶん回して遊ぶなんて向きには非常に向いていると思います。ボディの見切りもいいので駐停車にも困りませんしね。エアコンもびっくりするくらいよく効きますし、いろんな使い方ができるのではないかと。中古車で探してもきっと二束三文な気がしますから、案外これは面白いかもしれません。
 しかし代車でこんなモデルを渡してくるあたりがホンダですね。別に代車なんだからトゥデイとかでいいのに。

 前から。エアロパーツのおかげであんまりファミリーカーっぽくないです。なんとなくフィットにつながる感じがありますね。まあそういう意味ではホンダデザインなのかも。なんせ代車なんであちこち擦ったりぶつかったりしていてボコボコです。どうせ代車だから、みたいなので適当に扱われてるんだろうなあと思うと、なんかちょっと車が可哀想になってくる感じもします。最上級グレードだからというのもあるのでしょうが、外見はあんまり安っぽい感じはしないです。
 ちなみにこれはマイナーチェンジ後のモデルですね。ちょっとしたグリルがあるのが特徴です。初期型はグリルの無いデザインになっていて、もうちょっともっさりした感じの車だったと思いますので。
 エンジン。1.3リッターの4気筒SOHCエンジンで、8バルブと16バルブの二種類が用意されていました。TSグレードに搭載されているのは16バルブのもので、8バルブのものは60馬力と少しのいわゆるコンパクトカーに必要十分という感じなのですが、それに対してこの16バルブエンジンは91馬力という結構な高出力。このパワーを、前輪を駆動して路面に伝えます。
 ノンターボSOHCで91馬力というのは、少なくともカタログ値で980キロという車重を引っ張るには十分……というか、オーバースペックでさえあるかもしれません。見てくれからは想像できないくらいよく回る楽しいエンジンです。
 問題になっているタイヤも、TSグレードでは少し太い安定したものになっています。なっているんですが、代車だからかかなり使い込まれたタイヤがついていてこれがもうぜんぜん駄目。街乗りでも恐怖を感じる限界の低さです。サスペンションもなんだかふにゃふにゃで、びっくりするくらいFFらしい挙動と云うか曲がるとどかーんとアンダーステアが。ちゃんとしたタイヤが入ってればきっと違うと思いますが。パワステの重さが結構いい感じなのでそのあたりはまあ悪くないんですけど。
 内装です。これが大問題。もうね、しょぼいったらないわけですよ。こういう実用的なのはまあ嫌いではないですし、ベースは実用車だからこれでもいいっちゃいいんですけど、これじゃやっぱりこの手の車のメインターゲットであるであろう若い女性とかはデミオだったりヴィッツだったりにいっちゃいますよねどう考えても。内装からはなにか楽しげな雰囲気とかそういうのは皆無。何の感動もありません。最低限のものしかない分だけ使い勝手はいいですし、飽きが来なくていいという云い方もできますけど。
 ちなみに一応上級グレードなので、標準グレードではついていないタコメーターまでついています。あとシートは割といい感じ。ちゃんとサポートしてくれて疲れはあまりありません。長距離乗ると違うかもしれないですが。
 一番物悲しいのはこれ。後ろ座席のリアウインドウなんですが、これは手動です。軽量化が至上命題であるスポーツカーやコストダウンが至上命題である営業車とかならともかく、乗用車でいまどき手動ってなかなかありませんぜ。しかも最上級グレードでこれです。なにもここまでコストダウンせんでもと思わないではいられません。若い女の子とか家族連れとかが新車を買いにこれを見たらたぶん一発で引くでしょう。人を笑わせるには十分ですが、さすがにこれはいくらなんでも悲しすぎますぜホンダさん。ま、この手の車のリアシートなんてほとんど使わないからいいじゃんみたいなことも云えなくもないんですが、それは「絶対に人が乗ることが無い」というのとイコールではないのだがなあ。
 面白いのはこれ。ハンドルの横に「SPORT」「DRIVE」というボタンがついていまして、普段は「DRIVE」モードで走っているのですが、「SPORT」ボタンを押すとメーター横にある「SPORTS」ランプが点灯し、エンジンの回転数が上がります。音が明らかに変わるのですぐにわかりますでしょう。つまるところこれ、スポーツモードなのですね。正直、押しても押さなくても実はあんまり違いは感じられないのですが、こういう意味もなくやる気を出させてくれるのは演出として面白いのではないかと。

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