ホンダ ジャイロアップ(HONDA GYRO UP)

 よくピザ屋とか酒屋さんとかが使っている三輪の原付です。外見・性能ともにモロにビジネスバイク。同じジャイロでも、バギーのようなスタイルのジャイロXや改造のベースにしやすい大柄のボディを持つキャノピーは最近人気でバイク雑誌なんかでも取り上げられているのを良く見ますが、このアップはそんな流から見事に取り残された感じです。
 まあそうするとなんでそんなものをわざわざ買ったのかということになるわけですが、これには当然理由がありまして。
 このアップ君、見た感じは普通の原付だけど、実は50cc以下の自動車……水色ナンバーのミニカー扱いとして登録されていたりするんですね。これによってノーヘルOK、制限速度60キロ、二段階右折不要の非常に面白い車両が出来たりするのです。
 ちょっとした改造が必要にはなりますが、素人のわたしでも実際にできてしまったくらいのものなのでそんなに難しくはありません(ただし登録の難易度は自治体によって違いがあるらしいですが)。
 原付三輪のミニカー登録は、わたしが住んでいる市ではわたしがはじめてなんだそうで。ちなみにミニカーにすると、上記メリットと引き換えに、税金が1000円から2500円に上がってしまい、運転には普通免許が必要なので要注意。
 性能のほうは推して知るべし。5.2馬力の2ストロークエンジンでは、三輪な上に普通のスクーターよりはるかに重い車体を持つジャイロのボディには圧倒的に力不足です。ゼロ加速からもわーっと加速していってそれでも55キロまではとりあえずは伸びますが、そこからリミッターが効きだす60キロまではかなり長い距離を要します。
 いくらミニカー登録にしたとはいえ、こんなんじゃ長距離は走りたくないわなあ。重いから燃費もそんなによくはないし。
 反面、この車体ですので、荷物は乗ります。車体をバンクさせても倒れない大きくフラットな荷台のおかげで、引越しに使ってもたぶんぜんぜん大丈夫なくらい荷物が載ってしまいます。このへんは文句なしですね。
 さすがに本来は配達に使われる車両だけのことはあるというもので、とにかく荷物なら多分25インチのテレビだろうが冷蔵庫だろうが載ってしまうと思われます。しかも車体を倒しても荷台は倒れないので、安定して運搬できるのもスグレモノ。
 ただし、ノーサスなので荷台への振動は激しく、水モノや精密機械の運搬には向きません。一度ガソリンスタンドから灯油を買って帰ってえらい目にあいました。
 運転はなかなか慣れるまでは難しいかも。三輪である上、前部と荷台が分離してバンクするので、最初のうちはまっすぐ走ってても勝手に前部だけ左右にバンクしてしまい、ふらついてしまいます。
 その上、曲がるときの感覚は二輪とも四輪ともまったく異なるタイプなので、最初のうちはコーナーを曲がりきれずに道の真中に飛び出してしまうこともしばしば。要するにハンドルを切って、さらにかなり強引に車体と体を倒しこんでやらないと、曲がれたとしてもかなり大回りになってしまうんです。
 慣れれば別になんでもないんだけど、これに慣れると普通の二輪に乗るとき戸惑いそうではあります。
 なかなか普通に買うには大穴っぽい原付三輪も、ミニカー登録ができるというメリットを生かせれば圧倒的に楽しくなりそうです。
 ただ基本的にはスピードは出ないんでスピードを求める人とか、野暮ったいのが逆にカッコイイと思えない人には決して薦められない車体ではありますね。
 あ、あと、車幅のおかげですり抜けもなかなか不自由しなんで、すり抜けができないのにストレスを感じてしまう人にも向かないかも。
 そうでなくて、とにかく荷物が載る車体が欲しいとか云うのであればこれはかなりいい感じ。ミニカーの登録にしてしまえばヘルメットもいらないので(安全のため、基本的にはヘルメットはかぶりましょう)、近くのコンビニまでの足とかとしてなら間違いなく大活躍してくれるし。
 もともとビジネスカーなので、メンテナンスもそんなに神経質にならなくていいのも助かります。オイルだけちゃんと補充してやればヘタれずしっかり走ってくれますしね。
 あとは意外と盲点なのですが、アホなガキどもに狙われるようなバイクでもなければ窃盗団に持っていかれるようなバイクでもない……つまり、盗まれる心配をほとんどしなくていいので、パーキングロックだけで市営のバイク置き場なんかにぽんと置いておいても安心できるというのもメリットです。そういう意味でもアシとして使うには優秀な一台ですね。


ジャイロアップ ミニカー登録記



2001年12月22日
 以前に都内の某バイク屋にて、中古のジャイロアップがあるという情報を、インターネットの中古バイク検索サイトにて入手しており、その情報を元にフュージョンを飛ばして行ったことのないバイク屋へ足を運びます。
 確かに店は果てしなく分かりにくい場所にあったが(地図を見ても今一つよくわからない)、実はこれが卒業した高校からそんなに離れたところにある店ではなかったおかげで迷うことはありませんでした。
 無事店に着き、奥に停めてあるジャイロを発見。値段は結構手ごろ。
 ロゴのタイプからすると現行のモデルではなさそう。あとから調べてみると、どうやらこれはその一つ前のモデルらしいですが、ヘッドライトが常時点燈ではなかったりするあたりを見ると、それほど新しいモデルでもないような感じ。
 車体は荷台のすみ等にわずかに錆が出ている程度で、ぱっと見た感じだとそんなに悪くはありません。走行距離は5000キロオーバーですが、まあ距離相応にヤレている感じがします(まあこういう車なんで、一周はしているかもしれなませんが)。
 店の人にエンジンをかけてもらうと、アイドリングはそんなに安定している風ではありませんでした。
 なんせアクセルを開けるとエンジンが止まってしまうので、これはおそらくキャブが詰まっているとかそんな症状かなと。まあ、このへん全部含めて完調にして渡してくれるというので、とりあえず態度を保留して考えさせてもらうことにします。

12月26日
 エンジンを普段使っても何の支障もない程度に戻してくれることを条件に購入を決定。
 これはまあ一種の賭けなんですが、さしあたって店は信用できそうな雰囲気だったし、値段も手ごろだったので。
 販売証明を切ってもらい、市役所でナンバー取得。あとあと水色ナンバーに変更するつもりではいるけど、とりあえず白の原付ナンバーで登録します。

12月28日
 早速トラブル発生。
 引き渡しは今日の予定でしたが、急遽電話。どうやらタンク内の錆がひどく、交換しないことにはどうにもこうにもな状態、とのこと。
 とりあえず交換は追加料金なしでやってくれるとのことでしたのでそのまま追加入院(まあ、整備料金も含めての価格なんで、そりゃそうなんですが)。
 しかし、タンク内が交換しなきゃならんほど錆びているということは、エンジンをかけた時に錆がキャブに回ってて詰まってしまっているということは考えられるわけで、もしかしたらいきなりキャブレター不調もあるかも、などという不安はありました。
 引き渡しは明日(29日)午後予定。

12月29日
 電話。やはりキャブが詰まっているらしです。
 オーバーホールでなんとかなるかも知れないし、それなら今日の引き渡しもできるけど、どうせなら交換してしまいたいとのことでした。
 それにより納車は年明けになってしまいますが、という話でしたが、キャブの不調は予想してたし、新品に交換してくれると言うならそのほうが後々いいに決まっているので(納車を焦る理由もないし)お願いすることにします。

2002年1月8日
 整備完了の連絡をもらい、会社帰りに引き取りに行く。もう本来なら店を閉める時間なのにも関わらず、無理を言ってちょっと遅くまで開けておいてもらいました。
 駅からバスでも行けるのだけれど、あんまり待たせても申し訳ないのでタクシーを捕まえて直接店へ。
 で、いざ納車。受け取ってみるとどうもエンジンがかかりにくいです。
 寒いからこんなもんかなと思っていたのですが、実はこれが後で面倒なことになる最初のきっかけでもありました。
 が、その時はそんなことわかろうはずもないので、とりあえず受け取って家に向かって走り出します。
 ようやく運転にも慣れてきたところで一回目のトラブル。信号待ちで止まったところでエンジンがストップしてしまいました。
 それもマニュアルミッション車のエンストのような、がくんとエンジンが止まる感覚ではなくて、だんだんとエンジンが弱くなっていって、すとんと落ちる感じ。
 慌ててセルを回してエンジンをかけなおすとすぐにかかったのでまだよかったのですが、いきなりエンストというのはやっぱり気にならないではありません。
 まだ店に戻れる距離だったんで戻ろうかとも思ったのですが、既に閉店しているわけだし、もしかしたら久方ぶりに動かしたからこんな現象が起きたにすぎず、走っているうちに直るかもしれないと(楽観的に)考えてそのまま家へ。
 走り出してしまえばエンジンは頗る快調です。もっさりと車体が引っ張られるような感じはありますが、50キロオーバーまでは簡単に到達します。
 ただもう一つ、低速でモタつくのも少し気にはなりました。こういうのって普通、低速トルクのほうに振って作るもんじゃないのかなあ。
 で、家へ。路地に入ってスピードを落とそうとアクセルグリップを戻したのにそのまま走る謎の現象発生。なんじゃこりゃと思いつつ、家に入って車を停めたら、やっぱりトドメのように何もしていないのにエンジンが弱ってきてそのままストップ。やっぱりちょいとタダゴトではない気がします。

1月14日
 会社が休みだったんで、早速ちょっといじってみることに。
 まずは昨日のエンジンの不調が再現できるかどうか。エンジンをかけては止める、というのを繰り返してみたところ、どうやらエンジンの暖気具合とは関係なくこのエンジンストールが起きる模様。
 JOGのほうもエンジンは不調だけど、あったまってしまえばあとは普通に使えるわけですから、この不調はやはりタダゴトではありません。暇なときをみつけて店にもう一度持っていく決意をします。
 とりあえず、昨日のスクリーンと後ろカゴをはずす作業にかかりました。
 まずは荷台のカゴから。スパナとラチェットでネジをぐりぐりはずしていくだけで簡単に外れてしまいます。
 これだけでも見た目はかなりすっきりします。本当はその上のゴムマットも外してしまいたいのですが、これを外すとなんか色々実用面で不便になるような気がするのであえてそのまま残します。
 スクリーンはちょっと厄介で、止まっているネジをかたっぱしからはずしていくしかありません。
 とりあえずスクリーン部分は外れたのですが、スクリーンを固定していた鉄の支えが外れないのですよ。ちょうどラチェットに合うサイズのものがなく、さらにスパナが入らない窪みの中に埋まっていてボルトが回りません。
 とりあえず後ほどラチェットセットの安いのを買ってくることにして終了。とりあえずはすっきりしたので、まあこれはこれでよしとしましょう。

1月26日
 しばらく使ってみますがエンジンの不調は続いています。
 埒があかないので、ようやく重い腰を上げて店に持っていくことにしました。最初からそうすりゃよかったんですが。
 店まで制限の多い原付を運転していくのが面倒なんですよね。とっととミニカーに変更してしまえば問題解決なのですが。
 不調具合をまとめて紙に書いて、それを持って店へ。とりあえずその時点での不調は、
1・エンジンの始動性の悪さ。オートチョークなのにセルをいくら回しても、アクセルを開けないとエンジンがかからない。キックでも同じ。
2・アクセルグリップを戻しても走る(オートチョークのせいで燃料が多く流れている感じ?)
3・アイドリングが安定しない(エンストする)。
4・左ウインカーが点かない時がある。
 というものです。特に2と3は深刻で、エンジンそのものの問題だけに根が深いです。
 不調を騙し騙し乗って店へたどり着きました。とりあえず不調を書いた紙を渡して説明。不調が再現できなかったらどうしようかなあなどと思っていたのだけれど、特に再現することもなく見てもらえることになり、さらに代車まで出してくれました。
 ちなみにこの代車がタクト。最近の50ccスクーターってほんと性能いいのね、というのを感じさせてくれるものでした。ブレーキもフロントはディスクですし。

 2月2日
 修理完了。受け取り。セルでエンジンもかかるし、エンジンは止まりません。当たり前なんですがやっぱり嬉しいものです。
 低速のトルクも復活していて、さしあたり信号待ちで他車の邪魔になるようなことはなくなりました。保証期間内ということで修理の料金もかからず。こんなバラすの面倒なバイクをほんとすみません。
 さて、いよいよ水色ナンバー取得に向けて活動開始です。
 いろいろ調べてみると、一番簡単なのは、やっぱりホイールにスペーサーをかませてトレッド幅を広げる方法。
 具体的にはトレッド幅を500ミリ以上にすればいいわけで、もともとジャイロアップは495ミリのトレッド幅があるわけですから、あとは左右で2.5ミリ以上のスペーサーを入れてやればそれでトレッド500ミリを超える車体が出来上がることになります。
 問題はこのスペーサーをどうするかということなのですが、5ミリ程度の拡大なら適当なナットでも買ってきて挟んでやれば良さそうではあります。

 2月6日
 上記の通り、とりあえずミニカー登録に変更するには、後輪のトレッドを5ミリ拡大すればいいわけで、まずは近くの自動車専門店で、スペーサーの変わりになるものを探しに行きました。
 行ってみると、あつらえ向きのステンレスナットがあったのでこれを購入します。500円4個入りを12個、3箱買ったのでこれで1500円。
 家に帰って自動車用ジャッキでジャイロをジャッキアップ、12ミリのラチェットレンチでタイヤを外します。
 足回りに関する部分なんで、もともとかなり強いトルクで締め付けられている上、錆も手伝ってかなりボルトが堅いです。それでもようやくタイヤをはずし、買ってきたステンレスボルト(測ったら肉厚は9ミリでした)をハブに接着剤で止めてから上からタイヤをつけて、肉厚が増した分ちょっと長いボルトで本締めします。
 基本的な作業はこれだけです。
 で、反対側も同じ作業。ところがこっちはタイヤの締め付けトルクがさらに強くて、タイヤのボルトを外そうとしてたらラチェットレンチのソケットが壊れました。原付のタイヤを外すくらいで壊れるとは、色々な意味で恐るべし安物レンチ。
 そんなことで感動していても仕方がないので、先の自動車専門店に今度はラチェットのソケットを買いに行きます。KTC製の高級品(?)で560円。もともとラチェットセットを同じ店で800円で買っていることを考えれば、ソケット一つでこの値段なのだから自ずとその高級度合いが知れるというものです。
 で、帰宅してソケットを付け替えて作業再開。さすがにさっきはびくともしなかったボルトもある程度のトルクでちゃんと緩みます。
 で、こちらも反対側と同じ作業をして無事終了。タイヤを戻せば、左右それぞれ9ミリずつ幅が拡大し、トレッドが合計18ミリ増の513ミリになるわけです。これで登録要件成立。
 のんびりしているヒマもなく、前日にパソコンでフォーマットだけ作っておいた書類に数字を書き入れ、作業中にデジタルカメラで撮影した画像を貼り付けてプリントアウト。
 改造申請の書類には定型のフォーマットはありません。基本的には自分でこさえて持っていくことになります。
 といってもたいしたものではなく、「ミニカーに登録変更するぞ」という旨の文章と、こういう改造をしましたという写真(デジカメで作業の過程を撮ったものです)をつけて全部で3ページの書類が完成。ジャイロのナンバーをはずし、標識交付証と保険の証書を持って市役所へフュージョンを飛ばします。
 最初に窓口で、「原付の三輪をミニカーに改造したんですが」と云うと、「ああ、三輪は陸運ですよ」とか云われてしまったので、ここで窓口の人に作ってきた書類を見せながらミニカーの概念から説明開始。
 いろいろと紆余曲折あったものの、最後にはちゃんと水色ナンバーが払い出しされました。
 書類はあんなもんでいいのかと不安だったのですが、なんてことはない、あんなもんでいいらしいです。色々突っ込まれるかと思って準備しておいたのですが、案外すんなりと通ってしまいました。要するにどこをどう改造したかがちゃんとわかりさえすればいいのですね、これは。
 一旦廃車にして、再度ミニカーとして登録。ナンバーの数字が尋常じゃなく若いあたり、ミニカーなんてあんまり登録ねえんだなあということを実感させられます。
 新しい水色ナンバープレートと廃車証、標識交付証を貰って登録完了。
 最後に、「こんなのは初めてなのでお聞きしたいんですが」と前置きした上で、どうして原付をミニカーにしたのかを聞かれます。
 どうしてと云われても「ただやりたいだけ」というのが答えなので困るのですが、さしあたり「速度制限と二段階右折の解除」ということにしておきました。それも事実ではあるわけですし。
 でも実際、そんなに長い距離をコイツで走ることってたぶんないだろうなあとは思います。ついでにこの町でジャイロをミニカー登録したのはどうやらわたしがはじめてだということもわかりました。
 で、次は保険屋。ナンバーが変わったので自賠責保険を書き換えます。
 東京海上の窓口へ行き、ここでも「ミニカーに変更したのだが自賠責も書き換えて欲しい」という説明に首をかしげる窓口のおねえさんに、「ミニカーとは何か」について一通り説明します。
 説明が終わっても、原付からミニカーにすると保険料がどうなるのかとかそのあたりがわからず、結構待たされてしまいました。
 最終的にはちゃんと自賠責も切り替わって無事登録終了です。

 ※どこの自治体でもこの方法でミニカー登録が出来るとは限りませんし、またこの方法で登録を行い、運行を行った際に何らかの事故や不具合等起こったとしても当方では責任は取れません。上記改造を行う場合、改造及び車両の運行はあくまでも自己責任において行ってください。真面目な話、それができないなら改造なんてするべきではないです。

 ……とはいえ。
 やはりミニカーになったとは云っても見かけはモロになんの変哲も無いジャイロですから、これにノーヘルで乗ってれば当然パトカーに追いかけられるし、二段階右折せずに曲がってもパトカーに追いかけられるし、50キロ制限の道路を45キロで走っててもパトカーに追いかけられます(すべて経験済み、全て無罪釈放。あたりまえだ)。
 パトカーは追いかけるとき、あああの車種は50に決まっていると決めてかかってきますので、いちいちナンバーの色なんか見やしねえということです。
 これがたとえば普通のスクータータイプとかであれば、あの車種は50に見えるけどもしかしたら80ccの原付二種の車種かもしれないから一応ナンバーを確認しよう、というプロセスを通してから停止命令を出すわけですね(たぶん)。
 ところがジャイロは三輪で、ホンダは純正ではこれの二種モデルは出していませんし、なにより大きい分だけ他の原付より目立ちますから、そんなもんナンバーなんか確認するまでもなく、あのジャイロ二段階せずに右折しやがったとっつかまえちまえ、ということになるわけです。
 つまりどういうことかと云うと、ミニカー登録することによって、(まあ、ノーヘルで乗るのはアレだとしても)普通に右折したり30キロ制限にひっかかったりしないというのは確かに事実ではあるんですが、それは単に「止められても点数は引かれないし罰金も取られない」というだけのことで、要二段階右折の場所で普通に右折したり50キロ制限の道路を45キロで走っているのをパトカーに見つかれば、パトカーは一応「止めてくる」ということです。
 特にナンバーの色が判別しにくく、ヘッドライトの色だと白だか水色だかわからないような夜間の走行においてはそれが顕著です。別に止められても、やましいところはないのでいいといえばいいんですが、たとえば急いでいるときにいちいち止められるのはうっとおしいし、いつ「見せろ」と云われるかわからないので、登録証も決して手放せません。
 はっきり云ってうっとおしいことこの上ないですが、さらにうっとおしいのは、右折しようと右折レーンに入ったときに後ろからパトカーのスピーカーで「二段階右折して」などといわれる状況です。
 既に右折レーンに入ってしまっていますので、そのまま右折しても別になんの罪もないんですが、そんなもん当然警察官の指摘を振り切って強行右折しているようにおまわりさんの目には映るでしょうから、まず間違いなくすごい勢いで追いかけられて、誤解とはいえあまり気分のいいものではありません。おまわりさんにしてもあまり心象のいいものではないでしょう。
 だからと云って右折レーンから左の直進レーンに戻って、おまわりさんに事情を説明するのも面倒です。
 一旦左側のレーンに入ってしまえばそこから右折レーンまで戻るのは大変ですし、その行為が違反になりかねません(まあ、おまわりさんが巻き起こしたことであるとはいえ)。
 つまりもうどっちの行動にしても面倒なのには変わりないわけです。まあ、「違反をなくす」という視点からしてみれば本末転倒ですが、右折してから停止を命じられるほうが、正規に登録している立場からすると圧倒的に楽なわけです。いやまあどちらにしてもうっとおしいのに変わりは無いんですが。
 で、これに対策するにはどうすればよいかを考えてみたんですが、まず一つ目にとにかく水色ナンバーを目立たせることを考えました。これが一番簡単です。ナンバープレートを高い位置にでも移動してやれば少しは目立つかもしれませんが、如何せん取り付け位置を作るところからはじめないといけないので手間がかかります。
 次に考えられるのが、姿恰好をとにかくミニカーに近づけることです。
 つまり一見してジャイロであるとわからさえなければいいのですね。屋根を取り付けてドアを取り付けてやれば、誰が見ても問答無用でミニカーになり、止められることも少なくなるでしょう。ですがこれはいくらなんでもお金がかかりすぎますし、駐輪の際にも不便です。ジャイロキャノピーなんかだとこれでもいけるかもしれませんが。
 で、最後に考えられるのが、原付二種の△マークをリアに取り付ける、というものでした。
 後ろから追尾されたとき、要するにナンバーを見てもらえばいいわけですから、まずこの△マークが目に入ってくれば、おや、△がついているということは二種か?という意識でナンバーに目が行きます。
 で、さしあたり黄色ナンバーやピンクナンバーではないけれど水色だ。なんだミニカーか、という一連の思考パターンに行ってくれればそれで問題ないわけです。つまり、△マークの存在を確認してもらうことで、「ナンバーを見てもらう」ことが目的なのですね。お金も掛からないしきわめて現実的な作戦です。
 ただこれには一つだけ疑問があります。単純な話で、「原付二種以外の車両にもこのマークをつけていいのか」という点です。
 本来、△マークは原付二種……つまり、50cc以上125cc未満の排気量の自動二輪車であることを示すマークです。
 原付(一種)と原付二種の大きな違いは、道路交通法上では原付二種は「二輪車」として扱われ(一種は「原動機付「自転車」です)、二段階右折や30キロ制限などの原付特有の制限が消えることです。
 確かにミニカーも同様の制限を受けなくなるのですが、排気量は50cc未満であると定められていますので、原付二種とまったく同等ではありません。
 そもそも原付二種は先にも述べたように「二輪車」扱いですが、ミニカーは「自動車」扱いになります(というか、なるそうです)。この時点で差異が生じてきているわけです。
 つまり、この△マークが、いったいどういう意味合いをもってつけられているのかによって、マークをつけてもいいかどうかが決定されるわけですね。
 これが「二輪車であることを示す」という意味あいのマークであれば、ミニカーはこのマークをつけてはいけないことになります。
 逆に、「これは原付一種ではありません」という意味合いのマークならば、これは貼ってもなんの問題も無いということになるわけです。
 聴いたところによると、どうやらあのマークは、最初は「二人乗り可」という意味合いからつけられたものであるらしく、そうだとすると二人乗りの出来ないミニカーにはあのマークは適合しないことになります。ただ、最近では一人乗りの原付二種にも貼ってあるので、既にその意味合い自体が形骸化しているのかもしれません。
 さらにはあのマークは特に法律で既定されているわけではなく、原付二種車両においても貼らなくても別に違反には問われないという話もありますので、最初にどういった意味合いがあったにせよ、今では「これは原付ではないんだよ」という意味合いが強く出ているのではないかなあと思うのですが。だとすると貼ってもいい、ということになりますよね。
 ……なんて考えていても仕方が無いので、実際におまわりさんに聞いてみることにしました。本来は警察署にでも行ってくればいいんですが、気になりだしたらどこまでも気になるのが人間の性というやつで、一刻も早く知りたいわけです。
 でもこの考えを思いついたのは深夜。もちろん深夜に警察署にそういうことを聞きに行ってはいけないという話は寡聞にして聞いたことがないので、別に行ってもいいんですが、やっぱり普通に考えればそれは気が引けるというものです。
 で、それからしばらくして、なんか小腹が減ったのでくだんのジャイロを引っ張り出して吉野家へ向かいました。とりあえずその時点では警察署には次の日に行くことにして、ついでに警察署にバイクが停められる場所があったかどうかだけ帰り際に見てこようと思っていたのです。
 で、まあ、その途中に一箇所、三車線以上ある道路を右折しなければならない場所があります。原付なら二段階右折をしなければならないところです。
 でも既にミニカー登録済みのジャイロにとっては何等怖くありませんので、普通に右折します。深夜で交通量も少なく、白黒パトカーがいればサルでもわかる状況でしたので、今日は停められることもなかろうと思っていました。
 ところがどっこい。右折を開始してから颯爽と疾走していると(んなカッコイイもんではないけど)、後ろからサイレン鳴らしたパトカーが追いかけてくるではありませんか。覆面の黒色クラウンだったので、タクシーだと思ってて気が付かなかったんですね。
 このガラ空きの、わたししか走っていない道路で、「前のバイク停止してください」とか云ってます。あきらかに「前のバイク」がわたしを指すのは云うまでもありません。
 その道路は40キロ制限で、その際の走行速度は35〜40キロでしたから(寒くてスピード出せなかったんですね)、速度超過ってことはないはずです。ああまたか、などと思って左側にジャイロ君を止めました。
 パトカーから警察の人が降りてきてまず云います。「これ原付だよね?」だいたいこういう状況でのおまわりさんの台詞というのはこれです。もしくは「これ50だよね?」というバリエーションもあります。
 内心またかと思いつつ、まあ紛らわしい登録をしているというのももありますし、これで警察から圧力が掛かって同じ市の人が同じ方法でミニカー登録ができなくなっても困りますので、あくまで下手に丁寧に、「いや、原付ですけどミニカーなんですよ水色ナンバーです」と一気にまくしたてます。
 いちおうは「原付」だし「50cc」なので、「原付だよね?」に対しても「50だよね?」に対しても答えは「イエス」なんで、一瞬おまわりさんはしてやったりという顔をしますが、そのあとにミニカーで御座いますと付け加えるわけですね。
 これでまあ、ナンバーの色を見て納得してくれるおまわりさんもいますが、だいたいは「免許証」か「登録証」のどちらかを見せてくれと云われます。見せればそれで終わり。まあ、いつもの儀式です。改造個所とかを聞いてくる人もまれにいますが。
 とまあ、今回もこれで終わるはずだったんですが。ここでふとこのおまわりさんに△マークのことを聞いてみてはどうだろうかと。わざわざ捕まえるくらいだから、それくらいの知識はあるはずです。
 で、聞いてみました。「いつもこういう風に止められちゃうんですけど、二種につけてる三角マーク、あれを後ろにつけても違反にならないもんなんですかね」。その警察官曰く、「うーん、違反にはならないと思いますけど、夜はやっぱりナンバーも目立ちにくいですからね。停められたら説明してもらうしかないですね」らしいです。
 まあ、あくまで一警察官の見解ということではあるけど、とりあえず即違反であるということにはならないらしいです。
 まあ考えてみればそれはどんな違反になるんだよということですしね。別にナンバーを付け替えているわけでもなし。
 というわけで、△マークを貼ってなんとかやりすごそうとか考えていたりする次第です。どれくらい効果があるかは解りませんが。

2002/3/17

 そんなわけで、△マークをつけてみました。行きつけのバイクショップで、KH125の曲がったクラッチレバーの新品を取り寄せてもらうついでに買ったものです。
 その店がカワサキの専門店なんで、マークはフロントの白線がKDX125、△マークがKSR2のものになりました。まあ、所詮はただのマークなんで車種なんかなんだっていいんでしょうけど、50ccモデルしかないジャイロには当然「ジャイロ用△マーク」なんてものは存在しないんで、マークを貼ろうと思っている方は他車のものを適当に流用してください。
 リアの△マークはどんな車種のものでも貼れますが、フロントのマークは微妙に加工が必要になると思います(って云っても適当にカッターで切るだけなんですけど)。っていうか微妙に曲がってるなあ△マークが。まあいいか。
 で、しばらく乗ってみての効果です。正直、あまりありません。
 一度二段階右折の交差点で停められたとき、おまわりさんに「ごめんね、見ちゃったら一応停めないわけには行かないから」と云われました。つまり、△マークがたとえ見えていても、やっぱり一応停めることは停めますよ、という意味なんだと思います。
 まあこれくらいは仕方が無いかな。ナンバーの色やマークが確認しやすい昼間とかなら、ちょっとは違うかもしれません。


○数年後の見解(2009.7.2)
 最近また地味にジャイロの改造が盛り上がっているようで、4ストロークになって新たに生まれ変わったキャノピーやXに対し、そのまま製造中止になってしまったアップにも注目が集まっているようです。
 と同時にミニカーでの登録も増えてきているようで、最近では役所も慣れてきているらしく、払い出しにいちいち説明したりしなければならないところは減ってきているようです。
 ただし、要件を満たさないままの虚偽登録や無茶な運転なども増えてきており、そのぶん「お店の改造証明書などを持ってこないと登録できません」と云って断る自治体も増えてきているとのことです。つまり、トータルでは登録の難易度は上がっていると云えるでしょう。
 反面、改造の難易度は下がってきています。
 トレッドを安全に広げるためのスペーサーも比較的安価で買えるようになりましたし、よく知られる手法では、ミニカーにこだわらなければエンジンをボアアップして軽二輪として登録すれば「側車付き二輪車」となってパワーも上がり高速道路も走れる(その代わり普通免許が必要になります。ただし普通免許ではなく自動二輪免許が必要になるという解釈もあるようなので、いちおう両方とも持っていたほうがいいと思います)乗り物ができます。
 上で紹介している「ハブとホイールの間にナットを挟んで強引にトレッドを広げる」手法は、その絵面を思い浮かべていただければすぐにわかるとおりホイールを止めるナットに極端にストレスがかかりますから、強度の面では不安は残ります。いつタイヤがもげてもおかしくありません。
 まして、100キロに近い車体に人を乗せて、さらにそれが時速50キロ程度のスピードで走るわけですから、このへんは念を入れておくに越したことはありません。
 そういう意味で、この方法を今あえてとって事故を起こされても寝覚めが悪いのでコンテンツ自体消してしまおうとも思ったのですが、昔はこんなんだったという参考資料として残しておくことにします。
 繰り返しますが、ちゃんとしたスペーサーが格安になってきている今、いくら安く上がるからと云って上記の方法で改造をするメリットはありません。初期投資は安く済みますが、そのあとのことを考えれば、上記方法での改造はやめておいたほうがいいと思います。
 わたしが乗っているジャイロが今大丈夫でも、それは「たまたま」大丈夫なだけにすぎず、ちゃんと計算したわけでもなんでもないわけですから。


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