- 日産 シビリアン-

○NISSAN CIVILIAN


 キャブオーバー型29人乗りサイズのマイクロバスは、トヨタがコースターを、三菱がローザを、日産はシビリアンをそれぞれリリースしており、それぞれコースターのOEMとして日野がリエッセを、シビリアンのOEMとしていすゞがジャーニーをリリースしている状況にになっています。
 サイズはどれもほぼ同じですが、レンタカーを借りたら出てきた日産シビリアンは、珍しいことにガソリンエンジンでした。レンタカーなので、たぶんグレードは一番上級なものだと思います。まだ1万キロちょっとしか走っていない、新車の匂いがかすかに残っているような車両でした。
 上にも書いたようにサイズはほとんど一緒なんですが、運転のしやすさというか、車体感覚の掴みやすさはコースターよりもシビリアンのほうが優れているような気がします。気のせいかもしれませんが。

 フロントから。いかにもバスというような四角いデザインです。ワンボックスやトラックの延長にあるような印象を受けるコースターと比較すると、フロントガラスがかなり大きく見えて観光バスっぽいですね。個人的にはこちらのほうが好みではあります。
 モデルチェンジ後の顔なので、初期モデルにはなかった大型のフロントグリルが特徴的です。
 リアはこんな感じ。こちらもコースターと比べるとやや腰高というか、平たく云えばバスっぽいデザインになっています。縦型についたリアのブレーキランプがシビリアンのリアデザインでは目立つ感じがします。やはり全体的にスクエアというか、四角形で構成されたデザインです。
 メーター周りです。距離計はデジタル液晶表示。たぶんトラック系の車両と共通なんだと思いますが、必要最低限でシンプルといえばシンプル、特徴がないと云えばその通り。バスならではの、自動ドア等のワーニングランプなどがいくつかある以外は乗用車とほとんど変わりません。AT車なのでオートマチックのインジケータがあります。
 ドライバーから向かって左側に客室関係の装備が揃っています。室内蛍光灯やテレビ、車内マイクのボリューム調整などはすべてここで行う感じ。オーディオはCDとAM/FMラジオが使え、このあたりは普通の乗用車とまったく変わりません。
 エアコンはオートエアコンで、温度設定さえしておけばあとは勝手に温度調整してくれるほか、ドライなどきめ細かい設定が可能になっています。車内が広いせいかかなりエアコンは強力で、客室にあわせると運転席は若干寒いくらいです。
 センター部分にはカーナビがビルトインされています。ごくありふれたDVDのナビで、特別に高性能なものではありません。ちょっと操作性が悪いのが難点ではあるんですが、普通に使う分にはこれで十分、という感じでしょうか。ギアをバックに入れると自動的にバックモニタになるのも便利です。
 これはハンドル右側のスイッチ。右からアイドルアップ、ライト光軸、客席自動ドアのスイッチです。あまり使用する機会がない二種類のスイッチと、頻繁に使うスイッチが一種類。たぶん間違いを防ぐためでしょう。エンジンオンか電源オン状態で下に強く押しつづけるとブザーとともにドアが開き、上に押しつづけると閉まる仕組みになっています。ドアが開くときは外側に張り出して開くため、縁石などに注意しないとドアをぶつけることになりますので要注意です。
 モデルが新しいこともあり、装備はかなり充実しています。冷蔵庫はもちろん、テレビは薄型の液晶タイプ。ただし、テレビを使っているときはステレオが使えないのが欠点でしょうか。ただ、テレビモニタがちょっと出っ張っていて、前から後ろへ行き来するときに頭をぶつけやすいので注意。テレビのチャンネルやビデオデッキなどの設備は、モニタのすぐ後ろの座席上部荷物収納部分に設置されています。
 シートは決して大きくてゆったりではないですが、手狭な感じはしません。少しですがリクライニングもしますので、フル乗車だったり体の大きな人でもなければ、それほど辛い思いはしなくて済むと思います。
 燃料は「ガソリン」です。4.5リッターの大排気量ガソリンエンジンですね。
 でも、動力性能は前に乗ったディーゼルのモデルに比べても劣っている気が。もしかしたらATが悪いのかも知れませんが、高速道路でも坂道になると明らかにアンダーパワーで、場合によっては登坂車線のお世話になることもしばしば。ガソリンエンジンだからディーゼルよりも静かだったりするのかというと騒音も相応ですし、NOxなどの環境的なことを置いておけばディーゼルよりも優れているポイントははっきり云って感じませんでした。サルファーフリー軽油を使った最近のディーゼルエンジンでは環境面もかなり改善されているでしょうから、ガソリンエンジンであることのメリットはさらに薄くなる気がします。
 しかも「大排気量」で「重量級」ですから、燃費もよくありません。今回は高速道路がメインだったんですが、平均速度80km/h、下り坂では積極的に燃料カットでかなり省燃費走行を意識したにも関わらず、平均燃費はだいたい6km/l程度。目に見えて燃料系が下がっていくのが判る感じで、しかもタンクの容量が大きくないせいか、だいたい400キロくらいごとに給油を要求されます。
 今回はあまり人が乗らず、なおかつそんな走り方でそれですから、平均速度を上げて人数が増えると、大排気量のスポーツカークラスの燃費になるのではないかという気さえします。
 ATなのは楽でいいんですが、これが4速なんですよ。ディーゼルモデルならたぶん4速でもたいして気にならないんでしょうけれど、トルクのないガソリンエンジンとなると話は変わってきます。街中なら「ちょっと遅いな」くらいなんですが、高速走行で60キロを越えたあたりからは最悪。高速度域からの加速が鈍いせいで高速道路での追い越しや坂道などではかなり気を使いますし、制限速度の100キロで走ろうとするとエンジン音がうるさくてかないません。当然、燃費にも悪影響が出るのは容易に想像できます。
 これが6速のマニュアルモデルならまた違うかも。これがディーゼルモデルだとATも6速になるそうで、ますますもってガソリンエンジンモデルの存在意義がよくわからなくなります。レンタカーだと別になんでもいいんでしょうけど、シビリアンの購入を考えている人がいれば(いるのかそんな人)ガソリンエンジンを選ぶならMTを、可能ならディーゼルをオススメします(っても、ディーゼルのシビリアンは前の日産エンジンのモデルしか乗ったことがないのでアレですが)。ガソリンエンジンは日産製ですが、ディーゼルエンジンは三菱のOEMだそうで、そういう台所事情もあるんでしょうけど。

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