1・430セドリック 購入〜ちゃんと動くまで

 購入したはいいものの、このクルマ、なかなか納車されませんでした。
 どれくらい納車されなかったかというと、いちど取った車庫証明が無効になってしまったので、もう一度取りなおしたくらいです。
 なんでかというと、納車整備時に不具合が発生したから。
 息つきを起こすのがどうしても直らず、福岡の日産ディーラーに見せても原因がわからないので、ということで納車が伸び伸びになってしまっておりました。
 結局、「なんとなく直ったけど直ってない」という状態のまま、そのぶん値引きしてもらうことで納車されることに。
 ま、日産のL型エンジンだったらどうにかなるだろ、などと思っていたのですが、結果的にこれがなかなか手ごわかったのでした。

 症状としては、「アイドリングはきっちりするが、そこから走り始めるとアクセルを踏んでも激しくノッキングしてエンジンが吹けなくなり、失速してしまう」というもの。
 それとは別に、アイドリングの回転がかなり高く、1500回転くらいでアイドリングしていました。
 アイドリングが高いのはうるさいのとアイドリング燃費が悪くなるだけで別に害はないのですが、前者は困りもの。
 とりあえず最初のうちは普通に走行できるのですが、突然アクセルを踏んでもエンジンが回らなくなり、それは市街地走行でも高速道路走行でも発生しました。
 ただ、高負荷時……たとえば坂道の上り坂とか、一気にエンジンを回して加速するときとかに発生しやすく、市街地走行だけであれば、おおむね2500回転を越えずに走ればいちおう走ることは可能でした。
 アイドリング状態では空ぶかしで2500回転を越えてもアイドリングが不安定になったりすることはありません。
 仮にこの症状が出てしまったら、いちどエンジンを切ってもう一度かけ直すと元に戻ります。もちろんまた同じ条件になったら同じ症状が出ますが。
 なので、たとえば高速道路を走っているときにこの症状が出たら、「走行中にクラッチを切って一度エンジンを切り、またかけなおす」という危険なことをすれば走り続けることはできました。危険なのはもちろんですけど、インジェクタやオイルポンプ等が一時的にでも止まってしまう可能性があるので、今考えたら絶対にやったらいかんことでしたね。

<1・燃料フィルタ等交換>
 まず簡単にできるところから。
 この症状を見るに、どうも燃料系が怪しいのではというのは最初からありました。
 というのも、ネットで調べてみると、燃料タンク内のサビをポンプが拾ってしまったりすると、こういう失速の症状が出やすい、というのがあったんですよ。
 ただ、それでも「いちどエンジンをオフにすると直る」というのが謎だったんですが、とりあえずできることから、ということで、燃料フィルタ、エアクリーナ、プラグ、プラグコードをまとめて新品にしてみました。
 プラグは標準指定よりも1番高い番手のものがついていたので、これを元の熱値のものに戻します。
 が、変わらず。
 まあ、これで直れば苦労しないですね。

<2・とりあえず調べてもらって考える>
 近くでいちばん大きな日産ディーラに持ち込み、不調の原因を調べてもらいました。
 どうもスロットルチャンバーとマニホールド付近から排気漏れが発生しており、それが原因なのでは?とのこと。
 ガスケットの劣化が疑われるわけですが、ガスケットはメーカーからはどちらも製廃になっていました。
 L型エンジンはターンフローなので、マニホールドは吸気と排気を兼ねています。
 エアフロで計量された空気が、スロットルチャンバーとマニホールドの漏れで量が変わり、心不全のような状態になっている……とすればわからなくはありません。
 なるほど。しかしそれで直るかどうかはわからない、とのこと。ううむ。
 ……しかしそれは、あくまでもエアフロが正常であるという前提条件に基づいています。 エアフロが正常に動作していなければ、そもそも空気の吸入量の計算が追い付いていないわけで、漏れもへったくれもありません。
 しかし、電気的なエアフロという機械が壊れているとしたら、いちどエアフロのスイッチを切る……つまりエンジンをオフにすることでエアフロの情報がリセットされ、正常に動き出す、ということはなくはなさそうです。
 同じく電気的な機械で怪しそうなのは燃料ポンプ。
 症状自体は明らかに燃料が届いていないときの症状なので(よくガス欠したときとかになるやつですね)、燃料ポンプが怪しいのでは、というのは前からありました。
 これも燃料ポンプが不調を起こしていて、過負荷がかかって大量に燃料を吸い上げたときにそれに対応できず失速するが、いちどエンジンオフするとポンプがリセットされる、という。
 しかし、当然のようにエアフロも燃料ポンプも純正部品は製廃。このへんで製廃の嵐にそろそろ悩み始めます。

<3・燃料ポンプとガスケットを手に入れる>
 燃料ポンプは今時のクルマだと燃料タンクの中にポンプがあるのですが、430は昔のクルマらしくアウトタンク型、つまり燃料タンクとは完全に別体になっています。
 燃料ポンプは別に専用品である必要はなく、インジェクションエンジン用(キャブエンジン用では燃圧が足りないのでダメ)であれば基本的には使えます。
 極端な話、インタンクの燃料ポンプを取り出してポンプだけ使うこともできますが、インタンク式ポンプは常にガソリンで冷却されている前提のため、インタンク式ポンプをアウトタンクで使うと熱問題が発生することが多いとのこと。
 まあ、わざわざそんなことをしないでも、アウトタンク式の外付けポンプがあるのでそれを使えばいいわけなんですけどね。燃料ポンプっても基本的にはただの電装品なので、プラスマイナスの電気と、燃料の入口と出口があれば代用可能です。パイプの径とかだけが問題になるくらい。ただ、燃料は漏れたりすると怖いので、取り付けは可能なら専門家に頼んだほうがいいんじゃないかなと思いますが。

 いちばんメジャーな方法として、DR30スカイラインとかのFJ20エンジン用の燃料ポンプがポン付けできるらしいですが、このFJ20用燃料ポンプもまた製廃になっており、新品があっても非常に高騰してるとのこと。それなら素直にL20E用を探したほうがいいわな。確かに一度某所に新品があるのを見かけたんですが、7万円近い値段がついておりました。こりゃダメだ。

 というわけで、困った時のL型エンジン駆け込み寺、亀有エンジンワークスを探してみたところ、ありましたありました。ボッシュ製の汎用品。
 見たところ燃圧も燃料排出量も十分だしこれでいけるでしょう。
 同時に、マニホールドのガスケットもここにあったのであわせて購入してきました。

<4・エアフロを手に入れる>
 ここまできたらついでにエアフロも変えたいのですが、こればかりは型番が車種専用になっているので、製廃だと云われたら手も足も出ません。
 整備要領書によると、同じL20ETでもMTとATで型番が違ってたり、寒冷地仕様で型番が違っていたりとまちまちです。
 となると、L20ET搭載のMTの430用、というやつじゃないと、ドンピシャのものは入手できません。そこまでピンポイントになるとなかなか中古も出てきづらいです。430用じゃなくてもL20ETでMTの非ECCS仕様なら、中身は基本的に同じかもしれません。
 そんな中で注目したのが、S130フェアレディZ用のエアフロ(22680-P6500)。
 標準でついているエアフロは22680-V0310という型番で、車体とエアフロを繋ぐコネクタの形状はL20Eのものでも同一なので、普通につけることはできそうです。ネットオークション等をみると、L20E用のエアフロは結構出ているので、これであれば中古は簡単に手に入りそうなんですよ。
 んが、22680-V0310はそこから出ている数が5ピンなのに対して、L20E用エアフロは4ピンなんですね。
 このピンを使っているのかどうかはわかりませんが、これはちょっと不安が残ります。
 逆にL28E用のエアフロであれば5ピンになるので、L28E用であればそこらへんの問題はなさそう。
 そこで見つけたが、先のS130用エアフロでした。L28E用なのかL20ET用なのか、はたまたL20E用なのかはわかりません。



 これ、見ていただくとわかる通り、横に「L28、L20」とL20が併記されているんですよ。そしてピン数は5ピンです。
 S130フェアレディZはL28のモデルとL20ETのモデルが両方あったので、これであればある程度安心できるかなと思い、とりあえず購入してみました。
 ……まあ、L型エンジンなんてそのへんある程度適当でも回ってしまいそうな気もしますけどね。

<5・完治>
 とりあえずパーツは集めたので、交換は先の日産ディーラーに任せることにしました。
 エアフロだけなら簡単に交換できますが、さすがに燃料系やらマニホールドやらは怖いので。
「取り替えてもうまく直るかどうかはわかりませんがやってみます」ということで、やっていただきました。
 2週間ほど経っていざ乗ってみると……失速しない! ちゃんと踏める!
 燃料ポンプ回りが調子が悪かったとのことで、どうも燃料ポンプの故障が原因っぽかったですね。エアフロは変えた意味があったのかどうか。まあとりあえず問題はなさそうなんで、これでいってみることにします。

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